風の魔法の戦い
黒ずくめの男達は先に倒れた者達を一瞥して、まるで、獲物を襲う山犬のような顔つきになると、咲夜を中心に間がある囲みを作り、拳や自分の得物に力を入れ、そして、咲夜が一呼吸した瞬間、彼らは襲い掛かった。
剣で、拳で、弓で、魔法で、咲夜に殺意を向けて襲い掛かる。
だけど、咲夜にはその刃は、その殺意は届かない。
前方攻撃、剣や拳を扱う者は自分の武器を振るう。
鋭い刃が降り落ち、斬りこまれ、空中に一閃が引かれる。
力強い拳が胴を、頭を、顔を、狙う。拳だけでなく足蹴りも振り落とされる。
剣と拳、足が一瞬の間も与えずに咲夜に襲い掛かる。
剣を振り下ろされた直後に拳が殴り込み、すぐに別の人、次の刀が、拳が、足が襲う。
ドサッドサッと人が倒れる音が聞こえる。
それは、黒ずくめの男達が次々と倒れる音。
咲夜は、振り落とされる剣を、拳を足をかわす。避ける。掴んで、勢いと共にぶつける。剣を振るい、体を掴み、気絶させた。
咲夜は一陣の風のように素早く動き、自分に振り下ろされる剣を、拳を、足を、避けていた。
次々と襲い掛かるそれらを一瞬の内にかわし、避け、また、かわす。
連撃を繰り返す剣をかわし、他の男にぶつかるように誘導させ、顔に振り落とされた拳を頭を下げ、横にひかれた剣は足に力を込め相手の頭の上に飛び、その勢いで自分は上手に着地して相手に自分の反動を押し付けて、叩きつける。振り落とされる足を掴んで別の男に向けさせ、バランスを崩させ、ぶつけさせる。
避けながら男達の間合いを詰めると手の剣を振るう。
そして、斬られた男達は風に吹き飛ばされたように大きく中に飛ばされ、床に強く叩かれる。頭や体に衝撃が入り動けなくなる。
飛ばされなかった者は斬られた所から火が起こり、痛いと、熱いと悲鳴を飛ばしながら床に倒れ、痛みと熱さで気絶する。
後ろから魔法や矢も咲夜めがけて、飛んでくるがそれさえもかわし、避けて、たまに間合いを取った男の腕を引いて、盾にする。盾にされた男から血やうめき声が飛んだが、咲夜は用済みになったら、その盾を後方にいる魔法や矢で攻撃す者達に投げた。
それらの行動は一瞬の内に何回も繰り返された。
咲夜のあまり力を使ってない攻撃、軽い動き、それは、風が踊っているかのようだ。
そして、男達の数が多くても、どれだけ繰り返しても、減らなくても、彼は止めなかった、止まらなかった。
何人かは町長の方に襲い掛かろうとしたが、
【水よ その御仁を守れ】
その言葉、そのコトノハ魔法と共に町長の周りに青の小さな光が町長を覆うようにドームを作った。
町長を守るように。
そのドームは、町長に振り落とされた剣や拳を通さなかった。貫かせなかった。傷つかせなかった。
その剣や拳を振り下ろした者が再度、牙を向こうとした時は、小さな青い色の光が水を、激流を呼び、叩き流す。その方向にいる魔法や弓を扱う者達にも被害を及ばす。
そして、そのドーム内から咲夜の魔法を、戦いを見た町長は、
のちに、町長は咲夜の戦う姿を"その姿は、風そのものだった”と述べた。