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たとえ何者だろうと言い訳していいわけはない。


「本当に人が殺されてるじゃない・・・・・・」


 さて!俺達はさっき盗賊団がいた場所に俺の案内でやってきました!

 途中で2人に「ここ、さっき通った気がするんだけど・・・」って言われた時は「あっ詰んだ☆」と思ったけど無事戻って来れてよかったです!もろちん2人には俺が迷子になっていたことは言ってません!理由は単純。恥ずかしいからです!


「それにしても・・・・・・酷い有り様だね・・・」


 王子が殺人現場を見て呟く。


「た、確かに酷いけど・・・多分コイツらは盗賊だ。だから因果応報、自業自得というやつなんじゃねぇか?」


 俺は殺人犯を擁護する。きっとコイツらを殺めることになった人物にも、やむを得ない事情があったのだろう。


「それはそうだけど・・・・・・あれ?これ・・・さっき君が殺した2人と殺され方が似ている・・・というか同じじゃ・・・」

「まさか貴方──!」


 2人が怪しむような目で俺を見る。


「「「・・・・・・」」」


 押し黙る3人。


「・・・・・・しょ、しょうがないだろぉ!だって殺されそうだったんだもん!それに女の子が捕まっていたから助けるために仕方がなかったんだよぉ!!」


 俺は観念して必死に言い訳する。──・・・あれ?なんで俺、こんな必死に言い訳してるんだろう・・・別に悪いことをしたわけではないのに・・・──むしろ良いことのはずだよね・・・?


「そ、そう・・・・・・それは仕方がないわね・・・」

「た、大変だったんだね・・・」


 2人ともそう言って同情してくれる。だが、2人とも目が泳いでいる。この泳ぎ方はクロール───いや、このダイナミックさはバタフライか。


「べ、別に・・・そこまで大変だったわけでは・・・・・・」


 嘘です。すごく大変でした。それはもう!


「「「・・・・・・」


 また気まずい空気になる。


「と、とりあえず、端の方は死体が無いからあっちに行こうか」


 気まずい空気を変えるようにそう提案した王子に俺達は頷いて、端の方へ行く。


「暗いし少し肌寒いから火をつけようか。2人とも、木の枝と枯れ葉を持ってきてくれるかな?」


 そんな王子様からの頼みを俺達は快く承諾して木の枝と枯れ葉を取りに行く。

 そして数分後、ある程度集まったところで、


「じゃあ火をつけるね」


 そう言った途端、王子の指先に魔法陣が出現し、小さな炎が灯る。そして、その炎を集めた木の枝に落とし着火させる。

 それにより、辺りが一気に明るくなり2人の顔も良く見えるようになる。

 まず王子様だが、年はおおよそ16、7あたりだろう。髪は、腰のちょい上ぐらいまでの長さの綺麗な金髪。そして瞳の色は、澄んだ綺麗な水色。そして顔は、この俺でも驚くほどに綺麗で整っている。その上、少し小柄で華奢な体格をしているため、美少女と言われても全く違和感が無いぐらいの美青年だ。───簡単にいうとすごくモテそうなイケメンだ。───・・・チッ。

 次に黒髪の女だが、コイツは美少女というよりは美人だ。年は17〜19ぐらいだろう。髪は、綺麗な黒髪で腰の辺りまで長さだ。そしてコイツも王子様と同様に澄んだ綺麗な水色の瞳に、綺麗で整った顔立ちをしている。───まあ、簡単に言うとすごくモテそうな美人だ。───・・・ありがとうございます!

 ───と、言いたいところだが忘れてはならない。コイツが初対面の俺にアイアン・クローをかましてくるような奴だということを・・・

 ───まあ、それは水に流そう。それより──


「なぁ、火ぃつけるやつどうやったんだ?俺もやりたい!」

「そういえば君は田舎出身でそういうのに詳しくないんだったね」

「ああ・・・・・・オラは田舎出身だべさかい、そういうのにはサッパリザマス」

「貴方、いったいどんな秘境に住んでたの?せめてなまり方ぐらい統一しなさいよ」

「まだ俺のなまり方は天下統一出来てないんだよ。・・・・・・まぁでも、そこまで言うなら普通に頼んじゃおうかな☆──どうかお頼み申し奉りたく候で御座居まするでゴワス」


 そんな風に頭を下げて普通にお願いする。


「早速普通じゃない気がするけど・・・・・・うん。いいよ、教えてあげる」


 割とすんなり教えてくれるみたいだ。この王子様優しい。


「これは簡単な炎熱系の魔術だから初めての君でも出来ると思うよ。まず、さっきと同じように集中してぐぅ~〜ってしてから、燃えろぉ〜って念じるんだ」

「え?そんだけ?」


 相変わらず雑な説明だが、思ってたよりも簡単そうで思わず聞き返す。


「うん。・・・あーでも、最初の内は呪文を唱えた方が簡単でいいかも」

「・・・呪文?」


 聞き覚えのない単語が出てきたのでまた聞き返す。


「魔術で一番大事なのはイメージでね、そのイメージをしやすくするために呪文を唱えたり技名を言ったりするんだ。もっとわかりやすく言うと・・・ボクが火を出した時に何をしているように見えたか、かな」

「ふーん・・・じゃあ、まずそのイメージをわかりやすくするためにもその技名を教えてくれよ」

「名前?」

「その火の魔術の名前」

「あーこれね・・・・・・これには名前を付けてないんだよ」

「・・・は?」


 付けてない・・・?


「え?どゆこと?なんかお前のその言い方だと自分で付けてるみたいに聞こえるぞ・・・?」

「まあ、基本的には魔術名は自分で付けるものだからね」

「は!?じゃあ同じ魔術でもみんな好き勝手な名前で呼んでるってこと!?」

「基本的にはそうだね」


 マジかよ・・・・


「つまり───それぞれの魔術に正式名称なんてものはないってこと!?」

「そうだね」

「なんでないの!?」

「なんでって言われても・・・・・・」


 苦笑いを浮かべ、そんなことを言われても困る、といった表情をする。


「だれだよ、魔術を考えた奴!その辺まで考えておけよ!絶対面倒くさくて考えなかったんだろ!?」


【そ、そんなことはない・・・よ?】


「流石にそんなことはない・・・と思うけど・・・」


【うんうん、その通り!そもそも必殺技の名前みたいなもの考えてたところで──】


「わかった、わかった!俺が悪かったから!」

「ど、どうしたの急に?」

「いや・・・なんか見苦しい言い訳が聞こえた気がして・・・・・・まぁいいや、とりあえず魔術のイメージってやつは多分出来たぞ」

「じゃあ試しにやってみて」

「うっす!いきます!」


 ふぅ・・・と息を吐き──


「《灯せ・バァースデェェーーケェェェーーーキッッッ》!!」


 と、呪文を唱える。というよりも叫ぶ。


 シーーーーーーン


 ───しかし何も起こらなかった・・・


「「「・・・・・・・・」」」


 沈黙する3人。訪れる静寂。


「・・・火、つかないんだけど・・・・・・」

「つかないね」

「つかないわね」


「「「・・・・・・・・」」」


 沈黙する3人。訪れる静寂。

 だが、その静寂を打ち破るかのように──


「おい・・・どういうことだテメェ・・・・・・なんにも起こらねぇじゃねぇか・・・・・・俺が恥かいただけじゃねぇか・・・・・・どうしてくれんだ、コノヤロぉぉぉ!!お前らは知らねぇかも知んねぇけどよぉ!俺はここに来るまでにも黒歴史を作ってるんだよ!それなのにまた1個増えちまったじゃねぇか!?すっごい恥ずかしいんですけどぉ!?」


 俺は王子様の胸ぐらを掴んで騒ぐ。


「おかしいな・・・・・・魔力があるなら失敗したとしても魔法陣ぐらいは出るはずなんだけど・・・」


 だが王子様は俺のことなど視えていないかのように冷静に分析している。ふざけんな!


「なんだよ言い訳か!?『ボクは悪くないです。悪いのは頭のおかしい君だよ(笑)』とでも言いたいのか!?言っとくが俺はお前が言った通りにやったからな!だからこうなったのはオメェがテキトーなこと言ったからだ!!」

「いえ、別にアリスは間違ったことは言っていないわ」

「・・・え?じゃ、じゃあなんで・・・」

「多分、単純に貴方に絶望的なまでに魔術の才能がないんだけよ」


 俺に絶望的な現実を突きつけてくる黒髪の女。


「・・・え?つまり、俺に魔術は使えないってこと?」

「絶対・・・とは言い切れないけど、多分無理ね」


 俺はこの先どうがんばっても魔術が使えないらしい。

 それから少し考え込んだ結果──


「・・・クックック・・・・・・よもやこれほどまで我をこけにするとは・・・魔術とやら、絶対に許さん・・・!この世から1匹残らず駆逐してやる・・・!」


 俺は魔術を駆逐することを決意する。







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