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君との距離  作者: ギン狐
12/18

12話




深緑の森を紅葉が少しずつ、紅へと染めてゆく。



しかし、森に一番近い、神社から見てみると、まだ、緑が多かった。



落ち葉も、淋しそうに地に落ちて―…秋の始まりをも感じさせられた。






私の隣では、面を付けてるあなたが寝息をたててた。


静かな神社で―…


一定の呼吸と―…


面越しに見える横顔―…



あなたの細く、白い手が…微かに震えていた。




「―――……咲?」



細い指に、そっと自分指を当てる。

そして、手を握ってみた。



咲の手は、意外にも大きかった。



そして・・・

ひんやりと

冷たかった。




そのせいか、咲の手を触ってることを忘れ、いつの間にか歌まで歌っていた。




*    *    *




「――…もう、終わり?」

「咲…起きてたの??」

「あぁ、なんで…歌うのやめた??」

「止めたんじゃないわ。これで終わりなの」

「中途半端だ…」

「そうね、でも、良い歌よ」

「そういえば…」

「ん?」

「初めて会った時も、それ歌ってた気が…」


縁は瞳をつぶり、考えた。か、と思うと思い出したかのように、瞳を見開いた。


「そ、そうよ。歌ってたわ」

「ひひ、記憶力良い〜」

「え、でも、なんで??」

「何が??」

「…よく聞こえたわね」




そう、初めて会ったあの日…私とあなたの距離は、神社から鳥居までの距離と、そう変わらなかった。

だから、口ずさんだ歌は、鼻歌同様…小さなはずだったのだ。




「簡単に言えば、この神社の周りは…おれのテリトリー」

「テ、テリトリー?」

「そう…それに、縁が思ってる以上に、声は大きかった」

「え、うそ!!」

「ほら、いつも声が小さいから…こういう時、大きく聞こえるんだ」


私は、頬に手を当てた。


…恥ずかしい


そう思っていた矢先、咲はさらり、と言った。


「でも、綺麗な声だった…だから、歌を歌うのは止めないで…」


彼のその一言で、私の頬は赤くなった。


りんご色に染まった頬。

それを静めるのに、どれほどかかっただろう?

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