11話
夏の熱さも
蝉の声も
日差しも
生温い風も
終わりへと近づいていた。
森が紅く、寂し気な
紅葉へと染まってゆく。
すると、次第にそこら中
秋の香りが漂う。
窓際の席から、その全てがわかる。
頬杖をつきながら、森の方を眺める。
「…早く帰りたい」
ぼそ、と声に出す。
「……咲」
授業中は上の空。
ただ、あの場所へ――。
あなたに会いたいから。
「神野、次、移動教室よ」
真っ白だった頭の中で、声がした。
「え?あ、島波…」
私は、目の前にいる友人の名前を呼びなおした。
「島波、いつ授業はおわったの?」
「さっきよ。ねぇ、神野…夏休み中に何かあった??様子が変よ」
「平気よ。それに、夏休み中はずっと、人と遊んでたわ」
私が、そう言い終わると
島波は、前の席の椅子を引き、私と向かい合うように座り、言った。
「平気ならいいの。でも、心配なの…何もかも重荷にしてるようで」
「ふふ、ありがとう。でも、心配しないで…もし、私が苦しくなったら、その時は相談するから」
「…約束よ?あたしは、神野が苦しむ姿や、辛い姿は見たくないの…」
「えぇ…」
小指と小指を
絡めた。。。
『やくそく』
子供じみた“約束”
それでも、そこに、形があった…約束という名の。
だから、この約束は尽きることはない。
島波…ごめんね。
もし、あれが私の重荷になって…私が苦しく、辛くても…私はきっと、きっと…あの人を手放せない。
手放したくない。
だって、今も、会いたくて…会いたくて、たまらないんだもの。
ごめんね、島波。。。