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水筒と家族と仲間

「さぁ、説明してもらいましょうか!?」

「け、剣を向けずに話をしよう!コーデリア!」

「か、かたかたですの」


シュラーバッ!!

いや、分かるよスッゲー分かる。

信じて裏庭に送り出した『君は俺が守る』って感じのムーブしてたやつが、帰ってきてみれば!

美少女で!

魔物!

そんな子を自分の背中にくっつけて戻りやがったもんな!

どうやら見る機会がなかった彼女の部屋に、あんな上等そうな剣が保管されてたんだな!

ふふふ、マジ震えてきやがった怖いです。


「お嬢様、落ち着きなされ」

「でももしあのドリアードが呪いに取り憑かれたら、暴れて皆大変な事になりかねないわ!」 


えっ、あっ、なるほど。

俺をどうこうじゃなくて、サジェリアが呪いで脅威になる事を危惧してね。

助かった、もう終わったと思ってたよ。

そこは大丈夫なんだよな、神器ちゃん。


『モンダイ、ナイ』

「大丈夫だよ、コーデリア」

「ど、どうして……!」

「アユム様が神器を介してテイムを行うことで魂に繋がりがお出来になり、そちらのドリアードが憑かれそうになろうがある程度耐性があるのですな」

「あっ」


デクスターさんマジデキスギーさん。

ここは乗っかるべき時勢い、絶好のチャンスだぁ!


「その通りなんだ、だから危険じゃない」

「……」

「だ、だいじょうぶですの?」

「大丈夫だぞ〜」


身長差25cmは文字通り大人と子供、或いは兄と妹か。

撫でるのには苦労しない高さで、こうやって安心させてやれる。

えっ、召喚前?

やったらどう見ても犯罪の現場にしか見えんやろ。


「その子、の……」

「ん?」


コーデリア?


「髪の、色が……」

「わたくしのかみですの?」


サジェリアの綺麗な翡翠色の髪に何か問題が?

もしかして俺が知らんだけで、リーデン帝国内に同じ髪色の除菌対象(ぶちのめすべき奴)いるのか!?

俺はやるぜ!


「お嬢様!」

「「「!?」」」

「もうお話すべきでしょう、アユム様には」

「で、デクスター……」


あ、あのデクスターさんが声を張った……ッ!?

これは思ったより複雑な事情なのか?

……昔の俺なら、必要以上に踏み込むのは避けようとしていただろうな。

だがもう俺はコーデリアの事もデクスターさんのことも好きになっちまってるし、テイムして仲間になったサジェリアが間接的な理由とは言え関わってる事情みたいだし。

────ここは踏み込むべき所だろ!


「教えてくれ、コーデリア」

「アユム…!」

「何か深い事情があるのは分かるし、君は優しいから伝えて負担掛けたくないって思ってるだろ?」

「そ、そんな……こと!」


あるよな、コーデリアだもん。

ほらデクスターさんの方見たら、めっちゃ頷いてるもん。


「見くびらないでくれ」

「────ッ!」

「まだ出会って間もないが、その分召喚される前じゃ出来ない濃〜い体験させて貰ってる」

「うっ、うぅ……」

「今更追加体験しても俺はコーデリアを見る目は変わらないよ、君は俺が呪いと命懸けで戦ってでも仲良くなりたい……そんな可愛い女の子なんだから!」

「あっ、アユムゥ!?」


へい、茹でだこ美少女一丁!

でもこのまま固まってたら困るから、デクスターさんとアイコンタクトでカップを用意して貰う。

そして神器ちゃん冷水を注ぎ、差し出す。


「んぐっ、んぐっ……ふぅ、ごめんね」

「良いってことよ、それだけ取り乱す理由なんだろうからさ」

「うん……サジェリアだっけ、貴女もごめん」


名前に関しては『この子ね、サジェリアっての〜』ってお気楽な感じに言って誤魔化そうとしたの一回だけ言っただけなのに、いい記憶力してんねぇ!


「いいえ、ごじじょうがおありみたいですし……あゆむさまのたいせつなかたでもありますでしょう?」

「た、大切………ッ!」

「あら、ちがいますの?」

「合ってるよ」

「アユム!?」

「せいかいですの〜」

「ふぅむ!良きかな良きかな!」


皆で和気あいあい着実に和やかな空気へ、場も温まって参りました。

さぁ、早速聞かせてもらおうと俺が座る。

すると皆自然と着席して、お話が始まりました。


「アユムは知っていると思うけど、私の血縁上の父親はあの男なの」

「ああ、赤髭達磨(ブランドル)な」

「リーデン帝国は強さを至上としていても、あくまで周囲に対する示威に過ぎないものだった」

「しかしそれが豹変したのが、あの男がリーデン皇帝に即位した頃だったのは言うまでもないですな」

「なるほど〜」


だよなぁ、明らかに極端が過ぎる。

戦いは武力のみが全てを担うわけではない、それを武人ではない者達の活躍によって支えられてるからだ。

食料を用意する人、武具を用意する人、怪我や病気を治す人……色んな人がいて、国力が大きくなる。

だが、あいつが皇帝として君臨すらリーデン帝国はどうだろうな……。


「皇帝ブランドル……あの男は数多の国々へ戦争を仕掛け、骸を山と積み上げ滅んだ小国や大きく国力を落として治安が乱れた国もあるわ」

「それだけ力だけはあったんだな」

「あくまで人は駒、利用できる戦力と見る姿勢も勝つ要因だったやもしれません」

「まるで容赦がないわけだしな」

「こ、こわいですの〜」


それが当たり前になっている、犠牲を何とも思わず攻め続けてくる。

そして数多の命が散り、資源は根こそぎ奪われる。

まるで蝗害だ。

攻められた国からすれば、人の姿を取った災害に思えたかもな。


「その国の中で負けて尚強かったと、あの男が評価した国がありました」

「それはかなり珍しい事に思えるな」

「……名はハートリー王国、そこには『才女』と呼ばれた姫“コレット・ド・ハートリー”と言う人物がおりました」


ん?

まさかそこが関係ある?


「皇帝はコレットと自分の子が戦力として利用できるだろうと、ハートリー王国から奪い妻としました」

「そして生まれたのが……」

「……そう言うことなのか?」

「コレット・ド・ハートリーは“翡翠色の髪”“緑の双眸”で有名だった、そして私の母も……」

「はわわ……」


そっかぁ……。

家族絡みか、しかも他国家の姫様が母親とか。

そりゃあ、複雑だわな。

“翡翠色の髪”か、偶然とは言えサジェリアが気になるのも頷ける。


「コーデリアのお母さんは……?」

「後に“反リーデン連合”と言う国同士が協力し、帝国に対抗する存在が出来上がったのです」

「ハートリー王国もそこに参加していて、母は私を置いて失踪したの」

「────ッ!」


うわぁ……嘘だろ、辛すぎんだろそりゃあ!


「私の魔力容量を鍛える為と、空の魔石を満タンになるまで魔力を振り絞ってた……その魔石は母と一緒に消えたけど」


もうやめて!

コーデリアのマインドはもうゼロよ、もう勝負はついたのよ!

お?サジェリア?


「さ、サジェリア?」

「ぎゅう〜……ですの」

「「おお」」


何とコーデリアをサジェリアが抱きしめている。

これには男性陣の気持ちは尊さで満たされた。


「わ、私呪われてるのよ?危ないわよ?」

「……なぜでしょう、わたくしがこうしたほうがよいとおもえたのです」

「……ぐすっ……ありがとう」

「よしよしですの〜」


ママ……ハッ!

俺は何を考えて……娘か妹かみたいな子に、ついうっかりママみを見出しかけてた。


「ママ……」


デクスターさん!?

まずいですよ!


「ふぅ……泣いてスッキリしたかも、助かったわ!」

「これがわたくしなりに、みなさまにできることですわ」

「サジェリア、マジ助かった」

「ええ、心が晴れやかな心地ですぞ」

「ほんとうですの?やりましたわ〜」


ドリアードは花に近い特性をもつ魔物みたいだし、心に寄り添って癒やす力があったりするのかもしれんな。

こんな子を仲間にする判断を下せるとは、完璧(パーフェクト)だ神器ちゃん。


『カンシャ、キワミ』


さて、理由は分かった。

どうやらあのクソ暴君にはまだ明らかになってない罪があったし、コーデリアの母がどんな人物かの断片を知れた。

コーデリアは愛されていないから自分は母に捨てられたと、祖国が満タンの魔石を得るために母が利用したに過ぎないと思い込んでいる。

だが俺の考えはこうだ。


「コーデリア」

「どうしたの、アユム?」

「きっとコレットさんは、お前を愛してたと思う」

「え?」


急にこんな事言われても困惑するだろうが、冷静に考えたら変な所多いんだよな。


「まず魔力容量の鍛錬だけど、それのお陰で得られた物があったりするんじゃないか?」

「得られた、物……ハッ!?」

「うむ」


元祖うむの人、見事なドヤ顔。

まぁ二人の経緯について詳しくはないが、魔力が沢山あったから呪いの影響で弱体化してるのに、あれだけ人間臭くて強そうな精霊と契約出来たのではないだろうか?


「それに一人で失踪したのも、女子供二人連れで帝国脱出して祖国へ帰るのは無理が有り過ぎたからだろ」

「で、でも魔石が……!」

「友好の為とかなら兎も角、奪われて他国から来た姫が大量の魔石を一切見つからずに運ぶツテがあるか?」

「あっ」

「おお〜」

「的を獲ていますな」


サジェリアとデクスターさんから喝采、コーデリアはお口をあんぐりと開けている。

すっかりそれが真実なのだ、と思考が固まってたんだな。


「祖国であるハートリー王国が大事なのは一般的なお姫様なら当然の事だ、けれど相手が相手でも自ら腹を痛めて生んだ子に愛情がないわけがない」

「……どうしてそう思うの」

「君の母親だからだ」

「!?」


両手で口を抑えて目を見開き、俺を見るコーデリア。

ゆっくりと歩き出し、彼女に近づく。


「誰かを巻き込んだり危険に晒したくない、その為なら自ら率先して傷つこうとする」

「あ、あぅ……」

「本当は寂しくて愛おしくて側に在りたいのに、自分が側にいれば危険なら進んで遠ざけようとする」

「あっ、アユ……」


本当に特別な人とは距離を置くんじゃなくて、ちゃんと気持ちを行動で示す。

中学生の頃の教訓だ、向こうじゃ活かせなかったが……意味はあった。

俺はコーデリアを、迷わず抱きしめた。


「おおっ!!」

「き、きましたわ〜」


ロマンスグレーと癒やし系ロリがスタンディングオベーション、ギャラリーが増えた。


「だから俺が側にいるよ、コレットさんがいれなかった分……これからさ」

「アユム……アユムゥ!!」


すんげぇ美少女が俺の胸で涙を流す、こんなシチュエーション召喚される前なら考えられなかっただろうな。

滅茶苦茶(めちゃくちゃ)(しゃく)だが、アレに感謝すべきなの?

とりあえずコーデリアをあやして、すっかり忘れてた食事を始めるのだった。

……ただ1つ、大量の魔石の行方と言う謎を残しながら。

デキスギーさん→実際万能、例の物語にも書いてある


ハートリー王国→武力ではなく国力が優れた国、現在も連合側として帝国と刃を交えている


ママ→リーデン帝国から遠く離れたダンジョン探索が盛んな国で、ドリアードをママと称して甘える話を題材とした薄い書物が流行しているとかいないとか

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