準備期間
「ハアッ、ハアッ、うグっ、ハアッ」
僕は胸を押さえながら残りを飲み込んだ。
呼吸がうまくできない。酸素が喉を焼き尽くす痛みが強くなる。額から汗が流れ落ちる。
苦しくて苦しくて、苦しい。
だけど、あいつを殺すために必要なことだ。
「お主、昨日帰ってきたから、ずっと薬を作り、それを飲んでは苦しんでおるな。苦しむぐらいならやめればよかろう」
そう呟く彼女も食事と睡眠以外は僕のこの行動を見ていた。まるで、監視するように、僕の覚悟を確かめるかのように。
「そ、そうですね。でも、ハッ、ハアッ、しなくちゃいけないので」
僕は荒い息を出来るだけ押さえながら答える。
彼女は興味無さげに言う。
「そうか、まぁ、お主が自分から苦しんでいるのなら、我は止めん。ただ、お主がいつバテるか見ておる」
彼女は座っている椅子の背に頬杖をついた。
彼女が僕の行動について、あれこれを言わないので、気持ちが楽だ。それに、彼女がいる事で安心感がある。誰かに見られている安心感だからだと思う。
それを与えてくれる彼女に心の中で感謝を述べる。そして、僕は自然と笑みを浮かべた。
「後少しですし、それに、僕はバテませんよ。あいつを殺すまでは」
「それなら、頑張るのじゃな」
彼女は気のない返事をした。
そう、僕は何があってもあいつを殺すまでは。