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揺り籠と今出来る事

アユム・ツツイだぜ、イェエエエエエッ!

……とはテンション高くない。

愛する仲間たちや相棒達がいる環境に慣れすぎて寂しいし、闇属性状態異常は自分だけじゃ解除出来ないからずっと身体が重くてダルい。

だがこのままだとセドリック里長(りちょう)に割り当てられたお家で引きこもりと化する、こんな天気いい昼間から時間無駄にしたくない何かしたい……!

って訳で気合で外に出てみた。


「アユム殿、外へ出歩かれるのかな?」

「里長、何故ここに……?」

「あの方……“大精霊クリスタル様”の揺り籠となっていただいてますから、アユム殿に万一があると大事ですので」


俺の中にいるあの方ってのは“大精霊クリスタル”と言うのか、それを言ってくれるくらいには信用されたかもしれん。

だがこんなすぐやって来るぐらい過保護とは、俺は幼児か妊婦かな?

……いや揺り籠なんて言い回しなんだし、それぐらいの心持ちで見てるよな。

まあ丁度良いかもしれない、俺は里の中知らないし案内頼もう。


「じゃあ状況を知る為にも里の案内をお願いする、このままジッとしていたくない……」

「わかりました、では参ろうか」


危急の事態を回避出来たからか、セドリック里長は大変落ち着いている。

だが昨日は焦って拉致かます程だから、あんまメンタル強くないのかもしれん……。

或いはこの人じゃなくて、精人族の特徴とか?


「あちらが里の者達で作っている果樹園、森の精霊“モーガン”様のお力で腐りにくく美味しく魔力が回復するのです」

「魔力が……」


“森の精霊モーガン”さん?

強いよね。

序盤中盤終盤、隙が無さそう。

見たところリンゴみたいな果実が実ってるが、あれで魔力回復は大変魅力的だろう。

ジュースとかに加工したら、もっと手軽に回復出来るだろうな。

あとハートリー王国が精人族と仲直りしたい一因だよな、多分。


「こちらは魔法の演習場、我が家名ともなっているシャーウッドの森は魔物も多く対抗する為にも鍛えている」

「精人族は魔法使いが多いんだな……」

「人族に比べると魔法の才能を持つ者は確かに多い、だが身体能力は負けている部分がある」

「なるほど……」


得手不得手があるものだからね。

獣人族は魔法の才能が全く無いか、一点突破で極端って聞いたしな。

魔物への対抗か……。


「“黒い獣”は魔物なのか……?」

「……魔物、ではあるな」


その反応、やっぱそう言う事なのか?


「呪いを圧縮した物を使うんだろ……?」

「何故それを!?」


はい、確定だな。


「覚えがある、まぁそっちは獣人に対して使ってたが……」

「そう、だったのか……同一犯だろうか?」

「別人だな、こっちの方はもうケジメつけた……」

「何処にでもいるのだな、愚かな者は」


同意見だな、呪いは危ないから扱おうとするのは……やめようね!

ガチ死人が出てるんやぞ!


「そしてこちらは畑だ、豆や芋が主食だな」

「おお……!」


大豆らしき豆発見!

液状である醤油や味噌汁は作れても、豆腐とか納豆とかみたいな大豆製品作れないからな!

そして芋は……じゃが芋、さつま芋、なが芋!

里なのに逆に里芋ないのか、だがここもハートリー王国が交流したい大事なポイントだろ。

食料が優秀過ぎる、精霊の力なのか大きくて美味そうだし……。


「じいちゃん!揺り籠野郎なんか連れて何してるのさ?」


ウオワッ!?

どこから来たか、王道金髪エルフ美少女!

誰か知らんが人の事指差して揺り籠野郎とか言うなよ、失礼だぞ!


「むっ!“メリッサ”、野郎とはなんだ!」

「事実じゃん、オレに首絞められてあっさり落とされるくらい弱いし!」

「……」


オレっ娘だぁ!

オマケに俺が絞められてた時の背中のいい感触キミか!

……そう考えると悪くないな?


「メリッサ!すまない、才能があるばかりに生意気に育ってな……!」

「いや、弱いのは事実だからな……」

「へぇ、認めるんだ!男の癖に意気地(いくじ)ねぇなぁ!」 


すげぇ煽るやん。

でも不意打ちとは言え負けてるし、弱いのもまた事実だ。

それよりも気になるなぁ……!


「メリッサだっけか、才能があるんだな……」

「おっ!そうだぜ!火水風土の魔法をルークランクまで使えるんだからな!」

「凄いじゃないか、やはり天才……」

「そ、そっかぁ!?お前弱いけど分かってんじゃん!!」


チョロい!

この子生意気オレっ娘で、金髪ポニーテールで、チョロエルフだ!!

何だこの子は、たまげたなぁ……!


「アユム殿、そこまでへりくだる事は……」

「いやいや、純粋に称えたいって思っただけだからな……」

「そ、そうか……お主は器が大きいのだな」


美少女無罪とまでは言わないけど、懐は深いつもりよ?

ただ目が覚めて最初にいたのがメリッサだと、煽りが劇薬すぎて怒ってたかもしれん。

時と場合による。


「へへへっ、仕方ねぇな!じいちゃんそろそろ仕事あんだろ!オレがコイツ案内してやるよ!」

「む?……そう言えばそうか、しかし頼むからあまり失礼はだな」

「クリスタル様の揺り籠なんだから大事にするって!えーっと?」

「アユム・ツツイだ……」

「ならアユだな!ついて来いよ!」


俺アユ……俺鮎だったわ。


「申し訳ない、本当に」


里長萎萎(しおしお)だ、申し訳無さが全身から伝わってくる。

見た目若いのにじいちゃん呼びな辺り、実年齢凄いいってそう。


「構わない、では……」

「アユーッ!早く来いよー!」

「はいはい、今いくよ……」


身体が重くてダルいとは言え、俺までお爺ちゃんみたいな気分になっちゃうわ。

メリッサの孫適正が高い、ほっこりする。





*************





そこからメリッサと里の中を一緒に歩き回った、何かあったとは思えんほど平和だった。

だが目が覚めた所から離れてくると……。


「ボロボロだな……」

「ああ、そうだ!黒い獣の野郎が残した爪痕さ!」


里にある精人族達の営みがあったであろう建物が破壊され、それがあちこちにある。

激戦があったのだろうな。


「怪我人とかは……?」

「軽重問わず多くいる、亡くなった人もいる……」

「……そうか……」


それだけ強い相手だったわけだな。

と言うかサイラスも俺が介入しなければもっと大きな被害を出してた事を考えると、あれもかなり危ない事態だったと言える。


「でも怪我より更にクソったれなのはよ、呪いが身体に残って蝕むんだ!」

「何だと……?」


呪いが残留するのか!?

多分人によって差異はあるだろうけど、苦しかろう……!

こんな時にサキとラミが……って考えてもどうしようもないよな、分かってる。


「呪われてる人は何処に……?」

「一箇所に集められてる、被害を拡大しないために」

「そうか、なぁメリッサ……」

「何だアユ」


精人族がハートリー王国と険悪な空気になってるのは、そこに邪獣を生み出した悪い奴がいるからってだけじゃなくて……。


「ハートリー王国の関係ない人族を巻き込まない為に、交流を拒絶してるって事なのか……?」

「……それも、あるだろうな」

「そうか……」


なんだ良い人達じゃん、被害が多く出てるんだから頼っても良いだろうに。

……こんな事をやっても意味は無いだろう、でもやっておきたい。


「なぁ、墓に参らせてくれないか……?」

「は?人族が精人族参って何のつもりだよ?」

「俺の故郷では亡くなった人は、皆同じで尊ばれるべき存在になるんだ……頼む……」

「……分かった!」

「恩に着る……」


メリッサに連れられ着いた墓は、新しい物が結構あった。

それだけ黒い獣……“邪獣”の件で亡くなったのだろう。

俺に出来る事はない、神器達が封じられた以上俺はただの人間だ。

だから、せめて。


「どうか、安らかに……」

「アユ、お前……」


死した者達が、安心して眠れれば良いなって思う。

関係ない奴に祈られてもって思うかもしれないけど、それでも祈りたくなってしまう。

だって邪獣は何処ぞの悪人が生み出した物で、この人達は何も悪くないのだから。

俺が目を開けると、メリッサも真似をして祈っていた。


「ここには、顔見知りも沢山いたからさ……」

「ああ……」

「関係ないはずのお前がそんな真摯に祈ってくれんなら、オレもってさ!」

「その心持ちが大事なんだ、中々出来る事じゃないよ……」

「何言ってんだよ!先に祈ったのアユじゃん!」


地球だと墓がどんどん簡易化しそうで、これで良いのかって危ぶまれてるんだ。

ちゃんと立派な墓建てて、祈る気持ちがある。

俺は敬意を表する!


「……よしっ!アユに良いもの見せてやるよ!」

「良いもの……?」

「こっちだ!」


良く分からないが、メリッサが良いものって言ってくれているのだ。

黙してついて行けばよい。

方向的には俺が目覚めた場所の方、里全体で言えば中央の方だな。

暫くして大きな建物にたどり着いた。


「ここだ!」

「この建物は一体……?」

「入れば分かるさ!」  


興味深いねぇ。

好奇心のままに、メリッサのフリフリするお尻のままに俺は建物の中へ入った。

そこには……!


「巨大な魔石……?」

「違うぜ!これは精霊石って言うんだ!」

「精霊石……!」


そういう物もあるのか。

確かにいくらなんでも魔石にしてはデカいし、こんなんあったらすぐダンジョン出来るわな。


「これにはどんな効果があるんだ……?」

「実はなんと魔力を注ぎ続けると精霊が生まれる!……かもしれないらしい」

「それは確かに凄い、のか……?」


まぁ確定で生まれるなら今頃この里が精霊だらけで、大変な事になるもんな。

運なのか条件なのか知らないが、生まれるだけありがたいか。


「少なくとも大精霊クリスタル様が精霊石を生み出して、森の精霊モーガン様は精霊石で生まれたらしいぜ!」

「なら信憑性は高いな……」

「だろ!まぁオレは何百回魔力注いでも生まれないから、最近は注いでないんだけどさ!魔法の鍛錬してぇし!」

「なら仕方ないな……」


実際鍛錬大事、俺みたいになっちゃうからな!

まぁ逆に言えば俺は魔力余っちゃってるから、魔力容量トレーニング代わりに精霊石に注いじゃうか。


「じゃあ注いでみようかな……」

「おっ、やってみ!アユどんだけ魔力容量あるか知らないけど、頑張れよ!」

「ありがとー……!」


しゃあっ、精霊石にドーン!

……おおおおお、入る入る!

どんどん注がれてくぞ!


「おー……長くね?」


まだだ、まだ終わらんよ!

魔力は残ってる、可能な限り注ぎ込めー!

今です、魔力を精霊石に!!


「お、おいアユ!無茶してないよな!?どんだけあるんだ魔力容量!!」


こちとら回復した端から魔力使って鍛えてたからな!

毎日寝る前にほぼ使い切るのを目標にしてたし、伸び代だけはあったから魔力容量だけは伸びたのかね!

だが流石にそろそろ切れるかな?

よし!


「ふぅ……」

「あんなに魔力注いでたの初めて見……ってうわ!!?」

「精霊石が、光を……!」


うおっ、まぶし!

まさかこれは生まれるのか、精霊が!!?

クリスタル→職業を変えてくれたり、合成に使えたりはしない


墓→この概念こそ人の証、生前は分からないが死後は良い人になってくれよ


精霊石→何かを強く求める者にこそ応える、満たされている者には無用の長物

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