表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

「彼女」の笑顔と「彼」の涙

作者: 鈴蘭
掲載日:2018/02/07

友人にお題を出されて書きました。

お題がなにか考えてみてください。

月日がたつのは早いものですねぇ。


庭の鉄棒を眺めながら隣の「彼」に話しかけます。


そうそう、覚えていますか?逆上がり事件。

今思えば事件と言うほどでもないですけど、その頃の私達にとっては事件でしたよねぇ。


背中を撫でる心地よい感触に目を細めながら話します。


あの日、



「友達はみんな逆上がりできるのに、僕だけできないんだ」



って朝から晩まで泣きながら練習して、季節外れの熱中症にかかって、お医者さんにしかられましたねぇ。


そのときはピカピカだった鉄棒も今では錆びてしまいました。

私もこの頃足腰が弱くなったみたいです。


そろそろお迎えが来ますねぇ。

あらあら、泣かないでくださいよ。

あなたには笑顔が似合います。


泣き出してしまった「彼」の目から涙がポロポロとこぼれ落ちます。


ほら、お迎えが来ましたよ。

きれいなものですねぇ。

あなたの見えている世界がやっと分かりましたよ。

きれいな色です。


あなたが大好きですよ。

あなたは一人ではありません。

まだ若いのだから、幸せになってくださいね。


だんだんと背中を撫でる「彼」の手の感覚がつかめなくなってきました。

本当にもうおしまいみたいです。


悔いのない人生でした。

視界が白くなりました。

「彼」の顔がぼやけます。

最後は笑って別れましょう。



「ありがとう」



「彼」の驚きで彩られた涙に濡れた目を最後に世界から音が消え、色が消え、匂いがなくなりました。


それでは、



また会える日まで、さようなら。










ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー









母親が連れてきたことで、俺は「彼女」に出会った。


始めのうちは人見知りしてなかなか打ち解けれなかった。

でも、一度遊んだら、そこからは兄弟同然の仲になった。

一緒に寝て、一緒に遊んで、一緒にご飯を食べて、

何から何まで一緒だった。

本当に楽しかったんだ。


学校で帰りが遅くなっても「彼女」は寝ないで待っていてくれた。

俺が悩みを打ち明けられるのも「彼女」だけだった。

いつもいつも黙って聞いていてくれたんだ。

俺が怪我をしたりするとすごく慌てていたっけ。


そうそう、逆上がり事件を覚えてるか?


「彼女」の背中を撫でながら心のなかで語りかける。


あの時は大変だった。

友達全員ができる逆上がりができなくて、悔し涙を流しながら朝から晩まで練習して、季節外れの熱中症にかかったんだよな。


お医者さんに怒れちまった。

…今となってはいい思い出だよ。





なあ、だから、また思い出をたくさん作ろう?


だんだんと「彼女」の体から力が抜けていく。

そんなことを認められるはずがなく、

必死に「彼女」の体をさする。


大丈夫、約束したんだから。

一人にしないって。


大丈夫。

ずっと一緒にいるんだ。


だから、目を閉じないで、開けて。


ポタポタと俺の涙が「彼女」の背中に落ちる。

嫌だ、

そんな声出さないで、


おいていかないで


一人にしないで



「ありがとう」



「彼女」が言った。

話した。

あり得ない。

驚きに見開いた俺の目から涙があふれでる。


その言葉を最後に、「彼女」は二度と目を開けることがなかった。



「彼女」をお揃いで買った毛布に包む。

「彼女」の匂いが染み付いている毛布。



また、涙が出てきた。

覚悟していたはずだった。

わかっていたはずだった。


「兎」の寿命は短いって。



でも、泣いたら「彼女」が悲しむ。

だから、


…だから、




「また会える日まで、さようなら」




笑顔でいよう…。




つたない文章ですが、読んでいただきありがとうございました。

お題は「兎、毛布、鉄棒」

です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] こんにちは! はじめまして! 宜しくお願い致します。 素敵な小説でした!愛のある物語でした!重苦しい悲愴感がなくて、希望のある「二人」の心の交流を感じました。未来で再び会うための誓い、思…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ