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残された者は
「おっ、あんたら儂の娘夫婦のために祈ってくれたのか」
後ろから枯れたゴワゴワ声が聞こえ、振り返るとそこには片手に杖を持って、もう片方に花束を持っている老人が立っていた。頬を含め肌が少し茶色で老人の手はしわしわだがところどころしまっている。そして、だこがある。剣だこでもペンだ声もないだこが。
老人は鍛冶屋だ。
イヨさんの父親で元気の師匠だ。
そして、二人が死んだ日に出かけていて助かった幸運な人。
いや、不幸な人だ。
残された人の方が罪悪感と自分自身に嫌悪感を抱く。
光輝が死んだときの僕のように。