第11話
塔の外へ出ると、そこには既に大きな馬車が停まっていて、その隣には若い男性が立っていた。
私は慌てて彼にお辞儀をする。
「お待たせして申し訳ありません、リヴァプール公爵!」
「大丈夫ですよー、全然待ってないですしー。」
--彼と私が、殿下から注目を分散させるための、材料。
妖精のような美貌のリヴァプール第二師団長と、盛装した私が、揃ってこの宴に出席すること。
世のご婦人方はゴシップネタが好きだから、と言うことらしい。……というかコレ、私が後から絶対リヴァプール第二師団長ファンのご令嬢方に突き上げを食らうわよね……
今から覚悟しなきゃ……
そんなことを考えながら馬車に乗り込むと、そこには第二師団長以外の先客が二人いた。
一人は十代前半らしき可愛らしいドレス姿の少女、もう一人は……リヴァプール第二師団長そっくりの男性。
そっくりさんにしては似すぎているなぁと思いながら、チラチラ彼の方を見ていると、男性が不機嫌そうに話し出した。
「……見られるのが不快だから言っておくが、俺はこいつの弟だ。セルシウス・リヴァプール。で、こっちのはこいつの婚約者。ティナ・シェーン子爵令嬢。声が出ないので、彼女は筆談がメインで会話する。」
「よ、よろしくお願いします、セルシウス様、ティナ様」
セルシウス様はふいっと明後日の方向を向いてしまったが、ティナ様はにっこり笑ってドレスのポケットから出した手帳に、きれいな字で「こちらこそ、よろしくお願いします」と書いて見せてくれた。
「あ……でも、婚約者さんがいらっしゃるのなら、今回の件はご迷惑ではなかったのですか?ええと……」
「ああ、アルフレートで構いませんよー?二人ともリヴァプールですしー。……今回の件は、普通に面白そうだったから参加したんですー。ティナも面白そうだって楽しみにしてましたしー」
アルフレート様がティナ様の方を見てにっこり笑う。
仲が良さそう……でも、見た感じ、結構歳が離れてそうよね……
聞いておいた方がいいかしら?一応、今日の宴に途中まで参加する訳だし、まったく三人のことを知らない、っていうのもマズいわよね……
「あの……皆さん、何歳なんですか?」
「……俺は21歳だ」
「僕は23歳ですよー」
ティナ様が手帳にペンを素早く走らせて見せてくれる。
えっと……
“私は18歳です”
……え!?
思わず驚きの声を上げようとしてしまい、必死でこらえる
「私より、二歳年上なんですか」
なんとか平静を取り繕った声で言うと、彼女はにこにこしながらさらに手帳に文字を書き連ねる。
“よく13、4歳に間違われるんです。実年齢を言うとみんなに驚かれちゃいます。リリアナ様はあんまり驚いてないみたいですね”
「いえ、すごく驚きました……でも、普段メイドをしているので、結構突拍子のない事に耐性があるんです。」
「あの第六師団長の世話役なんだから、確かに色々動じていられないですねー」
言われた言葉にぎょっとしてアルフレート様のほうを見ると、彼はやはりにこにこ笑いながら教えてくれた。
「今回の件に協力するに当たって、第一師団長に教えてもらってたんですよ−。その様子だと、リリアナさんは俺達が事情を知ってることを教えてもらってないみたいですけどねー」
にこにこにこ。
こ、この人、何考えてるか分からない……!
なんだか彼に対する警戒心が強くなった私は、きっと悪くないと思う……
これから更新が滞るかもしれません……
詳しいことは活動報告にかいてあります。