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水筒と成長と遭遇

おっす、おら(あゆむ)

昨日は魔力と流れで多少精霊に関する事を可愛くておっぱい大きい先生と勉強し、2回目の戦いを制して無事呪いの一部を粉砕したゾ!

まぁ初回から比較して神器ちゃんが成長してて、俺の魔力容量も増えてたし。

それに有利なフィールドに引き込んで不意打ちかけて、姿変える前に先手入れてたし尚楽に決まってるよな。

因みに変身した姿は巨大なカラスだった、崖の前で待ってたらどっか連れてかれそう。


「おはようございます、アユム様」

「デクスターさん!おはようございます!」


そうそうあの戦いを終えて目覚めた時、あのデクスターさんが話せる様になったのだ!

「うむ」としか話さないのも味があったかもしれないが、やっぱこっちの方が純粋にかっこいいし憧れちゃうわ。


「……可能でしたら“お湯”の方をこちらの(おけ)にいただけますと」

「もちろんです、コーデリアの為でしょう?」

「あの温かみを知った後です、お嬢様の洗顔に是非とも必要だと」


神器ちゃんも成長している、それも1つではない……3つだ!

その最初の1つ目が“温度変更”である、常温の水オンリーだったのが変革するッ!

朝起きてお湯で顔洗うのは気持ち良く、さっぱりしてイイネ!

……まぁ温かい“お湯”が出来ても“熱湯(ねっとう)”レベルはいかないし、涼やかな“冷水”が出来ても“氷水(こおりみず)”レベルはいかない。

あくまで生活レベルの向上、攻撃に転用出来そうなのはいつかの成長で。


「ありがとうございます、行ってまいります」

「はい!それじゃ先に───」

『ウラ、ウラ』

「……神器ちゃん?」


はいこちら2つ目の“神器ちゃんナビ”である。

前回は『デキル』とだけしか応答がなかったのだが、一言分だけ自由に発声出来るようなったらしい。

……そして昨日の事だが。


『アユムの神器のお湯なら、その……お風呂に入れないかな?』

『ああ、任せろ!』


普通の湯だと呪いが悪さするかもしれない、その点俺の神器ちゃんお湯なら大丈夫だろうと請け負った。

そして魔力余ってたからお湯をコーデリア入浴の為に浴槽に張ったりした後、魔力消費で疲れてたとは言え男としては美少女の入浴とか色々妄想するわけで……その時。


『トビラ、ソト』


急に発された神器ちゃんの言葉に深く考えれないまま立ち上がり、脳が働かないからか案内されるままに移動してしまった。


『トビラ、ナカ、ハイル』

『へ?あっ』

『え?』


気がついたらコーデリアが入浴中のバスルームに突入してました。

しかも明らかにデクスターさん分かってたのにわざと見逃してたらしい、これだからお茶目なロマンスグレーは……。

ロングストレートの紅い髪は、以前より艷やかで美しい。

呪いが自衛するために(あざ)が奥に引っ込んでたのか、肌は綺麗なのに小さい傷がそこかしこに存在するのが(あらわ)になっていた。

────そして湯に浮かぶおっぱいいっぱい。


『────ッ!!アユムのスケベーーーッ!!!』

『あっ、ありがとうございますぅッ!!』


この後俺が正座にコーデリアがバスローブで説教されましたが、ただのご褒美です。

このように俺の方から要望があった時や“得に成る事”と神器ちゃんが判断した場合につき、俺にだけ聴こえる音声を出して案内してくれるのだ。

有能過ぎる、サスガダァ…。


「いかがしましたかな?」

「神器ちゃんが裏と言ってまして」

「裏ですか、それなら恐らく裏庭の事でしょうな」


なるほど、そう言うのもあるのか。

考えたら外出るのデクスターさんだけで、俺実質引きこもりだったわ。

まぁある程度決まった場所以外に自分から行こうとした時に、一瞬コーデリアが不安そうな顔してたし、デクスターさんも手で制してくれてたからだが。

……中学生の時、夏休みに学校が違う女の子の幼馴染と近所の祭りに行った時だ。

特にここまで問題なく二人で一緒に行動していたが、彼女が屋台のビーズのお花に目を留めて見ていた時だ。

当時はまだ幼馴染と仲が良かったが、俺には小学生の時の経験から女子と距離が近いと嫌われると判断してしまった。

結果彼女の用事を邪魔しないようにと距離を取り、何となくボーっと金魚掬いの出目金(でめきん)を目で追ってた。

その時だ。

幼馴染が俺の前までかなりの勢いで来て、涙目で睨んでこう言った。


『そうなんだ、もう私の事興味ないんだね!さよなら!!』


あっという間に彼女は去ってしまい、俺はショックで呆然としていた記憶がある。

そうして幼馴染とはこれっきりで、一緒に何処か行くどころか会うことさえなくなった。

特別仲がいい訳じゃない女子と、仲が良かった幼馴染を一緒くたに考えて行動した。

今にして思えばそりゃあそうなるって話だし、その後仲直りするために努力する事すら思いつかないってのは酷い間違いだわ。

────俺は裏庭に行くべきなんだな?


『ウラ、イイ』


神器ちゃんがそう判断してくれてる、なら信じよう。


「行ってみて良いですかね、裏庭」

「ええどうぞ……アユム様をお止めしたのは、お嬢様の心理状態と貴方様の身の安全考慮してですからな」

「それって……」

「お嬢様、もちろん私もアユム様を信頼しておりますとも」


デクスターさん!!

彼が言うのなら、コーデリアも心から信じてくれてるって思っていいよな?

なら裏庭行っちゃうかぁ!


「ありがとうございます!行ってきます!」

「はい、行ってらっしゃいませ」

『カイダン、オリル』


ふふふっ、足が軽いぜ!




*************




寝室から階段を降りきり、階段左横の扉の先は倉庫の様な場所で裏庭はその先だ。


「お〜!外だ外だ!」


朝方の少し冷える空気が陽光の暖かさと合わさり、心地よさが素晴らしい。

生きてるって感じするわぁ〜。

……さて切り替えてっと、神器ちゃん何処なんだい?


『ヘイ、チカク』


塀?

方角的には?


『ミギ、オク』


逆方向か。

のんびり歩くこの感じは、召喚以前の日課だった散歩を思い出す。

いやぁ、この感覚思い出すだけでも案内に従った甲斐が────。


「う、うぅ……」

「!?」


────人の声か!?

急いで駆け寄るとそこにいたのは……!

“翡翠の髪”で、左右の耳の上辺りから花が咲いてる様に見える小柄な女の子だった!


「大丈夫か!?」

「はぁ……はぁ……」


息切れを起こしている、脈は……!

れ、れ、れ、冷静になれ!

こんな時こそ……。


「神器ちゃん!」

『デキル』


青い光球が現れ、水筒の姿になる。

俺一人で対応しようとするからいかんのだ、神器ちゃんと一緒なら!

────どうすればいい?


『ミズ、ノマセル』

「水を飲ませればいいのか?」

『マリョク、イル』

「なるほど、大体分かった!」


ここで最後の成長追加能力、“栄養添加”だッ!

通常より魔力を多く消費するが、こちらが求める成分が添加された水を生み出せるのだ……ッ!

どうやら彼女は脱水気味で魔力不足な様だ、だったらッ!

“俺の魔力で生成する水”に、“俺の魔力を添加”すりゃあよぉッ!

この子は“治る”って事だぁッッ!!


「んくっ、んくっ……」


ふぅ……何とかなりそうか?

神器ちゃんの飲み口から、魔力水を摂取する女の子。

別に変な事してる訳じゃない、人命救助だ。

そのはずなんだが……。


「んっ、んんっ……」


扇情的な反応するのは、何でなんすかねこれ?

頬も赤らめてるし、飲んでる間クネクネ動いてるし。

あれ?何か俺の身体に絡まってるな、蔓だねこれ。


『モウイイ、セイコウ』


成功?

神器ちゃんは何を?


「ほわ……」

「おっ」


あら目が覚めたみたいね、良かったわぁ。

女の子は太陽の様な黄金の瞳で俺を見つめている、こうして落ち着いて見ると愛らしい顔立ちをした美少女じゃないか。

見立て160cmのコーデリアに対して150cmくらいで、うーん地球なら俺通報されそうな絵面だ。

おっと、大丈夫?

一人で、起きれる?


「わたくしのすべてを、あなたさまにささげますの」


……え?

ど、どう言う事!?

突然のプロポーズ!?


『テイム、シタ』

「テイ……」

『マモノ、ナカマ』


な……なんだって────!!

つまりこの女の子は魔物で、何故かこの館の裏庭で脱水魔力不足で、俺の使い魔になったってのか!?


『ウム』


そこでデクスターさんのネタ使うな!

余計に考え(こじ)れる!


『オケ』


気安いなぁ、神器ちゃん!?

……いや、考えたら神器ちゃんは俺の魂と一体化してるわけで。

多分俺から学習してこんな感じなんだな、うん。

フゥーッ……どうすりゃいい?


『ナマエ、アゲル』


名付けって奴だな、大事な儀式だよな。

これ何かコストいる?


『スコシ、マリョク』


分かった、問題なさそうだし名前だな。

うーん、そうだな……特徴からドリアードっぽい?

太陽みたいな黄金の瞳……翡翠色の髪……。


「君の名前は“サジェリア”だ」 


太陽の英語のサン、翡翠のジェイド、そしてドリアードのリアを組み合わせた名前だ!

気に入ってもらえると良いが……。


「────うれしい!」

『カイシ』


うおっ!?

俺の身体から青い光の首輪付き鎖が伸びてきて、サジェリアの首に着けられた!


「これが、あなたさまの……」


サジェリアが嬉しそうに撫でている、怖くはないのね?

暫くすると鎖が俺から離れ、光の鎖も首輪も彼女の中に融けていく。

そうして代わりに首輪にはルーン文字の様な物が刻まれている、あれがテイムされた使い魔の証……ってこと!?


『ソウ、デキタ』


良かった、問題なく無事ならそれで。 

まさかこんな事になるとは思ってなかったがな!


「あなたさま、あなたさま」

「おお、サジェリアどうした?」


歩み寄って来た、かわいい。

自分の使い魔って考えると、尚愛らしさが増す気がする。


「おなまえを、しりたいですわ」

「ん?ああっ、俺の名前か!筒井歩……アユムが名前でツツイが苗字かな」

「あゆむさま、あゆむさま!」


ギュッと抱きつかれちゃった、まぁさっき俺が(かか)えてたし今更だ。

花の甘い香りと人と同じくらいの体温を感じる。


「あゆむさま、すえながくおつかえしますわ」

「うん、よろしくな!」


……やれやれ。

この後の説明、どうしよう。

魔物→魔石が体内に存在する生物の総称、地上で生まれ育つ魔物は人の負の念の影響を受ける事がある


テイム→魔物に対して餌付けの形で自身の魔力を与え、魔物が懐き、主となる者が名付けを行う事で成立する


ドリアード→人と植物と心を交わせる大人しい魔物、その容姿と気質が災いし、人からも魔物からも“様々な”意味で狙われやすい

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