昇格後の家名取得、夫婦として
ふわりと浮かぶ様な感覚を経て気がついたら地上に戻った俺達は、ベティさんに受付してもらってからマスタールームにやって来た。
2人共今か今かと待っていてくれた様で、条件達成をスムーズに確認してくれた。
現在最後となる迷宮主の証の確認してくれてる、これは紋章が刻まれた金属の指輪なんだよな。
不死の小迷宮のヴァンパイアから出たのは、銅製で注進にコウモリと周りに月が浮かんだ夜空が刻まれたモノだった。
これを魔具に通して見て、魔力を当てながら本物か確認するらしい。
暫くして……。
「よし!これでメリッサ以外のお前パーティメンバーはクイーンランク冒険者認定だ、言っておくが歴代でもとんでも無いペースだからな!ワッハッハッハッ!」
「やっぱそうなんですか?」
「最短で2年と少しか……しかもルークランク上がってからだぞ?登録から1年も経ってねぇのによ、良くやるぜ!」
そう考えると確かに早いなぁ!
依頼を大人数で手分けして片付けたり、俺やデクスターが空飛べる。
不死の小迷宮は、俺らにはさっきサクッと攻略出来るくらい楽勝だった。
1番難解な筈の国の推薦も内容の濃さはともかく短期間で貰えた、そら早いわなぁ。
「でこの後何だがよ、都役所行ってリンク払って家名貰ってこい……言ってる意味は分かるよな?」
「もちろんです、最初からその予定で来てます」
「そっか、なら良い!」
ただ沢山リンクを持ってても家名は得られない、相応の立場になる事で初めて申請できるからだ。
今回の場合は、クイーンランク冒険者だな。
「ベティ、そのままアルフについて行け……式はまだだが、正式に番になれるんだからな!」
「う、うん!……ありがとうパパ」
「おう!」
どうやらベティさんも来てくれるみたいだな、後は……。
「と言うわけでデクスターは“ドロシーと2人っきり”で先に屋敷に帰ってもらう」
「なんですと!?」
「かしこまりました」
狼狽えすぎだよデクスター、ドロシー以外皆口元抑えて笑いこらえてるじゃん。
仕方ないので隣まで来て、一緒に後ろ向いてコソコソ話す。
「好みのタイプなんだろ、男見せてくれよ!」
「ど、どうすれば良いのか……」
「とりあえず知っていく所からだよ!屋敷や館を案内する過程で好きな物とか趣味とか聞くとか!」
「な、なるほど……!」
マジでこの手の得意じゃ無いんだな!
俺の師匠ポジだったんだから、頑張って!
デクスターは気合を入れ直すと、振り向いてドロシーに声掛けに向かった。
「では先達として仕事場であり、暮らす場所でもある我らの拠点を案内します……つ、ついてきてください」
「かしこまりました、デクスター様」
「おっ!え、ええ……!」
大丈夫か!?
名前呼ばれるのキュンと来ちゃったんか!?
様呼び割と急所やったんか!?
「では旦那様、失礼致します」
「ああ、いってらっしゃいドロシー……頼んだよ、デクスター!」
「はっ!」
頼まれたら大分気合入ったようだ、とりあえず少しでも距離縮まると良いなぁ。
「それじゃあ皆、ドレイク商会行こう!結婚指輪買いにさ!」
『はい!』
さぁ向こうの心配ばかりしてられん、式はまだだが指輪は大事!
皆に似合う物を選ぼう。
*************
はい、先ほど無事にドレイク商会で指輪を買う事が出来ました。
強いて言えばデクスターがいない事をエイブラハムが気にした時に「お相手見繕ったから、今頃2人きりで屋敷案内してる」って言ったら口元抑えてショック受けてた。
次は自分の番だと、気づいたご様子だった。
とは言え現状職場恋愛の気はないし、俺が他所から良い相手探すしかない。
さてさて指輪はと言うと。
「ありがとう、とっても綺麗……!」
コーデリアはルビーの指輪、赤は彼女のイメージが強い。
「大切にします、ずっと」
エレンはアンバーの指輪、橙といえば彼女しかありえないな。
「御主人様の愛が……いっぱい!」
アリスはオニキスの指輪、黒が似合う子はアリスでしょう。
「末永く、よろしくお願いします!」
ベティさんはシトリンの指輪、金で強いイメージはやはりこの方だ!
「オレが指輪か……ヘヘッ、えへへっ!」
メリッサはエメラルドの指輪、緑の双眸の彼女に似合うだろう。
「指輪は実は初めてでさ……実感するなぁ」
ナタリアさんはアクアマリンの指輪、瞳の青と幸せな結婚と言う言葉で決めた。
そして俺は宝石無しのシルバーリング、強い絆を意味するらしくて気に入った。
指輪買った後はウォルターさんが言ってた様に、都役所へと向かう。
所持リンクは有り余っており、支払った後家名を決める書類を貰う。
「家名はどうするの?」
「召喚に関わる物は避けた方が良いですね」
「やっぱり御主人様なら、愛……」
「いや、実はもう決めてるんだ」
俺の言葉に皆が意外そうにこっちを見てきた。
「アルフくんもう決めてたんだ!」
「これから背負ってく名前だ、アルが決めたんなら問題ないと思うけどよ!」
「オレ達も一緒だからな、気になるじゃないか」
ふふふ、気になるよね。
それじゃあ、書き出しますか!
召喚とか神器に由来せず、俺をイメージ出来るもので、家名として違和感無い名前!
それは……!
『“クレイドル”……!』
“揺り籠”を表す言葉、“クレイドル”。
俺に関わったワードでイメージしやすいってのもあるが、家族が穏やかで安心出来る家になれたらなって事で決めた。
反応を見ると「確かに!」と皆納得していた、これなら大丈夫だろう。
提出したら、次は全員と籍をいれた。
これが6人分だから多少時間かかったが、無事に終わった。
こうして俺達は公的に夫婦になったわけだ。
これからはクレイドル家としての生活が始まるのだ!
*************
「アルフさん!お帰りなさい!」
「クイーンランク昇格……指輪ァ!おめでとうございます!!」
「あーあーこの娘は喧しい事この上ない!決まりきっておったろうが!」
「それでもめでたき事であろうに、貴君は相変わらず素直になれんな」
「放っておけ!」
屋敷に戻るとジャックとジョンが、警備をやりながらドナルド君とキャロルちゃんと駄弁ってた。
あの2人聖杯キメてるから能力の伸び代増えて、不死の小迷宮に出入りする冒険者と話してる間に流暢に喋れる様になってたみたいなんだよな。
成長著しい。
「デクスターが新しく仲間にしたサーヴァントを連れてたろ、どうだった?」
「「牛歩だ」」
「「?」」
ああ、2人の意見が一致するレベルか。
そしてドナルド君達は知らないよな、すまんすまん。
「番を用意したのだろうが、普段の奴では考えられんもどかしさであったわ!いつ想いを告げるやら!」
「だがドロシーだったか?案内の後はデクスターと上手くやれていたぞ……仕事を」
「「あっ」」
ここまでダイレクトなら2人も分かるよな。
「俺がコーデリアと結婚するし、自分の幸せを……って思ってさ、まぁ長い目で見ていくよ」
「そうですかぁ、師匠が……!」
「良い知らせが聞きたいです!」
ふふふ、俺も聞きたい。
とりあえずバイバイして中に入ると、2人がピシッと礼をしてきた。
「「お帰りなさいませ、旦那様、奥様方」」
「うん、ただいま」
「ただいまデクスター!」
正しく侍従と侍女の姿だが、大変様になっている。
この2人がそれぞれの長として働くのは全然イメージ出来る、それが夫婦なら尚の事良い。
「皆様指輪を買われたのですな、とてもお似合いですぞ!」
「アルフが……“アルフ・クレイドル”が選んで買ってくれたのよ!」
「つまり、我らの仕える先はクレイドル家となるわけですね?」
「その通りだ、今後ともよろしくな」
「「はっ」」
実は2人共緊張してるのか、何かキチキチっとし過ぎている。
まぁこれから慣れていけば違和感なくなるだろう。
「それじゃあ私とアルフは先にお風呂行くわね」
『行ってらっしゃい!』
「おろ?」
あっ、これ夫婦になれたんだから務め果たせって事ね……そっかぁ!
「アルフ……ううん、アユム!」
「ん、どうしたコーデリア?」
「……愛してるわ」
「……ああ、愛してる」
最初に想いを交わして、好きになったのはコーデリアだからな。
どれだけ相手が増えてもそれは変わらない、大切な人だ。
『今日は避妊なしにする』
『本当!?』
『赤飯!?』
『出来たらの話な』
まだキングランク冒険者になってないけど、出来たならその時だ。




