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異世界に転移した弱気魔法使いは吸血鬼の下僕になるそうです  作者: ジャスミン茶
第一章 雪が降る夜に咲くユリ
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ジャンさんの最悪な日は続く

「はぁ」

 ため息がこぼれる。

 今までこの仕事を続けてきて、危ない事や危険な事はあったけど、これは今までで一番きつい。かもしれない。

「どうして、俺だと思うのかな?」

 俺は今の心情を隠すために笑う。

「ただ単にこの町の数少ない情報屋の中で一番有能だからです」

「そんなふうに認めてくれてありがたいねぇ」

「いえ、本当の事だからです。それに、ジャンさんは頭が切れますから」

「いやいや、俺は頭は悪いよ」

「そんな事ありませんよ。だって、僕がこの世界の住人じゃないと分かっているんでしょ?」

 サクヤは首を傾けて同意を求めた。そのしぐさから圧を感じる。

「その根拠は?」

 俺はサクヤに訊ねると俺を真っすぐ見て答える。

「ジャンさん、あなたの左目はいつもスキルを使用していますよね。〈観明〉と言う見た相手の情報を読み取れるスキルで」

「へぇ~。よくわかったね。これ結構マイナーなんだけど」

「マイナーじゃなくて、大きなデメリットと手に入れるのが難しいから誰も手に入れなくて、忘れ去られたスキルですよ。そのスキルは常時発動し続けて、見た相手の情報を〈観察〉より多く深く読み取れるスキル。その代わり、発動したら止めることができないデメリットがあります。死ぬまで」

 俺は感心した。

「そうだ。これって、結構きついんだよ。見た相手の情報を四六時中、頭に入ってきて、誰かといて休まることは無いわ。見たくもない情報も見せられるはで、良い所を悪い所を差し引いても悪い所しか残らないよ。もう、最悪だよ。このスキルを会得する時、俺はどうしてもこれを手に入れらなくちゃいけなかったけどさ、はぁ、こんなのいらなかったよ。それにしてもよく知っているね」

 俺が指で左目の瞼を抑えて、大きく見せる。

「この町に来る前の所でスキルについて調べまくったので知っていました。そのスキルの性質も会得方法もそのスキルの判別方法も、だから、ジャンさんがそのスキルの持ち主なのは分かりましたから、見せなくて大丈夫です」

 サクヤは軽く、止めるように手を振った。俺は瞼から指を離した。

「もしかして、俺がこのスキルの持ち主だって、初めて会った時から知っていたの?」

 サクヤはコクっと頷いた。

「はい、初めて会った時に数分、右目はしているのに左目だけが瞬きをしなかったので、それで分かりました」

 そう、左目は右目より瞬きするのが少ない。このスキルのせいで、だから、基本的に左目は目は少し痛い。

 それにしてもサクヤは俺の事を、

「気持ち悪いって思わなかったのかな? サクヤは自分の事を勝手に知られて?」

 サクヤは何事も無いように

「思いませんでした。その時は僕なんかの情報を読み取っても意味がないのに大丈夫かなと思いました」

 答えた。


 普通は嫌がるのに、逆に俺の心配をするのか。

 すごく優しいのかお人好しなのか。

 それとも、それほど自分に自信が無いのかサクヤと言う人物は普通ではないのか。


「話は戻しますがそれで僕が何のスキルを持っていない冒険者である事をジャンさんは知りました。そんな僕はこの世界では異質な存在、そして、この世界では珍しいこの黒目黒髪を持つは僕はより異質さが増している。そんな、異質すぎる存在は同じくこの黒目黒髪で特別なスキルを持つ異世界を転移した人達と同じ、いや、その人達の仲間だって考える事は簡単です」

 サクヤは自分を異質な存在と呼ぶのにためらいが無かった。

「僕が異世界転移したと分かりました。もう一人、元気の方はこの町を歩いて、すれ違うくらいで分かります。そうして得た情報を売りましたよね。そして、その情報を売った日があの時、最後に僕がポチさんの店でジャンさんと会った日、彼女がジャンさんの指を折った日、あの時、ジャンさん最初に挨拶で瞳が少し揺れていましたし、僕が見ていない時、数秒の間、少し眉間を寄せてしましたよね。それで、何かあるなと思ったんです。何か、隠しているのか? 騙しているのか?」

 サクヤは目を鋭くさせ、

「あの日、あなたは僕と元気が異世界転移した人だと、その情報を誰かに売りましたね?」

 サクヤは腰にある短剣を抜き、俺に向ける。


 ああ、これは本気だ。

 ああ、本当に今日は最悪だな。


「そうだ。あの日、俺は二人の情報を売った。目つきの鋭い男に」


 

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