8話
走る。
走る。
二人の手は離れない。
頬に風を滑らす。
木々たちが騒めく。
二人を導かせるかの様に。
森全体が歓迎する。
「ねぇ、咲。いつになったら…」
縁の手を握り、走り続ける咲。
木々たちの隙間から零れ落ちた日差しで、銀色の髪はきらきらと光っていた。
走っている最中、面をつけた咲の横顔が、とても暖かく感じた。
ハ、と前方を見ると、崖のような段差があった。
「さ、咲、あぶなっ!!」
咲は縁の声など、聞く気もなく。
聞こえないかのように、走るのを止めなかった。
縁はギュ、と目を閉じ、唇を噛み締めた。
縁の腰をふわ、と何かが包み込む。
咲は、ジャンプした。
体が軽い。
「目を開けて…」
耳元で、咲の声が聞こえた。
目をゆっくりと開けてみた。
「わぁ……」
「どぅ、きれいだろう?」
「えぇ、とっても…」
「そりゃ、よかった」
私は見た。
緑の園を…。
それは私が思い描いてたものより、遥かにきれいだった。
「ありがとう…咲」
少しして、縁は恐る恐る口ずさむ。
「ね、ねぇ、咲?一つ聞きたいことがあるけど…良いかしら?」
「あぁ?」
「わ、私たちこれからどうなるの??」
「ひひ、そんな恐がらなくても大丈夫さ。下は海だ」
あと、少しというとこで、咲が口にした。
「目を閉じて…」
ひやり、と冷たい…。
その冷たさは、夏の日差しには、心地良かった。
目を開けると青空が広がっていて、私と咲は海に浮いていた。