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異世界に転移した弱気魔法使いは吸血鬼の下僕になるそうです  作者: ジャスミン茶
第一章 雪が降る夜に咲くユリ
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魔法が使えると言える

 異世界転移した時、僕を含めたクラスメイトは戦いのクラス、職業があった。そして、城にいる魔法使いのスキルで見てもらって、教えてもらった。元気は戦士で、栞はバトルシスターで、それぞれの特徴や性格に合った職業になっていた。

 だけど、僕のクラスは、職業は魔法使いだった。

 頭いいクラスメイトがその職に就いていたが、僕は自分で言うのもあれだが頭は普通だ。バカな元気よりは頭いいとは断言できるが本当に普通だ。だから、聞かされた時、どうしてと思った。でも、少し、嬉しかった。魔法が使えることを。ゲームのように火や水を出せることを。

 だけど、すぐに現実を見ることになった。僕がスキル持っていない事を。

 そして、皆が使う魔法を僕は魔法使いなのに使えないことを。

 スキルが無い事は異世界転移した日に知って、ああ、僕はやっぱり使えない人間、何もない人間、必要とされない人間だと再確認して、落ち込んだ。

 しばらくして、魔法の練習が始まった時、スキルが無い代わりに魔法を頑張ろうと思っていた。決意していた。

 だけど、何度も何度も初級の魔法の呪文を唱えても念じても魔法使えなかった。

 魔法書を見て、魔法の知識を入れて、何度も何度も読み直して頭に入れたのにそれでも僕は皆が使うような魔法が使えなかった。出せなかった。しかも、魔法使いでは無い人でも使える魔法石さえ僕は使えなかった。魔法を出せなかった。


 そして、僕は自分自身に失望した。さらに、自分が嫌になった。


 戦えない僕は皆が冒険やクエストに行っている間、僕は一人、城の王室図書館でスキルや魔法について調べ、学んで、使えるように練習や儀式をした。それでも、スキルや普通の魔法が使えることは無かった。その間、薬草や薬についても少し学んで、城の老人に稽古で戦闘での体や剣の使い方を教えてもらった。そのおかげで、今までなんとか生きてこられた。


 だけど、スキルや魔法が使えない自分はやっぱり何もない人間、いらない人間だった。


 それに、クラスメイトの何人かに僕は新しい魔法やスキルの実験体、実験と言う名の暴力を受けた。

 彼らは元の世界に戻れない事へのストレスや不安を僕にぶつけていたのだろう。

 しょうがない事で我慢しなくちゃいけない事だ。役に立たない僕が唯一、役に立てる事だった。実験の後は必ず治療してくれて、ケガや暴力の痕は無くなって、痛みも無かった。


 だけど、僕は顔は笑っていたけど、心の中で悔しんで苦しんで羨んで恨んだ。たくさん奥歯をかみつぶした。


 でも、栞が死んだ後、僕は逃げるように城を出た。

 

 こんな何もない自分が嫌で、スキルや魔法を使えるクラスメイトが嫌で、暴力をふるうクラスメイトが嫌で、栞が死んでこの世界がゲームでないと認識して栞のように死にたくなくて逃げた。


 そして、僕達を呼んだ王国から遠い、遠い、この町で冒険者として、暮らすようになった時、ある日、モンスターに襲われ、殺されそうになった瞬間、僕は火を、水を出しモンスターを殺していた。


 その時、自分が魔法を使った事、自分がコトノ魔法を使った事を知った。

 自分は魔法使いだって、初めて胸を張って、言えた。

 その日、僕は森の中、モンスターの亡骸のそばで泣いた。

 子どものように泣いた。

 誰もいない森の中、声に出して泣きまくった。

そして、それと同時期に僕は魔法石を使えるようになっていた。その時も一人で泣いた。


 魔法が使えるようになった時から、魔法石の扱いはなんとかなったが、コトノハ魔法はコントロールが難しくて、なかなか戦闘で使うことは難しいし威力の調整がうまくいかず危なかったことも最初は多かった。


 だけど、少しずつ、少しずつ、僕はコトノハ魔法の扱いが分かるようになった。うまくなった。まだ、完璧と呼べない上に、他の魔法使いより力も威力も弱いし遅れている。


 それでも、

「ああ、使えますよ。だって、僕は弱いですけど、一応魔法使いなので」

 僕はこの言葉を胸を張って真っすぐ倒すべき仇に対して言える。

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