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聖女と不死と金犬

エリザベス・オリスト

フィオナ

ベティ・デズモンドの視点です。

私は平凡な生まれだった。

エリザベスと言う名は、何処かの高貴な人の名前って言う安直な理由だった。

8歳になるまでは変哲の無いラミト教徒の子供に過ぎなかったが、そんな私に転機が訪れた。

前聖女様が、寿命で亡くなったのだ。

当時の私は偉い人が亡くなったと言う印象でしかなかったけど……。


『エリザベス、貴女はカノスに選ばれました……この大陸の聖女です』


ラミト様の声が聞こえたのだ。

両親にこの事を話したら『神託だ!ウチの娘が新たな聖女なんだ!』と大喜びで、王都にある神殿に連れて行った。

最初は自分と同じ事を主張する子供が大勢現れて、神殿に沢山いたけど親や親戚筋によるヤラセだった。

そして私が証明を求められる番、ラミト様から受けた神託を伝えた。


『司教様の奥さんが発作、お薬出さないと大変って』

『これは!?』


大急ぎで対処したら問題なく間に合ったらしい、こうして私は聖女に認定されることとなった。

聖女になった事でオリストって言う家名を得た、両親は神殿務めの神官まで昇格し、昔に比べると特別豊かな暮らしができるようになった。

……でも自由はない。

特別な事柄がある時は神託を伝えて、そうじゃない時は鍛錬やお勉強の毎日。

他の子達が遊んだり仲良くしたりしてる中、私は国の運営側とかに参加したりしてる。 

私、一人ぼっち。

でも唯一そうじゃない時があった、それが神託に託つけたラミト様の雑談だ。


『やはり人の営み、とりわけ仲の良い男女の絡みは尊いのです』

『なるほど』


ラミト様は神様の仕事の合間に、そう言うのを世界で探してるのだそう。

そしてそれを誰かに共有したくて、“聖女”に語らっている。

今頃別の大陸でも、同じ様に尊い話を聞かせて貰ってるんだろう。

私はそう言うのに羨ましいなって思った、聖女は神聖性がある存在だから適当な相手と結ばれると、その力が失われてしまうって教会で言われてるから。

普通に遊べないなら、せめて本当に心から恋してみたい。

そう思ってた時だ、帝国による異世界召喚が行われたのは。


『召喚者アユムは呪われたコーデリア姫を救うために、私が授けた神器を手に……!』

『おお……!』


今までの物とは違う、まるで物語の英雄をそのまま現在進行系で中継してる様なお話の内容。

すっごい強いわけじゃない、女の子が大好きでスケベ、でもやる時はしっかりやる……そんな男の人の話。

いつの間にか私は魅了されていた、お兄さんに。

だからラミト様にオリファント王国の迷宮領都にいるって聞かされて、司教様に初めてワガママを行ったんだ。

────こっそりお兄さんに会いたいって。


『お兄さんといつでも会える、そんな能力欲しい』

「……お兄さん、返事まだかな?」


そして今そんなお兄さんとの間では、神器を介して互いの魂が繋がった状態なんだ。

王都と領都の距離だけど、契約のお陰で一人ぼっちじゃないって分かるよ。

右手の甲にあるルーンが、右手にもった神器そっくりの携帯(フォーン)が、送ったら返って来てくれる言葉が。

以前の私にはない潤いを与えてくれてる、それに……。


『いつでも会える能力ねぇ、でも頑張って成長すりゃいつか本当に実現するかもな!』


ドキドキを期待させてくれる人がいる、今の私を見てラミト様言ってるかな?

てぇてぇって。





*************





欲しい物が頼めば何でも手に入る、フィオにとっては当たり前のことなんだ。

侯爵家って言う偉いお(うち)で生まれたから、皆フィオのゆうこと聞いてくれるの。

かわいいお人形、きれいなドレス、カッコいいお馬さん、強そうな召使い。

皆フィオの物!

パパもママも優しくて、お兄ちゃんもカッコいい!

きっとこんな幸せな時間が続くんだろうなって思ってた……あの時までは。


『お嬢様!坊ちゃま!絶対そこから動かないでくださいませ!』

『頼むぞ!絶対倒してくれよ!』

『……?』


皆がさわがしい、一体何があったんだろう……フィオにはそんな事分からなかった。


『フィオナ、兄ちゃんはずっと一緒だからな』

『うん、お兄ちゃんはずっと一緒!』

『そう、だから……はっ!』

『うぅ……何だか寒いよお兄ちゃん』


すると半透明のおばけ達が入って来た、寒くてとても怖かった。


『おおおおおぉぉ……』

『来るな!近づくな!うわああぁぁぁッ!!』

『お兄ちゃん!……お兄ちゃん、つめっ……こわい!』


お兄ちゃんは頑張ったけど見る見る弱って、真っ青で冷たくなっちゃった……。

そして次はフィオの番だった。


『嫌だ!嫌だって言ってるのに!』

『おおおおおぉぉ……』

『冷、た……こわ、いよ……』


お兄ちゃんは助けてくれない、パパもママも……他の皆も誰も来ない。

ただただ怖いって思いながら、フィオは死んだって思った。

でも暫くして気がついたら、まるで何も無かった様に起き上がれた。


『あれ?どうしてフィオ……みんなは?』


自分が大丈夫だったならと調べてみたの、だけど誰も生きてなかった。

フィオだけ、フィオだけが……ヒトじゃなくなって生きてた。

おばけは襲ってこないし、なんなら話しかけたらゆうことを聞くの。


『そっか、変わらないんだ……アハハッ、フィオは好きにすれば良いのね!』


大好きな皆が居なくなったのが辛くて怖くて、フィオはそう思うことにしたの。

そこからは以前していた様に、好きな様に振る舞ったわ。

欲しいものをおねだりして、遊び回ってた。


『おお……』

『ごはんがいるの?そこら辺から取ってきちゃえ!』

『おおお……』


フィオのゆうこと聞くのに要るなら、テキトウに指示を出した。

指示なんてまるでパパみたい!

……パパ。


『……ううん、いいの!フィオは、今楽しいんだから!』


そうやってる事で、寂しさを誤魔化してきた。


『な、何をする!?』

『フィオは楽しんでるんだから、おじさんは邪魔しないでよ!』

『ぐわああぁぁぁっ!!』

『キャハッ!……何、やってるんだろ……』


ありのままを受け入れたくなくて、悪いこともした……おじさん、辛かったよね。

フィオも同じだったのに、何も考えないで。

色んな事出来る人だったから、召使いとして側に置いていたし。

きっと出会えなければ、ずっとこんな風に壊れたまま変わらなかったと思う。

……フィオを叱って、愛してくれた“お兄ちゃん”に。


「お兄ちゃん!お掃除終わったよ!」

「おお、凄いな!綺麗に出来てるじゃん!」

「おじいちゃん!フィオにお掃除教えてくれてありがとう!」

「いえいえ、流石に館と屋敷を常に1人で掃除と言うのは大変ですからな」


今日はダンジョンお休みの日。

戦い以外でフィオは良い子になりたくて、侍従でとっても強いデクスターおじいちゃんにお掃除を教えてもらった。

普段着ないような侍女の服を着て、一生懸命屋敷を綺麗にしたら凄く心が晴れやかになるの!

特に大好きなお兄ちゃんの部屋を掃除すると、とってもいいコトした感じがする。


「今度はサジェリアお姉ちゃんと畑のお手伝いしようかな?」

「良いと思うぞ、サジェリアも誰かと一緒の方が楽しいだろ」

「そっか、そっちも出来るように頑張る!」


おねだりして、誰かに任せてばかりで……そんな自分はなんて損な生き方をしてたんだろって、そしてどれだけ悪い子だったのかって分かった。

だからフィオはもう間違えたくない、悪いことしてきた分だけ良い子になって、誰かの為になる事をたくさんたくさんするの!

だって……。


「お兄ちゃん!フィオえらい!?」

「ああ、もちろんだとも」

「えへへっ、大好きっ!」

「よしよし」


大好きなお兄ちゃんが、側でずっと見ててくれるんだから!





*************





私はベティ・デズモンド……オリファント王国のパターソン公爵領、迷宮領都ポールに存在する冒険者ギルド本部のスタッフです。

流石に規模が最大の場所ですから、常に忙しなく働いています。

父ウォルターはギルドマスターであり、母ジェーンは父と同じパーティで元クイーンランクの冒険者でした。

そんな両親の元に生まれたものですから、私も冒険者になる事を期待されましたが……両親程の才能はないと思います、だから冒険者ではなくギルドスタッフになる事にしたのですが。


『別に良いんだぜ?忙しいのは確かだが、他にやりたい事あんなら……』

『ううん!ママも大変なのに頑張ってるし、パパもやりたい事やらないでこの道を選んだんだから!』

『……そっか!ならこき使ってやるか!』

『もう!調子に乗らないでよ!?』


私はかわいい所がある人や物が好きでしたから、教師とか孤児院務めのシスターとか花屋とかが夢でしたが……。

ママは生まれた時から怪我で目が見えず、パパはママを支える為に冒険者を辞めてギルドスタッフに転向。

私がある程度大きくなってからはギルドマスターに……そんな姿を見てきましたから、好きな事をやって生きるなんて考えられませんでした。


『なぁベティちゃん、今夜1杯どうだい?』

『お断りします』

『オレ様ならキミを満足させられると思うんだが、どうよ?』

『ご要件がないのでしたらお帰り下さい』


ギルドスタッフをやっているとこんな事ばかりある、無論私のみならずに女性スタッフなら良くある話ですが。

……本当は怖いんですよ?

こうやってアプローチをかけてくる人の中には、私より実力が上の人だっているのですから。

でも冒険者って軽薄な人や傲慢な人が多くて、謙虚で真面目な人や愛嬌と実力を兼ねる人は中々いない。


『自分で選んだ道とは言え、辛い……』


うっかり独りごちると。


『ベティ、無理してるの?』

『ママ!?ごめん!つい……』

『言いなさい愚痴くらい、溜め込む方が身体に毒よ』


自分が一番不便で辛いだろうに、ママはいつだって優しい。

こう言う所に父も惚れたんだろう、だからギルドであったことを愚痴りに愚痴ってしまった。

そしたら……。


『貴女にも出会いさえあればね……』

『出会い、パパとママみたいに?』

『そうよ、素敵な出会いは女を変えるの』


素敵な出会いかぁ……ギルドスタッフをやってる間に、そんな物私にあるのだろうか?

そう思ってた時だろう、彼に出会ったのは。


「お邪魔しますね」

「ど、どうぞ!」 


今日はスタッフのお仕事が非番の日。

何もしないのは勿体無いよね、その通り。

しかも両親は……。


『オレとジェーンは久方ぶりにラブラブデートに出かけてるからよ、その間に既成事実作ってモノにされとけ!』

『はぁ!?』

『素敵な出会いは女を変えるって教えたわよね、ベティがあの方の事話す時……若い頃を思い出すわ』

『ママ!?』

『ってわけで頑張れよ!』

『パパもママも応援してるからね!』

『う、うぅ……分かった、頑張る!』


────だから思い切ってアルフさん、本名はアユムさんなのだそうだけど……お家にお招きしたのだ!

……改めて、考えてみると。

自分を常に後ろに置いて謙虚に振る舞い、ダンジョンには冒険者として真面目に取り組んでるし、カッコいいよりどことなく愛嬌があって、英雄と同じ召喚者だから実力はある……。

その上ママの怪我と視力を治してくれた恩人だし、秘密を話すのには覚悟が要るだろうに信頼して語ってくれた。

……自分の気持ちは分かってる、分かってるから今彼を自分の部屋に招き入れた。


「ベティさんの部屋は可愛い感じなんですね、こう言うのがお好きなんですか?」

「じ、実はそうなんです……引きました?」

「そんな訳ないですよ、俺もこう言うの結構好きなんです」

「ほ、本当ですか!?」


バルーンシープ製ピンクのクッションやお人形が沢山……。

私の年齢は25歳、この年でこう言うのは……って言われてから自宅に同性の友人も誘えてない。

好みのタイプをえり好みし過ぎなのも分かってますけど、経験無し……完全にいかず後家。

だから彼がどれだけ器が大きくても、引くかと思っていた。


「今の俺の家にもふわふわモフモフなのを私室に置いてて、今度同じのプレゼントしましょうか?」

「良いんですか!?是非……はっ、ごめんなさい!(はした)なくて!」

「好きな物の話なら興奮しちゃいますよ、当然です」


や、優しい!

この趣味に理解を示してくれる人、今までいなかった!

それに私の反応見て、引くどころか楽しそうにしてくださってて……正直かなりキテいる。

……そう言えば、アルフさんの年齢って。


「アルフさん」

「はい?」

「私25なんですけど、そちらは……」

「24ですけど、近くて良いですね」


年下だった!

ハァ、ハァ!……これは、いけない我慢できない!!


「ウオワッ!?ベティさん!?」

「女が私室に男を入れる理由、分かっておられますか?」


一瞬でアルフさんを抱えてベッドに押し倒していた。

私は完全に発情している、自分を全然抑えられていない。

かろうじて恩人で召喚者と言う事と、彼から直接“そう言う風に”誘われてないからそこで踏み止まってるだけだ。

……どうしよう、嫌われたかな?

だとしたら立ち直れ────。


「いいですよ」


彼はそう言って私の目元を拭う、いいですよと言いながら。

勝手に嫌われたと想像して涙ぐんだ私を心配して、受け入れてくれた。


私の理性が完全に飛んだ瞬間だった。


───────────


理性を取り払った彼女は、クイーンランク冒険者同士の間に生まれた娘としての才能を爆発させた。

上に乗っても下で受け止めても乱れに乱れ、あまりの凄さに出た彼の感想はこうだった。


「初めてこう言うので死ぬかと思った、表には出さなかったがかなり恐怖を感じた」

家名→貴族以外でも特殊な立場や、料金を払って国に申請する事でも付けられる


お馬さん→彼女の為にテイムされた魔物、最も小さくテイムし易いファンシーポニーの可能性が高い


発情→獣人は興奮し過ぎると感情を抑制出来なくなりやすい、男女問わず煽るのはオススメしない

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