嘘は言っていなかったけども
「そうですか? 僕は誰よりも弱いし使えないですし、いらない人間ですよ」
サクヤは首をさっきまでとは違ってどこか諦めた表情で答える。
どうしてか、サクヤはなぜか自分に自信が全く無い。
「いや、俺はお前が怖いよ」
「はいはい。ジャンさんの冗談は置いといて、さっきの野盗の話どう思いますか?」
サクヤの声に鋭さと真剣味が増した。
「そうだな。俺はあの野盗が嘘を言っている風には見えなかった」
嘘だと気づかれたら、すぐにサクヤが殺しそうだったからな。
「僕も嘘は言っていないと思います」
「それじゃあ、あの野盗が言っていた通りって事か?」
「そうですねぇ」
サクヤはは気のない返事をした。
『ああ、その男は知っているよ。そいつは俺達に仕事を持ちかけてきたんだ。町長さんの弟さんを殺すって仕事をな。なんか、よく知らねえが、その男が言うには町長さんに取引で、ある事を教えてもらう代わりに弟さんを殺す事を頼まれたって、それには、盗賊に襲われた風にした方がいいから、俺達にも手伝ってもらおうと仕事を持ちかけたらしい。俺達だけじゃねぇ。ここら辺のゴロツキ全員だ。俺達も捕まっていなかったら、行けたのによぉ。報酬がいいんだよ。チクショ』
と野盗の頭は教えてくれたが。
「ここで、あれを素直に受け取ったら、ただのバカだな」
「僕もそう思います。野盗が言った事は本当ですが、この話には」
「ああ、まだ何かある。少し、俺の方で調べてみるよ。いろいろと」
「それじゃあ、お願いします」
サクヤは頷いて、軽く頭を下げた。俺も頷いた。
「まぁ、どっちにしたって、僕はあいつを三日後に殺しますが。誰が殺されても」
サクヤのその言葉はどこまで冷たかった。
『その町長さんの弟さんを殺すのが、三日後の夜、この町の生誕祭にだ』