こんなお年玉はイヤだ!
祖父母の家へとやってきた小学五年生の太郎とおばあちゃんのお話。
〈その1〉
「太郎、お年玉だよ」
「やったぁー」
ばあちゃんからもらったお年玉。太郎がポチ袋の中身を見てみる。
なんと、5円玉だけであった。
「ばあちゃん、なんで5円だけなの」
「ご縁がありますように」
「えっ……」
〈その2〉
「太郎、お年玉だよ」
「やったぁー」
ばあちゃんからもらったお年玉。太郎がポチ袋の中身を見てみる。
驚くことに、札束が多く入っていた。全部で50枚。
「ばあちゃん、こんなにもらってもいいの?」
「いいのいいの。太郎のためだもの。わざわざ銀行から盗んできたかいがあったねぇ」
「ばあちゃん……」
〈その3〉
「太郎、お年玉だよ」
「やったぁー」
ばあちゃんからもらったお年玉。太郎がポチ袋の中身を見てみる。
1万円札が入っていた。
「うれしい。これで欲しかったゲームが買える!」
「それはよかったね……」
突然、ばあちゃんがおいおいと泣き出した。
「どうしたの、ばあちゃん」
「あたし、これからどう生活すればいいのかわからん。もうお金がない。食料もない。ああ、朽ち果てる運命なのか。餓死するのか。せめて1万円があれば、なんとか長生きできるのに!」
「……お返しします」
〈その4〉
「太郎、お年玉だよ」
「やったぁー」
ばあちゃんからもらったお年玉。太郎がポチ袋の中身を見てみる。
中には何も入っていなかった。
と、そのときビー玉がたくさん降ってきた。
「ば、ばあちゃん。どういうこと!」
太郎には意味が分からなかった。ビー玉をよけるのに必死である。
「太郎が欲しいのは、これだろう?」
「えっ?」
「落とし玉」
〈その5〉
「太郎、お年玉だよ」
「やったぁー」
ばあちゃんからもらったお年玉。太郎がポチ袋の中身を見てみる。
1万円札が2枚はいっていた。
「うわあ、ばあちゃん、ありがとう!」
「いいのよ。偽札だからね」
太郎はポチ袋をゴミ箱にぶん投げた。
〈その6〉
「太郎、お年玉だよ」
「やったぁー」
ばあちゃんからもらったお年玉。太郎がポチ袋の中身を見てみる。
なぜかクレジットカードが入っていた。
「ばあちゃん、これ……」
「太郎も大人の世界を味わうがいいさ。汚れた金の生き様をな。ヒャハハハッハハアアアアアウッヒアアァァァ!」
ばあちゃんが壊れた。
〈その7〉
「太郎、お年玉だよ」
「やったぁー」
ばあちゃんからもらったお年玉。太郎がポチ袋の中身を見てみる。
中には『魔王』と書かれたカードが入っていた。
「太郎、そのカードを見てしまったということはお前を異世界へとワープさせなければならない。魔王に打ち勝つ勇者になるのじゃよ」
「な、なんだって!」
「と、いう芝居を一回やってみたかったのじゃ」
「ですよねー」