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#1

 宣言通り—というか自分が予想していた以上に、俺は—俺たちは、有名になっていた。


鏡を囲むライト。鏡の上の丸時計。会議用の白机とキャスターのついた黒イス。

ライブハウス時代には有り得なかった控室にも、有難いことに見慣れ始めていた。



 朝からのリハーサルにかいた汗を油とりシートで押さえながら、黒イスにどかっと座る。俺の勢いに任せてイスが少しばかり後ろに滑る。


「お疲れ様」


俺の汗と荒い息を見て、メンバーの陽が麦茶を横に置いてくれる。

そのまま陽も、俺の真似をしたのか隣の椅子に勢いをつけて座った。


「りっくん、ライブ始まる前から頑張りすぎでは?」


陽は手でふわふわの茶髪を調整しながら、茶化すように言う。


陽の気遣いを一気飲みし、空のコップを置いて隣を向く。




 俺たちは、アイドル業をベースに、テレビ番組やラジオ番組などにも出始めている駆け出しグループ「Neo+(ねおぷらす)」である。


パステルピンク「マカロン」が担当カラーの最年少・ハル(陽)


純白ホワイト「クリスタル」が担当カラーで最年長リーダー・ジュン(准)


そして淡い青緑「スカイ」が担当カラーの俺・リヒト(理人)の3人組だ。



もともとは小さなライブハウスを借りてたまにライブをしていた程度だったが、路上ライブや動画サイトでの投稿などを地道に進めていたのが功を奏し、


少しずつ—だが着実に人気を得ていった。


持っているテレビ番組やラジオ番組はまだまだローカルなものや深夜放送が基本だが、事務所に所属し安定的に収入を得られている。


ライブハウス時代と変わって専業でできているのは、この仕事に専念できるのでとてもありがたい。





 今も昔も変わらずの3人で、このうちの誰かが抜けるくらいなら解散―というレベルに俺たちは一心同体だ。


「何回やっても、大きい会場は緊張しない?」


「……あのライブハウスがすき?」


質問を質問で返す5個下に、どっちもすきだよ、と答えてテレビをつける。


控室にテレビがあるなんて、都会はさすがだ。どれだけ大きくなっても、どれだけ人気になっても、テレビ局やライブ会場には胸が躍ってしまう。



「そっか今日、世界映画祭か」

隣で陽が呟く。その声につられて、俺もテレビを見る。


世界映画祭。


選ばれた世界の都市で1年に1度行われ、新人女優賞、主演女優賞、主演男優賞―等々、いくつかの部門に分かれて選ばれた女優や俳優が表彰される授賞式だ。



今年の開催地は日本・東京だ。


画面いっぱいにレッドカーペットが映る。


授賞式の時刻とライブ終わりの時刻を見合わせ、「お、見れるじゃん」と俺が口に出すのと同時に扉がカチャと開いて、リーダーの准が顔を覗かせた。


「理人、陽、そろそろ行くぞー」


何度味わっても慣れない高揚を抑えるように強くリモコンのボタンを押す。暗くなった画面に俺と陽が映っている。


「はぁーいっ」


最年少ながら肝っ玉の一番座っている陽は、俺を置いて准を追いかけていく。



俺も最終確認、と鏡をチラ見してから2人の後を追いかけた。

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