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無理なものは無理 


「まあ、サクマの17歳疑惑はとりあえずいいわ・・・・・・それより名前と年齢以外には何かないの?」


 アマネに遠回しに『もっとちゃんと自己紹介しろ!殺すぞ!』と脅される。


「そんなこと言われても・・・・・・本当になにもないからな・・・・・・何か聞きたいことがあるなら質問していいぞ」

「う〜ん・・・・・・じゃあ・・・ご趣味は?」

「なんだお前、お見合いがしたいのか?」


 お見合いの定番を心得ているアリス。これがお見合いならば褒められる質問だが、残念ながらこれはお見合いではないのだ・・・


「お見合いねぇ・・・・・・・別にいいけどアマネにだけ選択肢があるのが気に食わねぇな」

「はあ? 私だって貴方()みたいな(多分)馬鹿とお見合いなんて嫌よ。そんなにお見合いがしたいなら貴方()だけで勝手にやってなさいよ」

「貴方()ってことはもしかしてボクも入れられてる?」

「当たり前じゃない」

「デスヨネ」


 何もしていないのにとばっちりを喰らう可哀想なアリス。


「アホかお前。俺とアリスでお見合いなんて・・・・・・お見合いなんて・・・・・・お見合いなんて・・・・・・」


 ・・・・・・・・・・・・・お見合い、か・・・・・・・


「・・・・・・アリスが聖剣を引っこ抜いて勇者になったら・・・あり、・・・かな・・・?」


「「・・・・・・・」」


 俺の一言で場が凍りつく。もしかしたら俺には凍りの魔術の才能があったのかもしれない。やったぁ☆

 だが、やがて、アリスが気まずそうに、そして申し訳なさそうにしながら言う。


「・・・ごめんね・・・サクマ・・・・・・ボクにそっちの気はないんだ・・・・・・ホントにごめんね」


 などと謝りながら深く頭を下げるアリス。

 そして人生で初めて振られる俺。


「ちょ、ちょっとアリスくぅ〜ん!? ガチな感じで断るのやめてもらっていいかな!? 俺が振られた気分になっちゃうから! 冗談だから!」


 このままだとそっちの趣味をお持ちの方だと思われかねないため必死に否定する。というかもうすでに若干距離を感じる気が・・・・・・あれ? これ、もしかして警戒されてる・・・!?


「・・・・・・」


 だが、否定した後、俺は黙り込み、また少し考える。

 そして──


「・・・・・・でもね。実際、アリスが聖剣を引っこ抜いたら男達にモテモテになれると思うんだよね・・・」


 悟りを開いたような顔でそう呟く。


「ちょっと!? 真面目な顔で何言ってるの!? 流石のボクでも無理なものは無理だからね!?」

「ああそう・・・・・・いい線いけると思ったんだけどな・・・」


 実際アリスにはそれぐらいのポテンシャルがあると昔から目をかけていたため少し残念だ。フッ、こうなってしまったら仕方がない。次の候補を探すとするか・・・


「そんなに引っこ抜きたいなら貴方のヒノキの棒を抜けばいいじゃない?」


 アマネの口からひっどい迷案が飛び出る。


「誰のあそこがヒノキの棒だ!? 俺はヒノキよりシラカバの方が好きだ!! だからシラカバに訂正しろ!!」

「いや、そこ・・・? って言いたいけどボクもシラカバの方が好きだね」

「マジで? お前、どっかのヒノキの女と違ってよくわかってんじゃんシラカバ王子」

「ヒノキ派になろうかな」

「なんだテメェ。俺達シラカバ派を裏切ろうってのか? エノキの王子」

「エノキ!? ヒノキの王子じゃなくて!?」

「テメェのような裏切り者にはエノキ程度がお似合いだぜ」

「エノキ程度ってキミ、エノキの凄さ知らないの!? 鍋とかに必要でしょ!?」

「お前王子なのに鍋にエノキ入れてたの・・・?」

「悪い!?」

「いや、別に悪いとは言ってないだろ・・・」

「はぁ〜まったく・・・これだからシラカバ派はダメなのよ」

「はあ!? もういっぺん言ってみろや!!」

「とにかく、私はシラカバ派とお見合いなんて嫌よ」

「俺だってエノキ・・・じゃなかった、ヒノキ派のオメェとお見合いなんて嫌だよ!!」

「木ひとつでそこまで!?」

「バカ野郎お前知らないのか?」

「・・・?」

「木ってのはなぁ・・・・・・・・・・・・すっごく大事なんだぞ!?」

「知ってるよ!?それぐらいは! ないと困るもんね!」

「ああ。ムカつくあの子のケツをぶっ刺す時にないと困るもんな」

「どんな木の使い方!? 普通に焚き火に使えるとかでよくない!?」

「焚き火だって別に木じゃなくてもムカつくあの子のパンツでできるだろ?」

「ムカつくあの子のお尻になんの恨みが!?」

「恨みってのは知らないところで勝手に買ってるもんなんだよ。パンツだけに」

「何が!? なんにもかかってないよね!?」

「パンツってのは母ちゃんが勝手に買ってくるもんだろ?」

「知らないよ!そんなこと!」

「はあ〜まったく、これだからダメなんだよヒノキ派は」

「いや今の話ヒノキ関係なかったよね!?」

「シラカバ派よりは全然マシよ」

「んだとテメェ!? シラカバ派バカにすんなよ!? 俺のじいちゃんが昔言ってたぞ!? シラカバ派はモテるけどヒノキ派はモテねえって!」

「そんなの迷信よ。その証拠に私は貴方と違って結構モテるし」

「なんで俺がモテないと決めつけているのかな?」

「わざわざ言葉にしなくても、それぐらいはわかるわよ・・・」


 遠くを見つめながら昔を思い出すようにそう答えるアマネさぁん・・・

 そんなアマネの姿はヒノキのようにどこか儚げで、休日に家の窓から外で遊んぶ同級生を眺めるヒノキのように寂しそうに見えた。


「・・・・・・あなた・・・」


 そんなヒノキ・・・じゃなかった。そんなアマネの姿を見て、俺はそう呟かずにはいられなかった。

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