下僕になれたら
「うわっ、何泣いておる。我はお主を泣かせるような事を言っておらぬぞ」
彼女は僕の頬を濡らす一筋の涙を見て、驚いた。
「いえ、ただ、僕はあなたに出会えて良かったなと思って」
彼女のせいで死にそうにも酷い目にあったけど、あいつに殺されそうになった時、彼女が助けがなかったら、元気が幸せに暮らしていた事を知らなかったし、今の彼女の言葉を聞いて、彼女に受け入れてもらって、僕の何が赦された気がした。光輝が死んでからずっとある後悔や光輝の代わりになれなかった罪が少し軽くなった気がした。だから、心の中で思った通りの言葉を彼女に告げた。
「なんじゃ急に、まぁ、お主は常に我を敬うが良い。その方が、我も気分が良いし、仮とはいえ、下僕なのだから、主人を敬うのは当たり前じゃ」
彼女は偉そうに満足気に言った。
彼女のこの偉そうな態度にイラつく人もいるだろうけど、僕は偉そうな彼女が好ましく感じる。とても彼女らしいと思う。
今、僕はもし、これからの出来事が終わって、僕が彼女のそばにいれたら、"仮の下僕"ではなく、彼女の本当の下僕にさせて欲しい。なりたいと思った。
下僕になれたら、良かったのに。