目は笑っていない
目つきの鋭い男は兄弟達を見て、持っていた剣の切っ先を兄に向けた。
「あんたがこの町の町長さんか、噂通りデブだなぁ」
「おい、貴様、私の館に、私の使用人に何をした!」
男は首を傾けて答えた。
「いや、俺はただあんたに用があるだけだ。まぁ、邪魔だったから連れが壊したり殺したりしたがな」
男は兄を指差した。男の言葉に兄は脂肪だらけの顔に力を入れ、しわを作り、男を睨みつけていた。憤怒の表情を出していた。
「き、貴様ぁ! よくもぉ! 私の使用人ォォーー!」
兄の怒りの叫びは館に響いたが、男は耳をふさいで聞こえないように。バカにするような態度をした。
「いや、デブが起こっても怖くないから。それより、死んでくれるかな? ある人物から頼まれているんだよ。こっちは」
その言葉と共に男の後ろに立っていた黒ずくめの男達が兄弟を取り囲んだ。
もう、逃げ道は無い。
兄の顔は怒りと悔しさがにじみ出し、膝を床に着けて叫んだ。
「くっそぉーー!!」
兄の声が再び館に響いた。
弟の優し気な顔も曇り、悔しさが顔に刻んでいた。
男はそれらを見て、笑って、
「それじゃあ、死ね」
男が剣を振りかざそうとした時、
「待ってください。兄はこの町の町長です。町には必要な人間です。どうか、見逃してください。代わりに僕が死にます」
弟は兄の前に出て、兄を守るように手を開いた。
「バルトぉ」
兄は悲し気に弟の名前を呟く。
「ヒューー。良い兄弟愛だ。じゃあ、望みどおりに」
男は弟に剣を向けた。
「止めろぉ! 弟は、弟だけは!」
兄は叫んだ。
「ああ、じゃあ、殺しますね。そろそろ、この芝居にも飽きてきましたし」
黒ずくめの男達の中からそんな声がすると同時に
「うぁぁ!」
弟が倒れた。
弟の両手にナイフが投げられ、手に刺さった。
そして、一瞬のうちに男達の中から一人が飛び出し、弟の馬乗りになって、短剣を弟の左目に向けて、
シュッと振った。
「ギャァァー!」
弟の叫びが部屋いっぱいに広がった。
「それぐらいで叫ばないで下さいよ。あなたにも元気が苦しんだ以上の苦しみを与えなくちゃいけないんですから、これから、まだまだ苦しいんですよ。今、叫んでしまうと始め頃に声が枯れてしまいますよ」
その一人、男は、来夏 咲夜は笑って言ったが目は笑っていなかった。