魔法とは
今回は町長さん目線です。八月二十四日に少し編集しました。
今回は長々な説明があるため、読んでいて面倒くさくなるかもしれません。
『ねぇ、父上、魔法には種類があるのでしょうか?』
幼き頃、珍しく仕事が無く、休みの日だった父上に何気なく聞いた質問だった。
『ああ、そうだな。魔法には三つの種類がある。私達がいつも使っている普通の“魔法”、精霊や妖精、それらに愛された者が扱う“精霊魔法”、聖人が扱う魔法“神聖魔法”そして、“コトノハ魔法”だ』
父上は私の質問に答えてくれた。
『それらの魔法はどう違うのですか?』
私がそう訊ねると父上は説明してくれた。
『魔法使いや冒険者、賢者、生活に使われているのが魔法だ。呪文を唱える必要があるが、魔力や技術が高い者は唱えなくても使える。術者の能力によって魔法の力の強さが変わる。まぁ基本的な魔法で、世界で使われている魔法の中で大部分を占めている。魔法石もこの分類に入るな』
幼い私はうんうんと頷いた。
『神官、巫女、僧侶、シスター、神人、聖女、神に愛された子だけが扱う魔法が神聖魔法。神に与えられし魔法だ。この魔法は必ず呪文を唱えなくてはいけないし、呪文が長い。魔法使う術者は曇りなき信仰心と純粋な心を持っていなければならない。だが、仲間の回復ができ、悪や闇に対しての攻撃の威力が強い。魔法、神聖魔法が私たちが目にする魔法。努力すれば手に入ることができる魔法だ。だが、他の二つは運とその人物の運命によって与えられる魔法だ』
父上の言葉に私はゴクッ息を呑んだ。父上の表情があまりにも真剣そのものだったから。
『精霊魔法は名前の通り精霊や妖精が使う魔法だ。精霊や妖精に愛された者にも使える魔法だ。思い浮かぶだけで自由自在に使える上に普通の魔法や神聖魔法には起こせない奇跡を起こせる。奇跡そのものの魔法だ。自然を媒介に妖精や精霊の力を行使する。まぁ、これは精霊や妖精が使う魔法で人間が使う魔法ではない。人間で扱える者は少ない。会った者は幸せが訪れると言われるぐらいだ』
私はそんなにですかと言うと父上はそうだと答えた。子供心に会いたいと思った。
『そして、最後の魔法、コトノハ魔法は詳しくは分からない。精霊魔法よりもあまりにも使う者が少ない。少なすぎる。そして、その魔法の情報も少なすぎて、どのように使えるようになるのか、それとも、生まれによって扱える事が出来るのさえ分かっていない。存在がおとぎ話のように知られてはいるが本当にあるのかさえ疑われる魔法だ。話によると、威力は強いらしいがどの魔法より扱うことが難しく、誰もその魔法を完全に使いこなすことができない。誰もが自身の魔力とは関係なく、その魔法の半分以下程度の魔法しか術者は引き出せたことが無いと記録で見たことがある。それに、真偽は定かではないが、魔王が使っているとも不幸を必ず呼び寄せる魔法だと言われている。神聖魔法や精霊魔法が光だとするとコトノハ魔法は闇だと言える。だがな、私は一度、一度だけその魔法が使われる所を見たことがある』
『本当ですか!? 父上』
私はたぶんその時、目をキラキラさせていただろう。あまり、父上は自分の事を話さなかったから。
『ああ、あれは、お前のように私が小さかった頃、ある旅人が私の家にしばらく住んでいてね。その旅人は少し足を痛めていて、それが完治するまで我が家で療養することになってな。まぁ、ケガの原因は私の両親をモンスターから助け出せた時の傷だったから、当たり前のことだったよ。それで、その旅人は
女の人で私の相手をよくしてくれたし、私もなついていたんだよ』
新鮮だった。
いつも堅実に仕事と町を守ろうと常に働いている父上が、私の事などいつも気になっていない父上が自分の事を話している事が、
父上とあのような会話をするとは思っていなかったから。少し、親子らしい会話をするとは思っていなかったから。
『それで、その女性の旅人がケガを完治させて、家を出ていったんだよ。だけど、私は寂しくてね。後をついて行ったんだよ。しばらくして、彼女が巨大なモンスターに襲われる所を見たんだよ。私は飛びだそうとした時、彼女は魔法を使った。その魔法は私が目にする普通の魔法や神聖魔法ではなく、精霊魔法でもなかった。その魔法は………だった。そして、モンスターを倒した後に彼女に見つかって、教えてくれたんだ。これは、コトノハ魔法だって、その後、彼女は私を家に送り届けて、それ以来、彼女に会っていない』
それが、幼い頃、父上が私に教えてくれた事。懐かしい記憶。
それを今、私は思い出していた。目の前で青年が魔法を使ったことにより。
全感覚が叫んでいるこれは、父上が言っていた魔法だと。
『その魔法は、コトノハ魔法の呪文を唱える声は空気を張り詰めさせた。その言葉は、その音はまるでどこか悲しくも強く冬の空気のように澄んでいて、その呪文に現れた火や風は存在そのもので、それがモンスターを襲った。そして、火や風と共に赤や緑の小さな光が優しく彼女を包んで守った。魔法が彼女を包み込む。まるで、彼女と魔法が混ざり合い同じ存在になるように。どこか、消え入りそうな幻のような夢幻の、その光景に私はこの魔法は彼女そのものであり、彼女の心、感情のそのものだと気づいた。そして、私はこぼしたんだよ……』
『「ああ、なんて恐ろしく、綺麗なんだ」とね』
私の声と記憶にある父上の声が重なって、私に響く。