信じたかったなぁ
「ほう、なかなか良い場所ではないか」
彼女の言葉には一切媚がない。純粋な褒め言葉だった。
「はい、ここだったら、元気も少しは大人しくしてくれると思いますし」
僕は目の前の二つ並んでいる墓のうちの元気の墓に花束を置く。その瞬間、二人の墓に溢れている花、他の多くの花束の中の一部になった。
自分だけが死を悲しんでいるのではないと知っているけど、少しだけ他の人の悲しみが嫌だった。
「少し、拝んでもいいでしょか?」
「ああ、夜までまだ時間があるのだから、よいのじゃないか」
彼女の言葉に僕はありがとうございますと言って、体を低くして、墓標と同じ目線になった。
僕は手を合わせて、目をつぶり祈った。
そこに死んでいる元気とイヨさんしかいないのに。死んだ後は人間とはどこに行くのか、天国に行くのかさえ、僕には完全には信じられなくて、分からなくて、あやふやなのに。
ただ、僕は祈った。今まで、友達でいてくれて感謝と助けられなくてごめんとの謝罪を、そして、安らかに眠って欲しい思いを込めて。
僕はゆっくり目を開ける。そこに元気の姿をある事を願って、でも、そこには、石が、墓標が立っているだけだった。
死んだ人間は蘇らない。それは、元の世界でも、こっちの世界でも、当たり前の事だ。だけど、この世界には魔法が、スキルがある。もしかしたらと思ったけど、やっぱり蘇らない。生き返らない。当たり前の事だった。生き返るなんて、ゲームや漫画の中だけの話。
それでも、僕はその可能性を信じていた。信じたかった。
僕は元気に生き返って欲しかった。親友ともう一度話したかった。生きて欲しかった。こんな僕と親友になってくれて、ありがとうと言いたかった。