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揺り籠、隠された犠牲者を救出する

「では無事に証明が完了した、と言う事で本来の予定通りに座学へ移らせていただきます」

『はい!』


いやぁ、何とかなった!

召喚前にやってた事ある剣道が役に立ったよ、褒められた事あるの小手の鋭さと抜き胴くらいなもんだからなぁ。

お陰で無事に臨時講師として十分資格があると思って貰えたらしい、ライラ殿下も痩せるのを決意してくれたようで何よりだ。

さてさて座学に関しては引き継ぎ書類があるから、そこから教科書の内容を黒板に書き込んで、問題出して当てて正解しても間違っても上手いこと繋げて進めて行く。

実の所数学は素で大丈夫だけど、地歴や魔法学はサキラミがいないと無理ゲーだわ。


「やれるもんなんやなぁ、アルフはん!ほんもんの先生みたいやったわぁ!」

「これに関してはマジで俺だけだと限界あると感じたがな……さて、昼休みだがこの間に動くぞ」

「せやねぇ、可能なら早く動かないとなんやろ?」


そうそう、臨時講師は本来建前でしかない。

メインは邪獣関連の問題の解決で、情報だけなら知ってるから証拠を揃えて犯人を確保するのだ。

今回は証拠の確保と救出だ。


「ん、これは……」

「腹減って調子悪くなっても良くないだろうし、ほれ」

「おぉ〜、美味しそうやねぇ!」


俺が出したのは筒内工房(ボトルワークス)で用意したオーク肉の豚まんだ、ホカホカでジューシー。

2人で舌鼓を打ちつつ、現場へ向かう。

それはゼビアン準男爵が管理してる書庫だ、大きくて生徒が使ってる図書室とは別で、ガチでゼビアン準男爵が個人的に使ってるスペースだ。

彼は仕事を表面上熱心にやってて、学園長も信頼してるからこそこんなのが許されてたんだろうが……。

ともかく厳重にカギ閉められてるから、電脳干渉(ハッキング)で開ける。


「中は……一見普通の書庫にしか見えんねぇ?」

「そうだな、だがこの本棚の裏に見取り図だと特に何も無い空間……デッドスペースがあるのだが」


再度電脳干渉(ハッキング)をかけると、本棚が奥に開いた。


「えええ……ようもまぁこんなもん拵えたもんや」

「魔具で教員としての作業量は少なく済んでる、時間はあっただろうなぁ」


あくまで情報解析(スキャン)で知った情報だがな。

果さて本棚が開いたそこは小型のダンジョンになっておりましたとさ、ギルドが管理してる訳じゃないからやりたい放題だ。

時間も少ないので急いで中を進むと、そこにはブライズの時を思い出す檻達。

しかしその中に入っていたのは精人族や魔物じゃない、弱った様子の“先祖返りの産人族”だ。

希少な存在なのにも関わらず、10人もいる。


「ひ、酷いッ!何やこの扱いはッ!!かわいこちゃん達をこんな目にあわせるとかホンマありえんわッ!!」

「分かってるだろうが、この子達も“人”なんだからな?」

「も、もう分かっとるよぉ!ウチもアンタに馬車で散々説教されて懲りたわ!」


なら、良い。

俺は聖剣エルフを揺り籠から出すと、祝福完治(ヒール)で治療と“浄化”を行う。

実はこの浄化と言うのが重要だ、何故ならこの子達は体内に呪いが入ったままだからな。

産人族の先祖返りは聖獣にほど近くなる、結果多少の神聖性を獲得するらしい。

その量では呪いを完全に防げないが周囲にまき散らす危険性を減らして体内に留め置くらしい、ゼビアン準男爵は邪獣研究の為に裏社会と繋がっていてそれを知った。

そして金を叩いて先祖返りの子を買い漁り、呪いを培養……毒を薄めて薬にする様に、呪圧剤に更に色々混ぜ込んで弱く安全な方向へ作り込んでいったわけだ。

と、どうやら目が覚めたみたいだ。


「お、お兄さんとお姉さん誰!?あの眼鏡の仲間!?」

「いや、眼鏡をとっ捕まえる側の者だよ。キミ達を助けに来た!」

『本当!?』


皆共鳴した様に反応する、さっきの反応からして余程嫌な目にあっていたらしい。

俺はラミを構えて電脳干渉(ハッキング)で檻を開けていく、そしてサキを取り出す。

馬車の旅中に成長が起こり、サキに新能力が生えた。

それが│水筒方舟ボトルノアだ、言ってしまえば遂に生物もサキの中に入れられるって事だな。

欠点は入れてる間魔力を結構なペースで消費し続けること、それから中で物凄く反抗されたら外に強制排出されることだな。

前者はともかく、後者は中にいれる側に強制力がないってのがミソだな。


「キミ達をこの水筒の力で脱出してもらって、大公殿下に保護してもらうけど大丈夫だろうか?」 

「貴方からいい匂いがする……うん、ボク達従うよ!」

「ありがとう、サキ」

「皆安心してね、船に乗るみたいな物だよ!」


サキはそう言って先祖返りの子たちを回収した。


「うぅ、ウチもっと仲良くしてみたかったわぁ……」

「この件終わったら会えばいいだろ、後証拠も見つけたから目標達成だな……折角だし非合法な手で先祖返りの子を攫ったり売る裏業者をボコそうや」

「一枚噛ませてもらうわ!」

「その意気だ、戻るぞ」

「はいな!」


書庫周りを元に戻しておき、サキに先祖返りの子と証拠を乗せてラファール大公閣下のもとへ向かわせた。

後は臨時講師として真面目にお仕事しよう。


「アルフ先生!午後の授業は実技にて色々教えていただきたいですわ!」

「いいえ、実は鍛えるのにも色々ありまして。それを体験して欲しいので身体作りをします」

「なっ、それは興味ありますわね……ワタクシ、頑張りますわね!」

「期待しています」


と言う訳で午後は現代の軍隊式トレーニングとして某ブートキャンプみたいのを実施した、普段鍛えてる生徒達も初めての事だらけでかなり疲れた様だ。

特に殿下は汗びちゃびちゃで息を荒くしていたが「コレ、良い!」と覚醒していた。





───────────





その日の夜、普段なら起こり得ない事態が起こった。


「何がどうなっている!?」

「俺達のアジトの場所が割れた!捕まる前に逃げるぞ!」

「ちっくしょお!」


人攫いによる人身売買や禁止薬物の取り扱い、依頼による殺人強盗等の温床となっていた犯罪組織……そのアジトがバレたのだ。

場所は谷の底にあり、組織の人間しか知らない入る為の道があるのだ。

そして何とそこから領兵を率いた騎士達が、乗り込んで来た。

そうなると必然的に……。


「裏切り者か!?」

「間違いねぇよ!あの通り道から来てんだ、違いねぇ!」

「ああもう今日は売り物拾って来て景気良いから、ポーカーで一発当ててやると息巻いてたのによ!!」


組織員の男達は何とか谷から出ようと、隠し道以外で出れる方法を試しに向かっていた。

それは崖に引っ掛ける部分が掘ってある場所、万策尽きた際の最終手段だ。

勿論高くまで来ておいてうっかり足を踏み外せば、あの世へ直行……だが背に腹は代えられない。


「ここだ!登るぞ!」

「ああ分かって……あ?」


登り始めた男の後に続こうとしたもう一人は気がついた、妙に風がざわつくと。

普段ならこんな事はない、今日はそんな事がよく起こる。

嫌な予感がして登る男へ見上げると、急に風切り音が鳴って男が降ってきた。

慌てて避けると、降ってきた男の首は既になくなっていた。


「ヒッ!」

「あんさん、かわい子ちゃんを攫ったんやなぁ……悪い人やわ」

「だ、誰だぁ!?」


振り向くとそこには薙刀を振り上げた女の姿があった。

マズイと思ったが既に遅く、あっという間に斬り捨てられた。


「もう十分だろ、ここの先祖返りの子の救助も終わったから撤退だ」

「はぁい、いやぁスッキリしたわぁ!」

「そりゃ良かった」


騎士達が後ろで検挙している間に方舟と化したサキに入り、アルフ達は先祖返りの子達と共に公城へ戻って行った。

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