頭の中を駆け巡って
「親切な人でしたね。いろいろ話して下さって」
サクヤが笑って言う。俺にはそれが怖い。
「確かに、そうだな。いろいろ話してくれたな」
野盗の頭を脅してな。
野盗はサクヤを見るなり、震え出して、助けてくれと叫び出しそうになった時、サクヤが野盗の首にナイフの刃を当てた。
「騒いだら、ナイフに塗ってる毒で殺します」
とドスの効いた声で野盗を黙らせた。その間にためらいどころか黙らなかったら、本当に殺しそうだった。
その後は正直に野盗は俺とサクヤの質問に答えてくれた。怯えながらだけど。
「でも、話し終えると同時に気絶させてしまうとは、怯えすぎましたかね」
「そうだねー」
俺は棒読みで答えた。
野盗が俺とサクヤの質問に答えるとサクヤは野盗の首に当てていたナイフを離した。野盗は安心した顔をした瞬間に顔の横に、すぐ横に、あと数ミリで顔に当たる右側にナイフを投げられた。
「もし、騙してたら、あなたの顔がなくなると思っていてください」
冷たいドスの効いた声を聞いた野盗は気絶した。
俺も一瞬、震えた。
「それにしても、どうするんだこいつ?」
「ああ、そうですね。このままにしといた方が脱獄したとして、罪状が増えるかなと思ったんですが」
うわっ、ひどい。
「ですが、迷惑をかけると思いますから、元の場所に戻そうと思います」
あー、これは完全に物扱いしてる。
「で、で、ですから、お願いし、ししてもいいですか?」
サクヤは後ろに振り返って、フードの隙間からあくびをしているのが見える少女に訊ねた。
「ふはぁぁ、我を使う気か仮の下僕のくせに偉そうだのう」
「あっ、あ、い、や、いやこれは」
「まぁ、今回は許そう。だか、そろそろそのどもるのとだんだん我から離れるのやめぬか」
「あっ、すいません。そそれは、頑張って直すようにします」
「早う、直すが良い。ふあぁ、我は眠くなってきた。この者を戻しながら、我は先に寝床に戻っておる。お主も早く来るが良い」
少女はパチンと指を鳴らすと、影が彼女と野盗の頭を飲み込んで、俺たちから離れていった。野盗を連れてきた時と同じように。
「本当に不思議な魔法だな」
俺は自然とこぼした。連れて来た時に見た時は驚いて、叫びそうになった。まぁ、それを少女から腹にパンチをされた事により、うめき声に変わったが。
あー、思い出すとまた腹が痛くなる。
「彼女はやっぱりすごいですよね」
「すごいがお前もすごいと思うぞ」
「すごくないですよ。僕は何も持っていないんですから」
「いやいや、野盗を毒を仕込んだナイフで黙らせたじゃん」
「あっ、あれは嘘ですよ」
「はぁ!?」
えっ、嘘だろう。
「ああ言った方が素直に教えてくれるかなと思いまして」
サクヤはなに食わぬと顔で答える。
俺の頭はいろいろ駆け回ったが、一番重要な事は。
「俺は、お前が、サクヤが怖いよ」