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第17話

王妃さまの過去語り

鬱です注意!


殿下に投げかけられた言葉に、妃殿下は綺麗な顔を今にも泣き出しそうに歪ませた。




「ち……違うわ……違うの……」




白い手が、ドレスの生地をきつく掴む




「厭うていた訳ではなかったの……わたくしは、あなたに謝らなければならなくて……」




殿下はうつむいたまま、話を聞いている。

陛下は話を続けるように促した。




「あなたが生まれてから、わたくしは気分が優れない日が長く続いて……お医者様にも、原因がわからないと、気鬱のせいだと言われていました……」




小さな声を絞り出すかのように語る妃殿下が、なんだか小さく見える。




「丁度第一子だった皇太子が手の掛かる時期で……わたくしも疲れていたから、毎日を過ごすことでやっとでした……」


「あなたは小さく生まれたせいか、生まれたばかりの頃はしょっちゅう体調を崩してしまって、乳母やわたくしがお乳を含ませても吐き出してしまい、泣き声も弱々しくて、お医者さまにも長くはないと言われていて、わたくしは毎日泣き暮らしていました……」


「あなたの目がやっと開いた時はどれほど嬉しかったかしら。たとえあなたの目を見た、わたくしと仲の良かった侍女が辞めてしまっても、わたくしはあなたが居れば何も要らないと思っていたわ……」


「あなたが育っていくにつれて、わたくしの周りの侍女は減って行き、残ってくれた侍女も、影でわたくしを呪われた女だと言っていました。あなたを殺そうとしていた侍女もいました。わたくしは毎日心が休まらずに……心の病に罹ってしまったらしいのです」



王妃さまが小さく喉を鳴らす。



「毎日毎日、見える景色は全て灰色で、何をする気も起きずに、日がな一日呆けたように過ごしていました。あの頃のわたくしは、本当にどうかしていたのです。」


「陛下はわたくしとあなたを引き離しました。あのままでは、わたくしはあなたを虐待してしまっただろうから」


「お医者様に貰った薬を毎日欠かさず飲む事で、わたくしはだんだん、『ふつう』のわたくしに戻っていきました。陛下はわたくしに気を使って、毎日のようにわたくしのもとへ通って下さって……皇太子の面倒を見る事ができる程度に回復した頃に、陛下はあなたをわたくしを会わせようと考えていた事を、後に教えてもらったわ……」



「そんな日々が続いていたある日でした。新たに入った侍女が、食事の時に薬を用意するのを忘れて、わたくしは薬を飲まないまま、部屋でぼんやりと本を読んでいました」


「気分が悪くて仕方ないのは分かっていたけれど、侍女たちに心配をかけたくなくて、わたくしは普段通りに振る舞ったのです。」


「人払いをしてしばらく本を読んでいると、部屋の扉が開く音がしました。わたくしは侍女が戻ってきたのかと思い、扉の方を見ました」


「薬をきちんと飲んでいたなら、わたくしは正常な対応が出来たのかもしれません。しかしあの時のわたくしには、悪魔が来たかのように思えてしまったのです」


「わたくしは錯乱して、あなたにたくさん酷い事を言ってしまいました。頭の冷静な片隅ではあなたのことを我が子だと認知していながら、混乱に乗っ取られて、我が子に掛けるべきでない言葉を言ってしまったのです」


「あなたにはどれだけ謝っても足りません。お医者様に薬を飲まされて介抱され、わたくしが冷静さを取り戻す頃には、あなたについての酷い噂があちこちに広まっていて、あなたは既に、塔に隔離された後でした……」


「本当にごめんなさい。今更かと思うかもしれません。身勝手だと怒られても仕方ありません。あなたに嫌われても仕方ないと、分かっています。けれど、謝らせて欲しいの。許してくれなくても構わないわ」




「本当はあなたの事を愛していたの」



「ごめんなさい」





涙を流して言う妃殿下。

殿下がどう動くのかが分からないまま、会場の人々は静まりかえっていた








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