魔法はいらない
「まぁ、そんな事はどうでもいいがなぁ!」
キィィーーーーン!!
僕の短剣にあいつの剣がぶつかる音が響く。
あいつは言葉を言い終わらない内に僕に向かって走り、そして、僕に剣を振り下ろした。
僕はそれを短剣で受け止めたがあっちの方が力が強く、押される側になっている。
目の前の剣を防ぐ僕の短剣はいつの間にか風も火も纏っていないただの短剣に戻っていた。
ああ、やっぱり、時間切れか。
僕を斬りこもうとして剣に意識を集中しているあいつの腹に蹴りを入れた。
「うっ」
あいつが怯んだ瞬間、短剣に力を入れ、剣をはね返して、
シュッ
「くっ」
あいつの胸に深く短剣を刺した。
心臓に物刺した。
人はこれで死ぬ。
だけど、
「ああ、いてぇな! 俺じゃなかったら死んでたよ!」
シュン、ダン!
「グっ、八っ!」
あいつに投げ飛ばされた僕は受け身を取ったが衝撃が体を走る。
あいつはちっ、深々と刺しやがってと呟きながら僕の短剣を胸から外した。
外した場所から血が出ていたはずが、止まっていた。それどころか傷口が治っていた。
ああ、やっぱり、あいつは〈超再生〉のスキルを使っている。
「おい、あんた、さっきまでとは変わって、遅くなってないか? もしかしたら、あんたの魔法は使用制限があるんじゃないのか?」
あいつが僕の短剣を足で踏みにじると、にやついた笑みを浮かべて指摘した。
やっぱり、誰だって気が付くか。
「そうですよ。僕の魔法は一日の何時間かしか使用できません。今日はここまでくる間や他の人の相手に魔法を使っていたので、もう、今日は使えません。ですが、あなたに僕の魔法を使いたくありませんし、苦しませるのに、死なせるのにコトノハ魔法は必要ありません」
僕は腰にあるナイフを両手に掴み、あいつを見据えた。
そして、あいつに向かって、僕は足を踏み出した。