揺り籠VS邪獣改、その後の対処
「総員構え!」
『はっ!!』
マップに従って来たブライズの隠れ場所、植物とかをうまく利用してかなり分かりづらくされてる。
だが分かったからには絶対逃せないと思って近衛騎士団が囲んだが……これは刺激しちゃった形かな?
「アユム、この感じヤバいわよ!」
「今まで感じた事のない圧迫感、強敵ですな!」
「間違いない、切り札を出させてしまった」
散々魔物とダンジョンでやり合って来たが、ここまでの奴は感じたことない。
そして邪獣とは数回戦ったが、やはりこれ程の脅威じゃない。
それほどのモノを生み出したのだ、人間が。
全員警戒しているとカモフラージュを“斬り飛ばして”、黒い鬼が現れた。
「何てオーラだい、危険過ぎる……!」
「あっ、アユ!あいつがブライズだ!!」
ってワオ。
オーガの右手の伸びた爪の先には、紅髪の女が突き刺さっていた。
どうやら制御できずにやられたパターン、悪の研究者ポジあるある過ぎる。
「……フンッ」
「わっ!」
爪を振るうとブライズは放り出された、オーガはそのまま近衛騎士団を警戒しているようだ。
どうするべきか……。
『マスター!ブライズって女は生きてるみたい、今なら助け出せるかもよ!』
『悪人だし放って置くと言うならそれでも良いし!』
生きてるのか、しぶといなぁ!
だがそれなら生かすべきだな、しっかりと法の下で裁かれるべきだ。
2度とこんな事するべきではないと、周知するためにもな!
『分かった!隠密水筒で伝えてくる!』
『頼んだ!』
サキに行ってもらってる間に、ラミとエルフを手に持っておく。
ウチのメンバーも全員目を逸らさず構えてる、俺もヤツの動きに注視する。
漆黒の肌に大きく隆起した角、ギラギラな赤い瞳……そしてとんでもないオーラと、やはり普通じゃない。
“邪獣”は人が手を加えて生み出した物、ならば“邪獣改”とでもしておくか。
「コロオオオオオオスッ!!」
『うおおおおおおおっ!!』
近衛騎士団との戦闘が始まった、凄い圧巻の戦いだが邪獣改のが押してる。
長くは保たないだろうから、犠牲が出る前に回収する!
……生きてるな。
「祝福完治」
「……うっ……ぐぶっ」
身体を蝕んだ穢れは無くなり、腹の傷も無くなった。
これでこいつは死なんだろう、だから減った分ニックバスの触手を口に突っ込んで回復と無力化を行っておく。
「大きな怪我人はいないけど、何人か吹っ飛ばされてたぞ!」
「アユムくん、オレ達じゃ流石に足手まといになる!コイツは受け持つよ!」
「頼みます!」
「アユ、気を付けてな!」
「ああ!」
魔力が抜けたので、ポニテ母娘にブライズを任せる。
無力化出来たのなら、後はどうとでもなる。
状況は劣勢、一蹴りで重武装の騎士が吹っ飛ぶのはヤバい。
電脳干渉で行けるか!?
『呪いの量も濃さもコーデリアの否じゃないよ!』
『そんな相手を電脳干渉じゃ時間かかりすぎるし!』
時間かかるってそんなに……ああ!?
10時間!?
なら無理だわ、皆が保たなくて死者的な意味で犠牲者でる!
……だったら!
「ナンジ、ワレの出番か?」
「ああ、だがその前に……サキ、闇属性状態異常外してくれ!」
「あっ!そう言えばまだついてたね!オッケー!」
むおおおぉぉっ!!
一気に軽くなったぁ!!
短期間でこれだ、長期間やりゃ俺もいつかは素で皆に並べっかな!
念の為祝福完治してっと!
「サジェリア、魔力頼む!」
「はいですの〜」
「フィオナは混ざってくれ、あいつにもお前のなら効きそうだからな!」
「やった!久しぶりにやっちゃうよ!キャハッ!」
肉体強化発動!
「近衛騎士団の方々!こっからは俺達に交代で!下がってください!!」
「総員後退!私は、続行するわ!!」
今ので邪獣改とやり合うメンツは!
俺、コーデリア、デクスターさん、エレン、アリス、フィオナ、アルバータ姫、コレット姫となった!
行くぞぉ!
「冷気放出!」
「ムゥ!」
「デクスター!」
「承知!」
「グッ!チョコザイナ!」
このオーガかなりしっかり喋っとる!
知性も強化されてると見るべきか、穢れに含まれた強い思念が乗っ取ってるのか。
とりあえずサポートの為に目眩ましからの主従コンビで追撃、しかし敵の反応速いこと!
「させないッ!」
「キサマ!!」
精剣エルフでヤツの振るわれた腕を弾く事で、2人には手をださせない。
そして引きながら構えた、ラミの金雷をくらえ!
「グオオッ!?」
「エレン!フィオナ!」
「畳み掛けます!」
「キャハハッ!」
「オノレラァ!」
事前に詠唱済ませてた2人が雷魔法と氷魔法をぶちかます!
そこへオリファント姉妹が来る!
「もうこれ以上生かしはしないよ!」
「我らはお前のような存在は看過しない!」
「アツ、イ!コンナモノデェ!」
「血茨召喚!」
「コンドハナンダァ!?」
アリスのパワフルな一撃で大きく怯み、アルバータ姫の巧みな連続斬りで焼かれる。
放って置けばまた反撃するから、邪魔させて貰いつつ生命力を吸収!
最後に!!
「コレット姫、ダンスを所望しても?」
「ええ、良くってよ」
この2人でやる!
速度で優れる姫が先に駆けて、フェイント織り交ぜて邪獣改を切り刻んでいく。
俺はそこに近づき飛び上がり、上段から大きく振り下ろす!
これが一番強い!
「チェエエストォ!!」
「コンナモノデェ!!」
「サキ!」
「薬は口からが一番だね!」
「ガボボボッ!!?」
水筒弱体で状態異常を添加されまくった水を、叫んだせいで大きく開いた奴の口に流し込む。
離れて見てみれば、オーガはどんどん力が弱まってく!
「おらァ!」
「どうかしら!?」
「ガアッ!?」
2人掛かりで首に斬撃を放つ、しかし斬りきれなかった。
今まで引く様子が無かった奴が、退いたからだ。
絶対逃さん!
「ニックバス」
「ギャブグェッ!!」
特に何もない状態ならこんな事にはならなかっただろう、散々攻撃されて生命力を吸われ状態異常塗れだから触手から逃れられない。
どれだけ強くても、1人じゃ勝てん……ましてこっちには神聖性があり、呪いとは何度もやり合ってきたのだから。
魔力を奪い取り回復、その後ニックバスには悪いが諸共生命力を吸収!
ありがとうニックさん!
「オ、オオ……コ、コンナハズハ……オレハサイキョウデハ、ナイノカ……?」
このオーガなのか思念なのかは力を得て自身が最強だと驕ったのか、それだけのパワーだから気持ちは分かる。
だがそれは決して許されてはいけない力なんだ、だから……。
「許しは請わない、お疲れ様」
そう言って俺は鬼の首を刎ねた。
*************
持ちうる手を様々使って、強敵だった邪獣改は無事に撃破出来た。
現在は呪いが拡散をしない様に定期的に聖水を遺体にかけつつ、ダメージを受けた近衛騎士団の人達への治療を行った。
致命的な攻撃は防げていたが、痛々しいレベルであちこち色が変わる打撲になっていたからな。
「アユム様、ありがとうございます!助かりました!」
「穢れを受けていた場合に、ポーションだと対処出来てないですからね」
ポーションを使わない即効性がある治療は初めての事だからと、団員さん達は喜んで受けていた。
ただ中には「治る所を直接見たくて……」と脱いで患部を直接見せてきたりした人もいて、何か治療中もハァハァと興奮してた気がする。
近衛騎士って職は、欲求が溜まるのかな。
「ウチの団員がごめんなさいね、後で“お話”しとくわね!」
「いえいえ、皆さん色々あるでしょうから」
コレット姫に謝られるが別に俺としては特に損無いからいいんだけどな、それよりも。
「アユム、邪獣改?の遺体はどうするの?」
「解呪まで時間がかかるんでしょ?」
「そっちだよな」
さっき言ったように聖水かけるのは対症療法でしかない、電脳干渉だと時間がかかるから可能なら安全に出来る状態にしたい。
「アユ!大精霊クリスタル様が来てくれたぜ!」
「え?」
大精霊って精霊石作ったり、邪獣をどうにかしてたりした?
揺り籠内でぐったりしてた印象が強いが、アレをどうにか出来るんだろうか?
そう思ってたらやってきた、小柄で茶髪青目のおかっぱ頭の巫女みたいな姿なんだよな。
「戦いだと過剰戦力だろうと引っ込んでたデスが、これなら役に立てそうデス」
邪獣改に対して両手を翳すと、水晶を生み出してその中に呪いを封じ込めた。
なんと、そんな事できるのか!
「此の様に死体からなら封じ込めは簡単デス、これなら呪いは漏れません……浄化に関しては門外漢だから、頼むデス」
いや、十分十分!
……ってことは。
「まだ封印されてる呪い、沢山あります?」
「うっかり深手を負うまでに幾度もやりあってたデスから、10と少しあるデス」
「ならこれの後、順次やってきます」
「ありがとデス」
力の塊が得られるから悪いことじゃない、それに近衛騎士団の報告とかで時間かかるだろうし、ならばそれまで里で電脳干渉による浄化作業してれば良いしな。
「なら後の事はこちらで、ハートリー王国への報告をお願いします」
「ありがとう召喚者アユム、次会う時は“冒険者アルフ”として会いましょう……総員帰還です!」
『はっ!!』
コレット姫はどうやら召喚者である事を伏せてくれるみたいだ、皆協力姿勢でありがたい!
近衛騎士団と分かれた後、俺達はブライズを連れて里に帰還した。
さてコイツは下手にメイナードと同じ場所に収容出来ないし、どうしたもんかね。




