「バレなきゃ犯罪じゃない」と云うけれど・・・? 〜贖罪の道を歩む〜
「かっ、頭ぁぁ・・・・・・」
「お頭しっかりしてくだせぇ・・・・・・」
「お頭ぁぁ・・・」と嘆く子分達。
そんな中。
「おいお前らやめろォ! みっともねぇぞ!」
声を荒げ、そう叫んだ男が1人。俺だ。
それに驚いた子分達が俺を見る。
が、気にせず俺は言葉を続ける。
「お頭はもういないんだ・・・・・・これからは姐さんと呼んでやれ・・・それが残された俺達が、今は亡きお頭のために出来る唯一の償いにして贖罪なんじゃないのか・・・? ・・・違うか?」
俺は子分達に励ましの言葉を投げかける。
そして、子分たちは元お頭を見る。
「そ、そうだな・・・お前の言う通りだよ・・・お頭───いや、姐さん、これからもよろ───・・・ん? あれ?」
そして、子分達が俺に視線を戻す。
「おいお前!?何オレ達の盗賊団の頼れる兄貴分みたいな顔していいこと言ってんだ!? それに、『俺達が出来る唯一の償い──』とか言ってオレ達にも罪を背をわせてんじゃねぇよ!! お前に出来る唯一の償いは死ぬことだけだ! 人質にしてたお頭はもう死んだんだ! お前ら気にせずやっちまえ!」
叫びながら向かって来る子分達。別にお頭は死んでいないのに。
「キャァァァ! 来ないでぇぇぇぇ!」
裏声で叫びながら俺は目を瞑り全身に力を込めて剣を振り回す。
その際、背中──というより全身が暖かくなっている気がした。
そして、振っている剣は今もテキトーに振り回しているだけなので1発も当たっていない・・・はずなんだけど・・・・・・
「うわぁぁぁ!?」
「やっやめ───うぎゃゃゃゃゃ!?」
聞こえてくるのは悲鳴と何かが壊れるようや音ばかり。
だかしかし、すぐに悲鳴は聞こえてこなくなった。
そして俺は、恐る恐る目を開ける。
「えっ・・・?」
そこに広がっていたのは血まみれで両断されているたくさんの死体。
それらは全員、先程までおしゃべりしていた人達だ。
「あ、アンタなんなの?」
そう怯えながら聞いてきたのは元お頭だ。
俺は元お頭を見る。
元お頭は、ビクッ!とした。が、言葉を続ける。
「わ、わかった! 今日のことは忘れるしあなたの恋人にでも何にでもなるから命だけでも助けてぇ!」
潤んだ瞳で俺のことを上目遣いで見上げるハゲ。
そんなハゲに対して俺は───
「ごめんね。見られたからには生きてはかえせないんだ・・・」
一応謝ってから、心臓をひと突き。
ゴフッ、と言って意識を失うハゲ。
俺は立ち上がり、ふぅ、と息を吐きすっかり暗くなった空を見上げる。
月が綺麗だ。
突然ですが、ここで1句。
やっちゃった やっちゃったなあ やっちゃった
「・・・・・・」
「あ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙!! やっちゃったじゃねぇよ!! ホントにやっちまったじゃねぇかよォォォ! どうすんだよこれぇぇぇ!? 立派な犯罪じゃん! 俺も今日から殺人鬼の仲間入りだよ! どうしてくれんだバカヤロォォォ!!」
そう叫びながら近くにあった木に頭を打ちつける。
その木に止まっていた鳥が、バサバサッと飛び立つ。
「いや待て少し落ち着けぇ俺! 幸い目撃者は1人もいないんだ。バレなきゃ犯罪じゃないって云うしなんとかなるはずだ・・・・・・うん、そうだよ! 世の中バレなきゃ犯罪にはならないんだから大丈───ぶ・・・?」
その時、俺は気付いてしまった。
今まで全く見ていなかった端っこの方に檻があって、その中に少女という名の目撃者達が入っていたことに。
そういえば最初金も女もなんたらかんたらって言ってたような・・・・・・これ、実は結構やばいのでは?
「バレなきゃ犯罪じゃない」と云うけれど、バレてしまえばただの犯罪である。