揺り籠と勇気の代償、報酬
まさかこんな事になるなんてな。
契約を交わした事で、どうして“聖剣の精霊エルフ”が生まれたのか……それが分かった。
精霊石に俺が魔力を注いだ時に、精神世界……揺り籠の中にいたサジェリアとフィオナが力を貸してくれたのだ。
2人の魔力と封じられてない神聖性、そこに俺の魔力と求めた想いに呼応して聖剣の精霊が生み出されたわけだ。
白金の鞘が神聖性、緑の鍔と柄がサジェリアの魔力、紫の剣身がフィオナの魔力……すまない、助けてくれてたのに気づかなくて。
戻ってこれたら沢山抱き締めて頭撫でてやる!
「ウォオオンッ!」
「ハァッ!」
飛びかかって噛みつきか、分かりやすい!
普段の俺なら不可能だが、今ならやれる!
攻撃を避けつつ、斬る!
「ギャオッ!?」
聖剣エルフはまだ生まれたばかりで、力の全てを発揮出来る訳では無いらしい。
成長性って意味では神器に近いな。
今は魔力を持続的に消費する事で、生命力と身体能力を大きく上昇させる技。
魔力を消費して神聖性を含めた緑の光を放ち、怪我を癒やして穢れを祓う技。
最後に後1つがある!
「残魔力量が心許ないんでな、このまま畳み掛ける!」
「行こうぞ、ナンジ」
ダメージを与えられても及び腰にならず、積極的に攻撃を仕掛けて来る辺り邪獣は自らを全く顧みず暴走している。
だが、逆に言えば直線的だ!
爪を避けつつ潜り込んで腹を斬り、流れで後ろ脚の腱を断つ!
「ギャンッ!!」
流石に動きが鈍るな!
緩慢になって振り向き時の隙だらけの首、貰い受けるぞ!
「エルフ!」
「心得た」
最後の1つ、魔力を消費して強力な冷気を放って相手の視界を封じ動きを鈍らせる技!
これで終わりだ!
「────」
首が落ちて物言わぬ死体になった、後はこの光で祓ってこれ以上拡散させない!
……よし。
「魔力残ってる間に急いで治療と祓うのやってくぞ、間に合うか?」
「恐らく丁度といった所だろう、ナンジならばやれよう」
「ははっ、お前が言うなら頑張るか!」
俺とサジェリアとフィオナが生みの親みたいなもんだしな、子供の言う事は信じなきゃな。
生命力と身体強化、邪獣よりその代償が今から怖いが……求めた通りに救えたんだ、良しとしよう。
*************
イテェーッ!!
これで目が覚めるとか辛い……!
強化技の代償として無理矢理出来ない動きを身体に強要してたり、サキ達が戻らない限り闇属性状態異常の負荷あるのにそれガン無視だったし!
全員の治療と浄化を行い終わった後に気絶、翌朝起きたら全身引き裂かれてるかのような痛みですよ……!
「魔力も回復した、ワレの癒やしを使えば良い」
「そ、そっか…!」
忘れてた!
エルフを持つと魔力を消費して落ち着く光を放つ、身体も心も癒やされる。
でも闇属性状態異常がそのまんまなのは何故?
「ナンジが心の底で望んでないからであろう、負荷は残す方が強くなれるからと」
「なるほど、と言うか心読めるのか……?」
「精霊は契約者が何を言いたいか、ある程度分かるものだ」
考えたらデクスターさんがそうだった、コーデリアが彼の言いたい事は何となく分かるって言ってたわ。
逆もまた然りで、精霊側にはこちらの言いたいことが何となく分かると……。
しかし深層心理読んで機能してくれるの、大変ありがたい。
そうだよな、鍛錬の為に負荷かけてたのに解除しちゃ意味ないじゃん。
「とりあえず治ったし、起きよう……」
「ああ、待っているであろうしな」
「え……?」
とか思ってると扉が!
「あ、アユ……?」
「ああ、おはようメリッサ……」
「アユ生きてたなこの野郎!」
「ドワァッ!?」
まだベッドから立とうってタイミングだったのに!?
そしてこれ完全にマウント取られてる、もしかして弱者が生意気な態度取ってたの怒られてる!?
で、でも仕方ないじゃん!
一時的に生命力強化されてて元気モリモリだったから、気が大きくなってたんだよ!
許して、お姉さん許して!
「良かった……!」
おろ……。
「あんな素早い立ち回りして格好良く黒き獣を倒したのに、光をあちこちで放った後急にぶっ倒れたかと思ったら全然起きねぇからよ!マジで死んだかと思ったろうが!バカ!!」
「メリッサ……」
うん、そりゃそうなるわ。
あの後話す暇もなかったから、心配かけちまったな。
「心配かけてごめんな……」
「あっ、い、いいや、オレこそ助けてもらったのに……バカとか言って悪い……!」
「気にしないさ、俺がやりたくてやった事だからな……」
「アユ……」
マウントかけられたまま、目と目が合う瞬間────。
「声が聞こえたがアユム殿、目が……ほう」
「セドリック、これは我々はお邪魔虫ではないかな?」
「そんな事ねぇよ!?」
凄い勢いで飛び上がったなぁ!
そこからすぐに体勢立て直せる辺り、メリッサは身体能力高い方だよな……母の血だったり?
「どうも里長、そちらは……?」
「そうだ昨日は忙しくて紹介出来ていなかったな、彼 が森の精霊モーガン様だ」
「先日は失礼した、焦っていたとて諌めるどころか賛同するなどどうかしていた」
「貴方が……」
白く長い髭を蓄え、緑のフード付きローブを纏った……The・魔法使いな方が出てきた。
この人が霊霧で神器姉妹を封じ込めてきたり、霊果で魔力を回復させてくれたりと良くも悪くも高い能力ある精霊だな。
「俺はもう良いですよ、仲間は間違いなく怒るでしょうけど……」
「あの物語の精霊達か、正直森の中でなければ負けていたほどだ……覚悟はしておこう」
ヒゲをクシャリと撫でる動作が様になっている、味方なら頼もしいだろうな。
「さてまずはこれをアユム殿には言っておかねばなるまい、里を救ってくれて心より感謝申し上げる!」
「里長……」
「あの様な事がありながら、身を粉にして戦い黒き獣を討った……しかも呪いや穢れを祓って、里の者たちを治療してくれた!これは我らでは不可能な事であった!」
実際それだけピンチだったように思う、俺だってエルフを生み出せて契約を交わせなければどうしようも無かっただろうしな。
「大精霊様の揺り籠になっていただいただけでも恩があったのに、この度の事は返しきれん程の大恩だ!是非願いがあれば言って欲しい、可能な限り叶えさせてほしい!」
なるほど、それなら……。
「現在交易を絶って険悪になっているハートリー王国との関係改善、そしてそれがルークランク冒険者“アルフ”とそのパーティに大きな功績がある……と言う事にしていただきたい」
「アルフ……それはアユム殿の?」
「その通り、召喚者である事は明かせないので……」
「なるほどな、分かった!黒き獣の件を解決後にと言う事で良いのかな?」
「それで良いですよ、勿論解決には全力で取り組みますしね……!」
流石に根本的な解決なしに要求だけ通すみたいなのは無い、あくまで悪くない人達皆が幸せな結末に向かいたい。
「ありがとう、ならば喜んで」
「改めてよろしくお願いします……」
里長とシェイクハンズ。
漸くわだかまり無く、里で動けそうだな。
「それで物は相談なのだが……」
ん?
どっちを見て……メリッサ?
「メリッサが何か……?」
「実は昨日の襲撃で家屋が更に減ってな、この家屋を割り振ってやりたいのだが……」
「そうですか、それは必要かもしれないですけど……」
「……」
俺はどこへ行くのだろう?
……メリッサ、何でモジモジしてるの?
「と言う訳で良ければなのだが、メリッサの家で“共に”暮らしていただけないだろうか?」
「あっ、ふーん……」
「な、何だよ!」
「いや、良いのかなって……」
うら若き乙女1人の家に男が短期間とは言え転がりこむんやぞ、普通イロイロ考えちゃうでしょうが。
「オレは、まぁ……アユなら構わないっつーか、歓迎っつーか……」
「やはりお邪魔虫ではないかのう」
「と言う訳でメリッサも満更でもない、この子はこう見えて世話焼きで良い“女房”に……」
「爺ちゃん!!」
そ、そっかぁ……!
まぁメリッサが良い“女房”になるってのは分かる気がする、霊果切るのも手際すげぇ良かったし。
俺としては嬉しいし、彼女が問題ないなら……。
「じゃあメリッサ、世話になるよ……」
「お、おう!まぁお前はいい奴だし、一緒に暮らすのもまぁ……悪くないよな、うん!」
今度はメリッサと手を握る、女の子らしい小さい手だが鍛えてるのか手に豆がある。
「いやぁ良かった良かった!ではこの後はアユム殿に感謝したい者達も多いからな、共に挨拶周りといこう……メリッサは世話役で護衛でもあるのだから、ちゃんと隣にいなさい」
「はっ、わ、わかってらい!ん!」
「オウ」
そのまま手を握った状態で隣に立ってきた。
えっ、このままで行くの?
勘違いされたりしない?
「では参ろうか、皆が今か今かと待っているのでな」
「ふむふむ、若いと言うのは良いなぁ……ワシも元気を貰えた気がするわい」
「……行くぞ、離すなよ?」
「オウ」
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この後里の精人族達に感謝され、それぞれの家の霊果を渡されたりした。
それに対してメリッサは。
「あいつら調子良い奴らだから!ぜってー家に上がったりするなよ!」
と急に口酸っぱく言われたアユムであった。
家の霊果→既に相手がいる場合は感謝の印、特定の相手がいない異性から渡す場合は「家族になりましょう」と告白の意味があったりする




