僕の方だから
サクヤの目が一瞬大きく見開いたがすぐに息を吐いて、目を閉じた。
「やっぱり、そうですか」
と呟くと俺に向けてた短剣をゆっくり下ろして、目を開けた。その目はどこか納得したような、どうにもならない悲しさを感じた。
「そうですよね。情報があったら、売るのが情報屋ですし、しょうがないですよね」
自分自身に語るようにサクヤは言った。
「俺は確かに目つきの悪い奴にサクヤと、もう一人の分の情報を売った。そのせいでもう一人が殺されたのか?」
俺はさっきの女店主に聞いた話で知った。だけど、サクヤの口から聞きたかった。自分のせいで死んだのだから。
「はい、元気が、僕の親友が殺されました。あなたが言っている目つきの鋭い男に、殺されました。婚約者と一緒に、婚約者を守るように死んでいました」
「そっか」
俺は何も考えずに率直に頷いた。
「ごめんな」
「謝っても元気達が帰って来ませんよ」
サクヤはバッサリと刺さるような声で言う。
「あ〜、それ一番キツイな」
本当にキツイな。そして、自分自信に嫌気がさす。
今まで、キツイ事はいっぱいあったけど、これはキツイよ。友人の親友を殺す手助けをするなんて、幸せな未来が待っている人の殺す手助けをするなんて、苦しい。
「それで、サクヤは俺を殺すの? 俺はそれでもいいよ。こんな仕事を生業にしてんだから、いつでも殺される覚悟だけはしているつもりだ。それに、サクヤは俺を殺す資格がある」
本当に殺されてもいいと思う。俺は誰かが死ぬような情報を売る事は無いようにしてきた。恨まれたり後味が悪くなるのは嫌だから、自分自信が嫌だから。親父達のようになりたくないから。そんな信条でやってきたのに。よりにもよって、友人の親友を殺す情報を売ってしまうとは情報屋失格だ。失格でもなくても自分が許せない。自分自身が許せない。
「そんな事するわけありませんよジャンさんはただ情報を売ってだけで実行したのはあいつですし、ジャンさんは悪くありません。それに、僕はジャンさんを殺したいとは思ってません」
サクヤはニコッと笑った。
「それに、死ぬのなら元気を助けられなかった僕です。だけど、僕はあいつを殺すまで死ねないです」
冷たい声でそう言うサクヤの瞳に殺意に燃える冷たい焔が見えたような気がした。