誰に教えた
「あー、これはどういう事かな? サ、ク、ヤ君」
俺は極力、平常通りの笑みを浮かべる。どこか、サクヤに対しての恐怖心を隠すために、
「いえ、少しあなたに聞きたいことがありまして」
サクヤは笑う。いつもの弱弱しいが優しい笑みで。
だけど、そこには弱さも優しさも感じられない。
感じられるのは隠しきれない殺気と怒り。
「えー、なんか怖いんだけど、俺は基本優しくされてほしいんだよね。特に女性にね」
俺はわざと軽口を言う、そうしなければ、今にもこの殺気に殺されそうだ。
「ご冗談を」
サクヤは優しい声で言うがそこに優しさは全く感じられない。
「あっはっはっは、そうかそれで、俺に聞きたい事って? 場合によっては金払ってもらわなくちゃいけないよ。そうしないと、俺は話さないよ。たとえ、君、サクヤに今ここで殺されてもね」
こんな俺でも自分の仕事には誇りと責任を持っている。金を払わない限り、たとえ、自分や大切な人が殺されても情報を渡さない。それが、情報屋としての俺の意地だ。
「やっぱり、ジャンさんはカッコイイですね」
サクヤの殺気が消え、手に持っていたナイフを腰にしまった。
「へぇ~。俺って、かっこいいんだ」
「はい、かっこよくてすごいなと思っています」
褒められて、少し嬉しいができればかわいい女子に言ってほしかった。いや、サクヤも見ようによっては少しはかわいいと思えるが。
「僕はかわいいって言われて、喜ぶタイプじゃないですよ」
あっ、なんか読まれた。
「ジャンさんは初めて会った時とは全く変わっていませんね」
その優しい口調はいつも通りなのにどことなく感じる怒りは消えない。
「それで、聞きたい事ってなんだ?」
俺は柔らかい会話に終止符を自分で打った。
「僕が聞きたい情報はあなたがある情報を売ったかについてです」
サクヤの声色に鋭さが増した。
「僕と元気がこの世界の住人じゃない事を、元気が特別なスキルを持っている事を誰に教えたんですか?」