8年後の奇跡 後編
(何でもっと早く気づかなかったんだろう。僕馬鹿すぎ。)
アルバムを閉じて僕は寝た。翌日、僕はスーツを着て成人式に参加した。聖奈に会えることを信じて。
桜は満開で新成人は皆んなキラキラしていた。
「お、晴翔じゃんか。」
「海斗か。」
海斗に会った。
「スーツで来たんだな。」
「まぁな。袴レンタル高すぎる。」
「会場まで一緒に行こうぜ。」
「おう!」
僕と海斗は一緒に会場へ向かった。場所は体育館。パイプ椅子が綺麗に並んでいた。
「相変わらずデカいな。」
「そうだな。」
それから僕と海斗は時間までずっと喋っていた。
「そういえば、晴翔最近どうよ?」
「どうって、普通。大学は順調。」
「ほ〜ん。で、彼女できたか?」
「2人くらい、いたな。今はいない。」
「へ〜。今はフリーなんだな。」
「そう言うことになるね。海斗は?」
「俺?俺は〜いるぜ。彼女。」
「だろうな。」
正直とても羨ましい。僕は今まで本気で好きになった人が聖奈以外にいないから。
程なくして成人式が始まった。話が長くて頭の中に入ってこなかった。まぁ言いたいことは何となく分かったので良しとしよう。
成人式が終わった後の昼食の時間になった。
「晴翔〜。行こうぜ。」
「分かった。」
僕と海斗は昼食会場へ向かい始めた。
「お前に言っていいか分かんないけどよ、彼女がいるって良いぞ〜。助け合えるし、笑い合える。隣に肩を預けられる人間がいるって結構大事だからな!」
「あ、そう。」
「冷たいな。おい。」
「僕は、彼女はいないけど好きな人はいるからね。」
「え、誰だ?6年生のクラスにいたのか?」
「まぁ、な。」
「もしかして、橋本架凛か?!」
橋本架凛。当時のマドンナ的な存在だった。
「違う。確かに小4から小6までクラスが同じだっただけ。興味はあったけどそういう意味じゃない。」
「じゃあ誰だよ。あ、聖奈か?」
「静かにしろよ。相変わらずこう言う時だけうるさいなお前。」
「ごめんごめん。あれか、小6から好きだったってことは8年好きってことになるのか。純愛だな。というかそれでよく彼女2人もできたよな。」
「それはそうなんだけどな〜。聖奈ほど好きじゃなかったんだよ。」
程なくして会場に着いた。
「ここの中に、皆んないるんだな。」
扉を開けた。中には煌びやかな見慣れた新成人が沢山いた。8年前の卒業式を思い出す。
「ねぇそこに立ってないで中に入れば?」
後ろから架凛が話しかけてきた。
「何だ晴翔か。」
「橋本か!凄え久しぶりだな。高校以来?」
「海斗。中に入ろう?」
「だな。」
自分の席へ向かった。
「赤音!優香!遅いよ!」
架凛はクラスメイトだった赤音と優香を呼んだ。小学生当時は3人でよく連んでいてまとめてマドンナ的な扱いをされていた。一番モテていたのは架凛だった。
「架凛が早いんだよ〜。そう急がないで!」
「そうだよ。会場も食事も逃げないよ?あ、もしかして会いたい人でもいたの?」
優香はニヤニヤしながら架凛を見た。
「そ、そんなんじゃない!」
「海斗。彼女って架凛?」
僕と海斗は席に座って話していた。
「いきなりなんだよ。」
「あ、違うのか。」
「当たり前だろ?今の彼女は高校の時の彼女だよ。そういえば、今思い出したが架凛。晴翔のこと好きだって言ってたぞ。小学生の時。」
「小学生の時の話、だよな?」
「おう。聞いたらポロって言ってた。」
(何だよポロって。)
「別にどうでも良いな。8年も経ったら皆んな変わるだろ。」
「割と一途かもだぞ〜?」
「茶化すな。」
「悪い悪い。」
人が集まって乾杯をした。とても盛り上がっている。
「久しぶり、晴翔。随分変わったな。」
「累か!久しぶりだな。元気だったか?」
「もちろん。元気。後で連絡先交換しようぜ。」
「分かった!」
海斗が累と僕がいるところに来た。
「累、久しぶりだな。相変わらずイケメンで恨めしいよ。」
「お世辞ならありがたくいただこうかな?」
「あ、そうだ。累。架凛が昔晴翔のこと好きみたいなこと聞いたが今どう思う?」
「ちょっと海斗!」
「あり得るな。中学の時も好きだったみたいなこと噂で聞いたし、アイツ好きなヤツには一途って聞いたぞ?」
「へ〜。良かったなぁ?晴翔。」
「どこがだ。」
「実はあの時、聖奈に晴翔のことどう思ってるか聞いたことあるんだよな。」
「え、累?何で?」
「何でって、俺が気になったから。全部言ってた。晴翔が自分を好きでなくても自分は晴翔が好きだってな。早く言っておけば良かったな。」
僕は初めて知った。聖奈の想いを。両想いだったということを。
「そういえば、聖奈いないな。」
「風邪で休みとか聞いたな。」
「成人式の日に風邪って、最悪だな。」
その後、同窓会の知らせを聞いた。それは今週の土曜日だった。
「あ、ヤベぇ同窓会無理っぽいわ。」
「マジ?」
「マジマジ。彼女とハワイ行くんだわ。ごめん。」
全く悪びれていなかった。同窓会のひとりぼっちが僕の中で確定した。
パンフレットをもらって予定を確認した。
(会える、よな。聖奈。)
同窓会の日。僕は1人で会場に来ていた。
(ひとりぼっちは避けられない。聖奈に会って連絡先を交換したらすぐに帰ろう。)
「晴翔。止まってないで中に入ろうぜ?」
累だった。
「う、うん!」
同窓会でも乾杯をした。先日とは違い酒が多く出てきたためすぐに酔っ払った人間が出てきた。
(うわ、酒臭。)
「あ、晴翔だ。おひさー。」
声をかけてきたのは当時の学級委員の佐藤莱夜。
「久しぶり。酒入ってるね。」
「もちろーん。晴翔は彼女いるのか?」
「いきなりなんだよ。いないけど。萊夜には分からないよな〜。モテない人間の辛さは。」
萊夜は昔も今と顔が良く、色んな人にモテていた。
「別にモテてねぇよ。...晴翔って架凛のことすきじゃなかったか?」
架凛が一瞬こちらを向いた。
「何でそうなる。」
「結構喋ってただろ。掃除の時間とか文化祭の時とか。」
「いつの話だよ。覚えてないよ。」
「お似合いだと思ったんだけどなー。」
酒が入っているせいなのか萊夜はふにゃふにゃした感じで話した。
「じゃあ今は好きなヤツいるのか?」
「いる、けど。ここで言うことじゃない。」
「教えろよー。」
ダル絡みし始めた萊夜。
(助けてくれよ海斗...くっそ彼女さんとハワイなんか。絶対お土産催促してやる!)
「莱夜〜。向こうで呼んでるヤツいたぞ。」
「マジ?分かった、今行くー。」
「やっと離れた...累。助かった。」
「全然?アイツ酒弱いんだな。ダル絡みしてたし。」
「本当そうだよ。意味わからん。」
累と僕は酒を飲んだ。
「そういえば聖奈だけど、風邪は治ったが本調子じゃないから今日来てないらしい。」
「そう、か。残念。」
「累〜!こっちで飲み比べしようぜ!」
「おう!じゃ、また後で。」
累は声のした方へ消えていった。
(聖奈、いないのか。)
「どうしたの?顔色悪いよ?」
架凛だった。
「問題ない。疲れてるだけだ。」
「そう。ねぇ、晴翔の好きな人って誰?」
「教えない。絶対変に広がる。」
「私そんなに口軽くないんだけど?」
「無理。」
「そうか。そうだ、連絡先交換しない?」
「それも無理。できるだけ小学生のメンツとは連絡先交換したくないんだ。あんま良い思い出ないし。」
架凛はどこか寂しそうな顔をして去っていった。
(架凛には悪いが聖奈がいないならここにいる意味はないんだな。よし。帰ろう。)
僕は帰る準備をして部屋を出てエントランスに行った。
「晴翔!」
架凛が追いかけてきたみたいだ。
「架凛。向こうはどうした。」
「晴翔が好きな人って、聖奈、だよね?」
「さぁ、どうだろうね?」
「とぼけないで。聖奈が好きなんでしょ?6年生の頃から。」
「...本当に、架凛には敵わないな。」
「やっぱりね。聖奈がいないからさっきあんな顔してたんだ。」
「そうだよ。」
何かお見通しだったらしい。
「こんなこと言うのもあれだけど、私、晴翔のことずっと好きだった。今も好き。」
「うん。何となく知ってた。で、どうしたいの?」
少しイジめたくなってしまったのは内緒である。
「気持ち、伝えたかっただけ。」
「いつから?」
「4年生の、文化祭。」
架凛は赤面していた。10年も片想いされていたのか。少し驚きだったな。僕も人のこと言えないけど。
「ありがとうね。気持ち伝えてくれて。」
「うん。じゃあ、気をつけて。」
僕は帰った。
(晴翔、私は、ずっとあなたが好きだったのよ。私のことは皆んなマドンナって言って媚び売ってくるかマドンナってだけで好きになった人が沢山いた。でもあなただけば“私”を見てくれた。だがら、私はあなたが好きなんだよ。叶わないのは分かってるけど、だけど、悔しいよ。私の方がそばにいたのに。中学3年生の時クラス一緒だったじゃん。何で、私を好きじゃなかったんだろう。)
駅に着いた。
「はぁ。」
「晴、翔!」
誰だよこんな時に、と振り返ったら聖奈がいた。
「おい、まだ本調子じゃなかったの?」
「架凛に聞いた。こっちに戻ってきてるって。だから来たの。」
僕はその場に座り込んだ。
「え、どうしたの?!」
「会えた。やっと、逢えた。」
「8年振りだね。晴翔。」
僕は言おうと思っていたことを、口から出した。
「聖奈。好きだ。付き合ってください。」
聖奈は優しく笑っていった。
「もちろん。私も好きだよ。連絡先、交換しない?」
「ああ。」
スマホを出して連絡先を交換した。
その後5年ほど経ち、僕と聖奈は結婚した。
小学生の頃からしたら、こんなこ想像してなかった。あの時、卒業式の日に写真を撮っていたらこうはなっていなかったかもしれない。今になっては8年越しの奇跡とも言えるだろうな。僕が聖奈を幸せにしよう。そう思ったのだった。