不死の小迷宮制覇と侍従のお相手
「むにゃ……もう食べられない……」
「まだ食べ足りなかったのか、オレは良いぜ?」
「私は寧ろアルフくんを食べたい気も……」
「起きます」
ポールの屋敷に帰ってきてから1ヶ月、ルークランクの依頼をこなしながら延々とイチャイチャしていた。
無論ただ作業的に依頼をやってた訳でもなく、鍛える為に以前より更に負荷をかけた。
闇属性に加えて、身体に強い重力による負荷が掛かる“重力状態異常”を追加した。
これでまた弱々状態になったし、夜には肉体強化で頑張ってハッスルして、終わった後身体の内側がバラバラに引き裂かれた。
女性陣に関しては、辛そうだけど俺が頑張ってるしと応援してくれてる。
「それにしても何だかんだ素直に帰ったよな、アルバータ姫」
「戦後処理はともかく他の公務があるもの、寧ろ長くいれた方だと思うわ」
メリッサとベティさんが話してるのは2日前に王都に帰ったアルバータの事だ、予定をしっかり把握しててそれに間に合う様に帰還したらしい。
『キングランクに上がってから、正体を明かすのだろう?それまでは兄にのみ明かすだけで、留めておく』
兄と言う事は現国王“アルヴィン・ド・オリファント”の事なんよね、国家の大黒柱にぶっちゃけるのOKなのか?
……俺の不興を買う可能性があるってなれば、流石に大丈夫か。
「ギリギリまで一緒にいたいって思われてたってことだもんな……よし、じゃあさっさとクイーンランク上がっちまうか」
そう考えると気力も湧いてきた!
依頼30件は片付けたし、後は“小型ダンジョンの制覇”のみとなる。
「サキ、状態異常解除で」
「オッケー!」
うおおおおおおっ!
いいぞこれぇっ!
身体が軽いだけじゃない、力がかなり付いたな?
「アルの身体、引き締まって筋肉ついてきたよな……むふふ!」
「前より更に男らしさが増して……じゅるり!」
早く着替えよう、2人がヤバい。
屋敷の食堂でいつも通り集まると、今回の方針を伝える。
「隣のアンデッドダンジョンを制覇しよう!」
『おう!』「お〜」
小型ダンジョンとは成長の幅が狭く、大型化しないと把握されギルド本部から認定された物がなる。
そしてアンデッドダンジョンは俺達がハートリー王国行ってる間に認定され、“不死の小迷宮”と称された。
これがなければオリファント王国内の小型ダンジョンを巡りに向かったところだったが、手軽に済ませられる事になったのだ。
ましてアンデッドは神聖性がある俺とメンバーの皆からすると、楽勝な相手である。
因みにメリッサとナタリアさんは聖杯恩賜と電脳契約を終えている、伸び代が大きく伸びたお陰で2人は更に強くなったのは言うまでもない。
「フィオのお家に出来てたダンジョンが、お兄ちゃんの役に立つならきっと皆浮かばれるね!」
「フィオナ……」
それ思い出すとやらかした侯爵はどんな気持ちで俺達を見ているのか、非常に気になるところだけどな。
溺愛してたし、キレてるかもしれん。
*************
「オラオラオラァッ!」
「歯ごたえないわね!」
「ワガタマシイハエイエンナリィッ!!」
「弱いと思ってたが番人がサクサク倒せるのか……」
入って1層から4層はガン無視して、5層の番人の撃破を行った。
攻略メンバーは俺、コーデリア、デクスターさん、サジェリア、エレン、アリス、ハガード、フィオナ、メリッサ、ナタリアさんだ。
ジャックとジョンはデカすぎるからな、どうしてもお留守番になってしまう。
それはそれとして“推測”超大型ダンジョンのポールダンジョンと、小型ダンジョンの不死の小迷宮では差が有り過ぎると実践的に理解できた。
「先が見えないレベルで巨大なポールダンジョンと、小型ダンジョンでは戦力差が出たとして仕方ないのでは?」
「エレンの言う事は最もなんだが……こう手応えがなさ過ぎるとな」
クイーンランク冒険者の基準とかが危ぶまれないかと、ね。
「発言良いか?」
「どうしたの、ナタリアさん」
おお、そう言えばナタリアさんはハートリー王国で冒険者やってたんだよな。
そこら辺客観的な意見が貰えそう。
「このダンジョンは決して簡単じゃない、こっちが強すぎるんだよ」
「うそっ、わたくしたちつよすぎますの〜?」
「まず神聖性が余りにもアドバンテージだし、アユムくんが何でも出来るし強くもあるだろ?」
『ああ……』
めっちゃ納得された、確かに神器も聖剣も強いけども……。
「そんなに俺強いですかね?」
「直接ってだけじゃないよ、いるだけで皆の戦闘力を引き上げ動きを良くする……鼓舞する才能ってのかね」
「なるほど、カリスマと言う物ですな」
「嘘ぉ!?」
俺にカリスマ……?
ないないない、流石にない!
……ホントに?
「キミが信頼してくれてる分、オレだって応えたい……皆同じさ」
「そう、言われると……俺もおんなじですね」
1人が皆の為に、皆は1人の為に。
武力が高いリーデン帝国も士気が落ちたら負けがこんでたらしいが、俺達は一緒にいる事で士気が爛々と高い状態で維持されてるのだろう。
そして皆的には、俺が1番士気を上げると……。
「アユムはリーダー……軍なら総大将だものね」
「アユが総大将か!心強ぇな!」
「聞きしに勝る」
大将か……うむ、前線で暴れてるよりは俺らしいかな。
「それが向いてると言うなら、もっとドンと構えようかな」
「その意気ですアユム様、なんなら私もそろそろ“デクスター”と呼んでいいのですぞ」
「えっ」
「お嬢様の夫になるのですから、私の主でもあります」
そっか、そうだよな。
コーデリアと顔を見合わせると、頬を染めながらコクリと頷いた。
「オホン……改めて、よろしくな“デクスター”」
「────ッ!感慨深い、ものですなぁッ!」
あははっ、これだけでめっちゃ能力上がってそうな喜びようだな。
『上がってるよ』
『えっ?』
『デクスターの能力上がってる!』
上がんのかよ!!?
サキとラミの両方と魂で融合した時に伸び代増えたけど、その時特に大きく伸びたとか?
……推測に過ぎないな、ともかく俺が皆の士気を上げるムーブすれば強くなれる。
それだけ覚えておこう。
「御主人様、宝箱もあまり良いものじゃないみたい」
「そりゃあ残念だ、でも納得ではある」
制覇する事を最優先、行こうか最下層……10層へ。
*************
10層最奥、そこに番人の上位種である迷宮主がいる。
異世界モノに良くあるダンジョンマスターみたいのはいないから、制覇してダンジョンを脱出ってだけ。
相手に配慮とか不要なのは良いね。
「開けます」
「頼む、ハガード」
門を開くとその奥には、白い髪で赤い瞳と唇の女がいた。
紫のドレスを纏ったそいつは……。
「迷宮主は“ヴァンパイア”だな、行くぞ皆!」
『おう!』「お〜」
「ふふふ、妾に勝てる気か!!」
流石だ、流暢に喋っている。
だがコイツもテイム出来ないからな、普通に倒そう。
「行くが良い、妾の下僕たちよ!」
『ハイ……』
魔法陣から召喚されて来た“サーヴァント”、まさかこの名前の魔物がいるとはな。
……待てよ。
召使いを表す言葉だけあって侍従と“侍女”の魔物なんだよな……よし!
「全員まだ倒さないでおいてくれ!デクスター!」
「はっ!」
「あの中に好みのタイプは!?」
「左から2番目の女、性……ハッ!?」
はい、テイム対象決定。
「皆聞いたな!?」
『了解!』
「ち、違っ!今のは勢いでですな!」
それは違くないんだよな、デクスターッ!
勢いで思ってた事をそのまま言っちゃったんだもんな!
ラミ!!
「契約してテイムされるし!」
「……はい」
「妾の下僕を!?」
「アンタは私が倒すわよ!!」
「邪魔をするな娘ェ!」
電脳心握で制御権奪取、そのまま流れる様に電脳契約でテイムしてから電脳心握を解除した。
他のサーヴァントやヴァンパイアは抑えられてるし、見た目を見てみるか。
黒髪黒目のショートボブ、20代後半の儚げで幸薄そうな女性。
なるほどなぁ……と振り向くと汗ダラダラなデクスターの姿が!
「奥手なのは知ってる、まず清い付き合いしてってみよう?」
「……か、かしこまり、ました……」
コーデリアにその大半を捧げてきた生、彼女の幸せを俺が受け持つ以上そっちが幸せになる番だ。
さて名前は……よし。
「君はドロシーだ、今後は専属侍女として仕えて貰う」
「……はい、かしこまりました」
ドロシーにした理由は特に深くない、昔見たお話の主人公の名前とかだった。
「ぐはぁ!!おのれこの様なぁ!?」
「……因みに今迷宮主を討ったのが妻の1人だが、こちらのデクスターが彼女に仕える侍従だ」
俺が手を指し示すと、ドロシーはデクスターに目を向ける。
「はじめまして、ドロシーです」
「は、はじめまして……デクスターと申します」
互いに礼をした、しかし特に発展せず。
そりゃあ、いきなり仲良くなれは無理な話よ。
しかしデクスターの好みのタイプなのは確か、つまり時間かけて頑張ればいける!
「アユム、迷宮主の証が手に入ったわ!」
「分かった、デクスターにドロシー行くぞ!」
「「はっ」」
ここだけ息あったな、侍従と侍女だもんな。
とりあえず焦らず必要な物を取ってから、後ろに開いた転移門から地上へ向かう事にした。




