水筒と使い魔と超強化
どうも、歩です。
あの後皆で家族みたいに団欒を楽しんだり、俺がお風呂入ってたらサジェリアが乱入してきたり、前のお返しとコーデリアに覗かれたりとワチャワチャしてました。
どうやら神器ちゃんから、大切なお知らせがあるらしいのですが……。
『ニタイ、マトメル』
んーっ!なるほど!
神器ちゃんはこう仰せだ、こうなったら……ね?
「ってことで呪い2体分まとめて戦うことになったわ」
「どう言う事!?」
「ふはははっ、これはまた大胆ですなぁ!」
まぁコーデリアのが普通の反応だわな、デクスターさんがこう言うノリに慣れすぎている。
だが。
「勝算はあるさ、なにせ今回は俺一人じゃないからな」
「ですわ〜」
「あっ、サジェリア!」
「……なるほど、そうでしたな」
今まで神器ちゃんはいた、しかし俺達は魂で融けあった運命共同体。
所謂『もう一人のボク』、実質一人みたいなもんだ。
しかしサジェリアはテイムした使い魔で魂が繋がれた主従、神器ちゃんパワーを介してる分強い繋がりらしいが、あくまで別のスタンスだ。
神器ちゃんナビを入念に聴き込んで確認した限りでは、サジェリアは神器ちゃんが展開した俺の精神世界に入って来れるようだ。
「そうそう俺とサジェリアが、呪い2体と2on2で戦うなら問題ない!」
「なるほどね!……でもサジェリアって強いの?」
確かにドリアードは大人しい種族らしいし、サジェリアも実際そうだ。
肉弾戦が得意ではないし、魔力容量は結構多いが攻撃的な魔法がほぼ使えない。
だがテイムした相手と共に戦う場合、相性が物言う時がある!
「あゆむさまとじんきさまのおちからを、ほじょいたしますの〜」
「補助……?」
「直接的に戦う以外でもやりようはあるって事さ」
「ふーん?でもまぁ貴方なら勝っちゃうんでしょうね」
おおー!
コーデリアから心配の様子はない、これが信頼パワーか……ッ!
ってあれ?
「デクスターさん?」
「どうしたの?」
「です?」
「うっ、むぅ……バレましたかな?」
いやいや、気付かないはずもない。
明らかにさっきより元気ないし、口数減ってるし。
「いえなに……主であるお嬢様のお助けになれない無力さを痛感しましてな」
「デクスターさん……」
「そう言うこと……」
「ですの……」
「アユム様が来てくださった事で、初めて呪いを祓う希望が見えました……しかし元より私はただお側にいる事しか出来ていなかった」
それはそうと言える部分ではある。
しかしコーデリアやデクスターさんの当時の状態を考えると、仕方ないはずだ。
「その上サジェリア殿と言うお嬢様をお助け出来る仲間が増えました、しかし今の私が同じ事をしようものなら足を引っ張るだけでしょう」
「デクスターはそこまで……!」
「おじいさま……」
「ふふっ、実際弱体化した今の私はただの老人ですからな」
いつになく弱った彼は初めて見る、自嘲なんて普段なら絶対しないだろうに。
─────神器ちゃん、あの答えは本当なんだよな?
『ウン、ホントウ』
なら、さっさと伝えてあげなきゃな!
「デクスターさん、安心してください!」
「アユム様?」
「神器ちゃんが言ってました……今回の戦いに勝って呪いを大きく削れれば、デクスターさんも呪いに抗しうる強さに戻れます!」
「な、なんですと!?」
『ノロイ、タオス』『セイレイ、サンセン』が神器ちゃんのナビ内容であり、今回まとめて2体分呪いを祓えれば……。
デクスターさん、参戦!!
って意味なのだろう。
「だから今回は待っててください、必ず吉報をお持ちします」
「お、おぉ……ッ!畏まり、ましたぞ!」
「良かったわね、デクスター!」
「ええ……!」
「おじいさま、よかったですわ〜」
ロマンスグレーの男泣き、しかと見届けました。
後は任せてください。
*************
『来た来たぁ!』
『モンダイ、ナシ』
3回目の精神世界ダイブ、最早慣れた物だ。
魂の成長により世界の色が更に朝に近づき、足元の水も青い事がわかる……まぁ神器ちゃんと融☆合してるし、当然だわな。
『あゆむさま、あなたさまのさじぇりあがまいりましたの〜』
『おおっと、いらっしゃい……ってサジェリアは服あるな』
無事にサジェリアもこっちに来れた様だ、しかし俺と違って全裸じゃないんだな。
因みに服の形状は、古代ギリシャの服“キトン”の女性用でカラーリングは緑。
『だんじょんでうまれたときのすがたなので〜……あっ、ぬぐのがごしょもうですの〜?』
『いやいや、見たいけどこれから戦いだから』
『わかりましたわ〜、ではべつのきかいで〜』
サジェリアは一目で分かるレベルの膨らみがある、可憐な女の子って印象だ。
ナイスバディなコーデリアとは趣が異なる良さがあるが、今じっくり観察する余裕はない。
……風呂に乱入された時?
見たけど見たいのは見たい、何度でも。
『ワーハッハッハァッ!態々死ニタイラシイナァ!』
『オーホッホッホォッ!貴方被虐ナノネェッ!』
ほう、呪いも学習するのか既に変身を開始した。
前回大分楽に勝てた要因である不意打ち戦法は、どうやら使えない様だ。
声が低い方が猫、声が高い方が蜘蛛だ。
さぁ、見せてやろうか……!
『行くぜ神器ちゃん!』
『ギョイ』
『サジェリア!連結だぁ!!』
『あゆむさま〜』
『『ナ、何ダトォ!?』』
しつこい汚れどもよ、見事なリアクションありがとう。
青い光球が水筒になり、俺の手に収まり蓋が開き飲み口を見せる。
そしてサジェリアは精神世界だから出来る浮遊を見せ、肩車で乗ると蔓を伸ばしだす。
それらは俺の身体に巻き付けられ、先端が足元に突き刺さり固定する役割になる………これが!
『チェーンジッ!神器ちゃんブラスター!!』
『ですの〜』
『『……何ソレ』』
いや、気持ちは分かる。
勢いの割にめっちゃ不恰好な蔓のパワードアーマーもどきだからさ、期待したのと違うってなっちゃったよな。
────だがな。
『馬鹿ニスルナヨッ、小僧ォォォォオッ!!』
『今スグ死ニナサァァァァアイッ!!』
『神器ちゃん!出力最大!!』
『ハアク、ファイア』
『『ブゲラッッ!!?』』
『お〜』
神器ちゃんの成長により水を噴き出す勢いも強くなってて、その勢いに負けない様にパワードアーマーが必要なんだ。
そして俺だけの魔力だと2体分とやり合うには足りないが、サジェリアが連結することで魔力を共有すれば互いに余るほど残せる。
ふふふ、不恰好なのが弱いと誰が決めた?
『吹き飛べぇっ!!』
『ですわ〜』
『オマエラ、オワリ』
『『コ、コンナ物デエェェェッ!!!』』
まるで機械で圧縮するかの如く、歴代最速のペースで縮んでいく呪い達……回数踏む事に楽になってくねぇ。
一番最初のボスが滅茶苦茶強いの、あるあるだよね。
あっ、呪い達崩れ去った。
『サジェリア、連結解除で』
『もっとくっついていたかったですわ、ざんねんですの〜』
命の恩人補正があれど、この子は俺に対する好意を隠さないよな。
嬉しいんだが、俺が逆に恥ずかしくなってくる。
さてと、白い光球が足下の水から浮かんできたな。
『神器ちゃん、お食べ』
『イタダキ、マス』
俺が構える神器ちゃんの飲み口から、光球2つまとめて吸い上げる。
これが神器ちゃんに取り込まれると、神器ちゃんが……俺の魂もまた成長するのだ。
今までは1つ、今回は2つ……一体どれ程の。
『うおまぶし!』
『はわわ……』
いつもより青く強く光っております。
それが晴れると……!
『おおー!めっちゃ変わったぁ!!』
『すてきですの〜、さすがあゆむさまのなかですの〜』
美しい青い空、綺麗な水!
随分様変わりしたじゃないの!
なんかここにいるだけで心が澄んでくるって言うか、穏やかな気持ちになるって言うか……!
地球にあったパワースポット的な、そんな印象になった。
『キニイッテクレタカナ?マスター!』
『あぁ!もちろん……って神器ちゃん!?』
『ウン、スイトウナンテ“ボク”ダケデショ?』
『ふわふわですの〜』
まだ機械音声っぽさはあるが、感情ある中性的なボイスでかなり流暢に喋れとる!
しかも空中に浮かんで、その場で自立機動しとる!
これもう成長ってか強化……も甘いから超強化だわこれ!
……しかしこの子の一人称。
『マスターガ、モウヒトリノ“ボク”ッテイッテタデショ』
『あ、あの時の思考をそのまま読み取って……』
『ソウダヨ!』
なるほどなぁ……。
しかしボクって一人称で、中性的な声と口調がボクっ娘染み過ぎている。
……神器に性別ないよね?
あそこまで流暢に喋られとると、うっかりエッチな事思考したらセクハラにならないか気になっちゃう!
『じんきさま、おはなしできますの〜』
『ソウダヨ!イッショニマスターヲタスケヨウネ!』
『もちろんですわ〜』
……いや、変に考えんとこう。
神器ちゃんは神器ちゃん、それでいいじゃないか。
キトン→原典は亜麻布を素材として出来ている、ドリアードの物はダンジョンで生まれた個体は兎も角、地上の個体は不明
ナイスバディ→凸凹凸は、女性の努力で実っている
パワードアーマー→浪漫、しかして自由であらねばならぬ