5話
「ねぇ、咲は此処で何してたの?」
「……何も」
「ふぅん」
「…此処、落ち着くから」
「物好きね。神社が好きなんて…」
「ひひ、そうか?」
「おっと。もう、女は帰った方が良いんじゃないか?」
空が夕焼け空に変わった。青色からゆっくりと、薄暗いオレンジ色へと染まる。
しかし、帰れ、と言われる程、暗くはなかった。
いや、それどころかまだ、明るいほうだった。
「私まだ、大丈夫よ?」
「いや、そうじゃなくて…あんまり暗くなるとお化けでるぞ」
「ふふ、わ、わかったわ…今日は帰るから」
「ぁ?あぁ…気をつけて」
「ありがとう」
私は神社の鳥居を潜る前に、もう一度、振り返った。
「ねぇ、咲…明日も来ていい?」
「来たかったら…おいで。相手ぐらいしてあげるさ」
そして、鳥居をくぐった。
「お化け…か、咲って案外子供じみた事 言うのね」
縁は帰る道中、くすくすと笑い呟いた。
「どこの子だろう?見かけない子だったなぁ〜」
石ころを蹴りながら、歌を口ずさんで、家へと帰った。
「たっだいまぁ〜」
「よう、早かったな」
「ぁ、里兄…」
「お、なんだ?」
「ねぇ、都会の人って…面とかを付けて、顔を隠したりするもの?」
「ぷっ…はははは!!何ぢゃそりゃ〜初めて聞いたぞ?そんな事…」
里兄はお腹を押さえ、大笑いをしながら、廊下を転び回っていた。
「はぁ…もぅいいよ」