社会不適合者の放課後
平成と呼ばれる時代になってからもしくはそれよりも昔から多くの人は「この世に妖怪や悪魔なんて非現実的なものは存在しないなぜなら非科学的だから」と思うようになっていた。科学は人類を枕元にミルクを置いて淫魔をに持って行かせるような信心深い人種から寝る前に美容の為のサプリメントをバリボリ貪り食うような素敵な人種へと変化させた、ちなみに俺は別に近代科学が人類を堕落させたとか自然科学は自然界の上位者を侮辱する行為だとかそんなことを言うつもりはない。
ただ一つ言わせてもらうならこの世界は人間が遺伝子をいじるよりも昔から、あるいは人間がトンとツーで遠くの人と交信を行うよりも以前から、信仰の塊みたいな男が王に処刑される前から存在している。
悪魔や妖怪の一つや二つ、居てもあっても不思議ではないだろう?
「おーい聞いてるのか月影また居眠りでもしてみろ学期末の考査から五点削り取るぞ」
「サーセン、昨日魅力的な女の子と熱い一夜を過ごしたせいで頭が沸騰してるんですよ、寝かしてください」
「沸騰してるのはお前の頭だろうが」
県立 三ヶ丘高校 男子の制服は面白くもなんともない黒色の学ラン女子は海兵でもないのに淡い紺色のセーラー服それが俺が今睡眠を取っている高校の名前だ。四月の麗らかな日差しが差し込んでくる午後の授業で寝るなといのは目の前におしそうなケーキがあるのにその横にあるティーパックの安っぽい紅茶で我慢しろと言われるのに等しいと俺は思っている。つまり、黒板の前に突っ立って将来何の役にも立たない数学の知識を提供してくるバーコードの言葉なんて無視して俺は窓側の最後尾で眠りにつくということだ。
もったいぶった言い方をしなければ、居眠りするということだ。ここ県立三ヶ丘高校は普通科の高校で県内でも有名な進学校でもある、俺の成績は……まぁ、この進学校に在籍できるのがウソのように思える成績とだけ言っておこう。しかし、これには理由があるそう教師共が毎日催促してくる提出課題を家のシュレッダーに入れても許されるくらいのそんな理由がある。
俺が二の腕を枕の代わりにしてもう一度眠りにつこうとした途端に教室にある四角形のスピーカーから電子音のチャイムが流れてきた、授業終了のチャイムだ。黒板の前でふんぞり返っていたバーコードは教卓の上にあった授業道具を素早く片付けると急ぎ足で教室から出ていった、黒板の上にある丸い時計に目を向けると現在時刻は午後四時十五分。……ああ、これ今日最後の授業だったのね。
「いや~今日も見事な爆睡っぷりだったな夕!井上が何度もお前に質問投げかけて起こそうとしてんのに全部無視してんだもんな、いや~ホントにスゴいよお前」
「だまらっしゃい。テストで赤点取らなきゃいいんだよ、大体こんな勉強してなんになるんだよ」
寝起きの俺に声を掛けてきたのは関口大輔身長百八十センチにいくかいかないかの長身系イケメンスポーツマンだ、どこの学校にも一人いるかいないかの完全無欠のイケメン野郎だ。関口とは長い付き合いではない高校に入って知り合った、ちなみに俺は二年生なのだが関口とは一年の時に知り合った。
メンズ用のファッション雑誌の表紙を飾ってもおかしくないイケメン野郎ぜ俺に興味をもったキッカケは俺の授業態度だったらしい、どうして進学校に居るのに勉強をしないのかはたまたなぜ停学あるいは退学にならないのか興味があったらしい。まったくもって変わった奴だ。
「関口、お前俺としゃべってる暇あるのか。放課後ってことはお前サッカー部の練習があるだろ」
「ああ分かってるさ、ただ今日の最後の授業が本当に見てて面白かったもんでな一言お礼を言いにきたんだよ」
「感動したなら金をくれ、あるいは飯おごってくれてもいいぜ」
「夕がテストで僕の点数を超えたらなんでも奢ってあげるよ」
それはつまりカモシカが猟銃を持った猟師に勝てを言っているようなものだ、とりあえず机の中に入っていた国語辞典を投げつけてやったがサッカー部次期主将は後ろ向きのまま俺が投げつけた国語辞典を華麗に回避して教室から出ていった。ドフゥ!国語辞典が床に落下して鈍い音が出たが気にする生徒は一人もいなかった。
いつもこんなじゃれ合いをしているのもあるが放課後に教室に残って勉強しているのは国立大学を目指しているようなガリ勉くんもしくはガリ子ちゃんくらいしかいないどうやら彼らは不良高校生が投げた国語辞典が床に落ちる音に注意を向ける余裕もないようだ。
スマホの音楽を聴きながら勉強する人もいれば隣に居る友人と答え合わせをしながら勉強する人もいる、俺には一生真似できない芸当だろう。漢検用テキストだとか過去問題集だとか数Ⅱだとかと五分以上面と向かってにらめっこしたら失神する自信がある。そんな真面目sを横から眺めながら俺は机の中に一日中入っていた教科書共を四角形の鉄籠から解放する、さぁ戻るぞ諸君誰も待つ人のいない我が家へ。
入学二年目にしてまったく傷が付いていない新品同然の真っ黒のスクールバッグの中へ教科書を放り込んだ俺はスクールバッグを肩に引っ掛けてスマホ片手に教室の外に出ようとした、そうしたのだ。つまり、まだ俺は真面目sが残っている教室の中に居る、なぜなら突然横から誰かが俺の制服を引っ張ったからだ。
片手に持っていたスマホを学ランのポケットへと滑り込ませ視線を横に向けるとそこには一人の女子生徒が居た、名前は知らんしかたねーだろう面識がなくても二学年の生徒全員の名前を憶えているどこかの関口クンとは記憶媒体のスペックが違うのだ。俺に分かることは俺の学ランの袖をちょこんと掴んでいる女子生徒は身長百七十センチの俺よりも十五センチ近く身長が低くて茶髪が少し混じった黒髪でショートボブでしかも自分から袖を掴んできたくせに妙に慌てていてオロオロしているということだけだ。
「あ、あの!影月さん……ですよね?」
「…………そうだけど、アンタは」
「私、鶴葦地子って言います!じ、実は姫華のことで相談があって。あ、あの!姫華っていうのは私の友達のことで…………」
目の前の女子生徒はしどろもどろになりながら何かを俺に『相談』しようとしている、参ったな。こんな小動物系カワイイ少女に話しかけられるとは…学校では極力面倒事に巻き込まれないようになおかつボッチにならないように生活しているせいで普段は女子と話す機会なんてないのに、ていうか『相談』だって?そんなの学校で浮いてる系男子の俺に話しても仕方ないだろうに。面倒だな……よし決めたどんな相談かは知らないが超絶万能系イケメン男子関口に丸投げしよう。
「え~と、鶴葦さんだっけ。なんの相談かは知らないけど俺になんて話しても何の解決にもならないと思うし、こういうのは関口に話すのがイイと思うけど」
スマンな関口、今度コンビニで高めのスナック菓子奢ってやるから全国大会クラスの丸投げを許してくれそれからクラス連中の視線もイタイんだよ、普段女子と滅多に話をしない俺が話をしているプラス女子の方から話しかけてきたってことで勉強をしていたはずの真面目sが視線をこっちに向けてるんだよ勘弁してくれ。
「え、いや……あの、でも」
「関口だったら多分七時くらいまでグラウンドで部活やっていると思うから、そんじゃなんの相談かは知らないけど俺はこれで」
そう言って逃げるようにして教室のドアに手を掛けた瞬間、少女がある単語を呟いた。
「わ、私……聞いたんです月影夕さんだったら……その『霊』とか『怨霊』を退治することが出来るって!」
「…………誰に聞いたんだよそんな荒唐無稽なデタラメホラ話を」
「近くにあるお寺の住職さんに聞きました『影月夕だったらなんとか出来る』って」
「まったく、マジかよ……はぁ、しょうがないなアンタ確か鶴葦だったよな。話は聞いてやるでもどうするかは俺が決めるこれでいいな」
これ以上ここで話をしていると明日から『ショートボブの美少女とオカルトチックな話をしていたブ男』なんて噂を立てられかねない、俺はとりあえず聞くだけ話を聞くことにした。そして目をパチクリさせている依頼者の手を取り教室から飛び出した。飛び出した廊下の窓の外は既にオレンジ色に染められていた幽霊?悪霊?怨霊?そうだなその類の『相談』は確かに俺の仕事だよ自称『妖魔始末人』の俺の仕事だよ。
二週間に一話程度のゆるいペースでやろうと思います、ハーメルンでも少し小説を書いてましたがオリジナルはまったくの素人ですのでよろしければ感想などでご指摘やご意見などいただけると嬉しいです。