ひとすじの
僕が話を終えると彼女は
「売れない作家の話のようじゃの。面白くない。もう少し、我が喜ぶような話を選んだ方がいいぞ」
あきれ顔で青い瞳は興味無さそうな目で僕を見て呟く。
「でも、これは僕にとって」
僕の言葉をさえぎって
「お主にとって、それがどれだけ自身の基盤となった出来事か、どれだけ辛い出来事だったか。我は知らん。当然じゃ。我はお主のように情けない者ではないからの」
あっ、情けないって言葉が槍となって、僕の心に突き刺さる。痛い。内面的に痛い。
「じゃが、お主はそれでよかろう。我はお主がどのようなつまらない過去を引きずってめそめそをしていても我の仮下僕だから受け入れよう。まぁ、肯定も否定もしない受け入れるだけじゃが。それでも、お主は少しは楽になるのではないか」
そよ風が吹いて、彼女の被っていたフードが取れて、彼女は歯を出して満面の笑みだった。
今、彼女の顔はどこか幼く、無邪気で、幸せを感じさせた。
彼女は僕を同情をしない。肯定も否定もしない。僕を受け入れた。
それが、心を揺さぶらせて、嬉しさが体を温まていく。
僕は、今、心の底から彼女に出会えてよかったと思う。
彼女に僕を受け入れてもらって、僕はひとすじ、頬を涙で濡らした。