揺り籠、感謝されるも絡まれる
「アラクネ3体出てきたって!?」
「内2体はまだ未熟な個体らしい!……でも何で攻撃されてないんだ?」
「テイムされてるみたいだぞ!3体共だ!」
「「なっ、何だってーッ!?」」
鉱山街のリアクション芸が光る、いやガチの反応なんだけどさ。
負けるだろうと踏んだ奴が勝ったどころか味方にしてきたんだから、うっかりギャグみたいになっても仕方ないな。
とりあえずこっちから周知は出来ない、あくまでその役目はショーン閣下がベレスフォード家の名のもとで行わなければな。
「「3体もテイムしちゃったんですか!?」」
とこちらも似たような反応にならざるをえない、アラクネのネームバリューのインパクトが強いからね。
俺は3人に手を向ける。
「はい、ご挨拶を」
「ペアランよ、邪魔して悪かったな」
「チャクネだ!」
「ラクターです」
礼儀とか求めてはいけない、元は圧倒的に強い生物なんだからね。
そしてそれは向こうさんも分かってるだろう。
「す、凄い……ッ!」
シェリル嬢が口元抑えて尻尾を立て、震えながら純粋に感嘆の声を漏らす。
かわいいね!
「本当に素晴らしいです!藁にも縋る思いでアルフ殿に頼んだ、己の見る目の無さを恥じる程ですよ!」
「それほどまでにアラクネを恐れていたのですよね、お気持ちは分かりますよ」
だって娘達はともかく、ペアランとの力の差は分かってるからな。
聖杯さっさと飲ませたのも、手札バレてるから絶対敵に回したくないからだし。
「ありがとうございます!約束通りベクター鉱山を住処としたアラクネテイム証明の為に、我が家の名を添えて認めさせていただきましょう!」
「ええ、お願いしますね」
良かった、これでキングランク推薦の話がスムーズに進むな!
やったぜ。
「しかしこれだけで終わらせるのは、流石に我が家の沽券に関わります」
「あ〜、やはりそうですよね」
「是非とも領都で宴を催したいと思うのですが……いかがでしょうか?」
閣下と夫人から感謝の宴を誘われている、鉱山閉鎖の危機を救って書類だけでは周りが納得いかんか。
こう言う時に断るのは失礼だし、何かがあって時間が差し迫ってるみたいな訳でもないからな。
「分かりました、ありがたく参加させていただきます」
「おお!必ずやご満足いただける宴にして見せましょう!」
「今日は時間も時間です、こちらでお泊りください!」
心から嬉しそうなお二人見て、断らんで良かったとホッとする。
娘さん大好きな善人だから、縁を持っといても損無いだろう。
ふと視線を感じてそちらに目を向ける、シェリル嬢が俺を尻尾振りながら見ている。
……お願いしてみようかな。
「シェリル嬢」
「は、はい!」
「尻尾を触ってみても?」
「わっ、ど、どうぞ……!」
彼女から許可が降りた、閣下夫妻もニコニコと何も言わない……では早速。
キツネタイプの尻尾だからボリュームがある、しかし脊椎に繋がる場所だから当然敏感だ。
優しく触っていく。
「丁寧に洗われてますよね、フワフワでいい匂いがします」
キンモチイイッ!
匂いはアリスが爽やかな香りとして、シェリル嬢は甘い香りとして脳に伝わってくる!
しかし妙に癖になるような……。
「じ、実は私も最初に出会った時からアルフ様からいい匂いがしていまして……」
「えっ、馬車に入った時ですか?」
「いえ、馬車の上に降りられた時です……嗅覚が強いので」
何とそうだったんだ、しかしこんなにいい匂い不思議なもんだ。
遺伝子の相性云々とは違う?
『マスター、それ聖獣の先祖返りで“神聖性”を感じ取ってるからだよ』
『つまり知識があったなら召喚者ってバレてた可能性高いし』
『ファッ!?』
大丈夫よね、別にバレてないよね?
でも助けを求めた理由として、召喚者バレしたならあり得る……。
「私に助けを求めたのは、そこも関わりがあったりするんですか?」
「そうなんです!不思議と惹かれる匂いで、クイーンランク冒険者の方と聞いて決め手に……!」
良かった、バレてないわ!
あくまで良い匂いが頼ろうとした一要因になってるだけだ、助かったぜ。
「じゃあ私達は、相性が良いのかもしれませんね」
「あ、相性が……!?」
おっ、めっちゃ食いつくね。
「互いに良い匂いがする相手は相性が良いって、学者に聞いたことがありまして」
「あ、アルフ様と私の相性が……嬉しい……!」
「「ほう」」
もじもじするシェリル嬢、それを見て目を光らせる閣下夫妻。
妻達と従者達は後ろで「時間の問題だわこれ」って顔をしていた。
な、仲良くしてるだけだし!
*************
当然人の家だし妻達との営みは避けたが、ベッドでイチャつく程度はしてた。
それを聞こえてたのか、シェリル嬢はチラチラみていた。
お年頃なんだな。
「おはようございます」
「お、おはようございます!」
「昨日はすいませんね、つい気になって触らせていただいたりとか……」
「そ、そんな……全然大丈夫です!」
あっ、健気な娘や。
こう言うタイプは、守護り欲が増すなぁ。
さて、食堂で朝食を終えたら領都に出発……なんて時にトラブルは起きるものだと知る。
「チャクネにラクター、そんな焦ってどうした?」
「主様!かあさまが獣人の冒険者に襲われてる!」
「テイムされていると言っているのに、全く話を聞かないんです!」
「は?」
どうしてそうなる、何の為にテイムの紋様が刻まれると思ってるんだ。
「もしかしてヨランダ・レスリー!」
「例のキングランク冒険者ですか?」
「はい!普段は落ち着いてるそうなんですが、感情が揺れるものに出会うとスイッチが入って厄介な事になると聞きました!」
うわぁ……変貌するタイプか、ラミト教センサーからそれで流れたのでは?
普段は温厚だから大丈夫判定だったが、切り替わったらアカン奴だったパターン。
ともかく急いで止めようと、外へ出た。
「アラクネェ!覚悟しなんしィ!!」
「ちっ、殺せないのは面倒ね」
「だからテイムをしてると言っているだろう!あっ、アルフ殿!」
閣下まで出張って止めようとしてた、ご苦労さまです。
うーん、こう言うのは……あっ、そうだ。
『サキ、ニック出して』
『分かった!』
はい、触手魔杖ニックバスくんの出番です。
一切傷つけずに不意打ちで無力化するなら出番あるな、うん。
肉体強化で切り結んでる2人に追いつくと、暴走する歴代最大お胸の持ち主をターゲットに触手を召喚した。
「ふぇっ!?なにこれんむぶっ!!?」
魔法使うかは分からないが、触手を口に突っ込んで魔力を吸収しておく。
それから。
「サジェリア、あいつの精神安定させて」
「ですわ〜」
「んんっ!?んむ!んぶ……んぅ……」
口は塞がれても鼻は空いてるので、精神安定の効果があるメンタルラベンダーと言う花の匂いを嗅がせる。
すると抵抗する意志があったが、どんどん勢いはなくなった。
ニックバスはヌルヌルするから、一度ハメ込めば抜け出しにくいメリットがあるんだな。
まだ第一線で使えるか、ニック。
「助かったけど、随分変わった物を持ってるのね」
「敵だった奴から奪った奴だからな、有効的に使えるなら持っとこうとね」
「ふぅん……私に使う気?」
ペアランが興味ありそうな反応した、SのイメージあるのにMなん?
当人が使われてみたいと言うなら、別に拒否することも無いが。
魔力も十分吸えたし、そろそろ離そう。
「う、うぅ……不覚でありんした」
ヨランダは角が生えた明るい茶髪をロングストレート姫カットにしてて、黒目で小麦色の肌に着崩した赤い着物を身に纏っている。
特筆すべきは牛獣人だからこその巨乳、いや爆乳と言うべきか。
「アンタ人の使い魔に何手を出そうとしてるんですかね?」
「ふぇ?使い魔とはどう言う事?」
マジで暴走したら周りの声が聞こえてないのか……これはしっかり伝えるべき事を伝えないと、色々こじれるな。
「まず俺はクイーンランク冒険者のアルフ・クレイドルだ。今回はたまたまベクター鉱山の問題に遭遇して、アラクネをテイムする事でそれを解決したんだ」
「えっ!ほんまですかぁ!?」
「先ほどからそう言ってたのだがね、それを聞かずに得物を抜いて」
閣下も横からフォローしてくれる、彼女はやっと理解した様でしょんぼりと頭を下げる。
反省して。
「そ、そうだったんやね……それは申し訳ありませんでしたわ」
「と言う訳で当初から断っていた通り、娘を奴隷になどやれません!帰っていただこう!」
「そんなぁ、シェリルはん……とっても可愛くて、いつでも側にいてほしい思ってたんに……」
完全なorzである。
と言うか奴隷じゃなくて友達とかでおさめとけよ。
愛する自分の娘を率先して奴隷にするはずがないのに、その当たり前な事実に気付かないのは大丈夫なのか?
ラミト教?
「……許さへん!決めたわ!」
急にヨランダに指をさされた、何々?
「決闘や!どっちがシェリルはんに相応しいか勝負やで!!」
「え?」
「アルフ様……お願いします!」
「おろ?」
おかしいぞぉ!?何でこうなるの!?




