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電脳水筒と幽霊退治

パターソン公爵領の迷宮領都ポールに来て丁度1ヶ月、聖女のエリーと別れてからだと20日が経過した。

パーティメンバーの冒険者ランクは、途中で無事に全員ビショップランクに昇格した。

魔石はサジェリアとハガードで半々なのだが、ハガードが大量に荷物を運んでいるのでその分納品アイテム量が増えて、ギルド貢献度と報酬がたんまり貰えていたのだ。

装備は宝箱狙いもしつつ、筒内工房(ボトルワークス)で必要な物を作り補っていく。

階層は第5層と言う大台に辿りついており、最奥に次の階層への階段を守る初めての番人(ボス)がいるそうだ。

その目前って所までやって来ていた、だがしかしある目標が達成できたのでそれを優先する……それは!


「館を置ける広さかつ立地が良い場所、買える値段貯まりましたーッ!!」

「「「「イエエエエエエエーッ!!」」」」「お〜」『目出度きこと』


そうなのだ!

ここまで冒険者としてポールダンジョンに通い続けた事で、ついに資金が貯まったわけだ!

そして購入するのはかつてアリスとの縁を結んでくれた、ドレイク商会会長で銀髪眼鏡のイケメン“エイブラハム・ドレイク”が保有する売買用の土地だ。


『貴族街から遠く、塔から遠すぎず、館が建てられる位広い土地か……クククッ、なら持っているが(いわ)く付きだぞ?』

『曰く付き?』

『パターソン公爵領は元々サージェント侯爵と言う人物が治める土地だった、しかしダンジョンが成長してその運営が軌道に乗り始めた所で……家族揃って突然死だ』

『なにそれ、ヤバそう』

『急いで代官の派遣をしたが失踪、そこにある屋敷がヤバいのだ取り壊そうとすれば体調不良でバタバタと……結局現在まで触れられてない、領主のパターソン公爵もだ』


彼の紹介していた土地はどう考えてもヤバい案件である、魔物や呪いなんかが存在する異世界カノスなのだから何がいてもおかしくない。

だがまぁ俺にとっちゃあ関係ないのだ、寧ろ……。


『大変興味深い……!』

『クククッ、流石だな!』

『俺からすれば館を置ける上に豪華な屋敷も得られる、そしてそんな場所で近寄りがたいなら、面倒事を遠ざけるのに良いかもしれないしな』

『お前みたいな酔狂な男を待ってたよ、正直公爵に頼まれて土地の権利は俺が持っていたが売れなくて困っていた……売値は1,780,000,000リンクだ』

『貯めてくるわ』

『いつでも待ってるさ、どうせ他に誰も買わん』


そんなやり取りから、無理せずのんびりでコツコツ稼いできたらいつの間に貯まったのだ。

今日の予定は最初に土地と屋敷の視察、大丈夫そうならそのまま引き渡しって所だ。


「ここまで案外早く来れたわね!」

「ええ、全員の頑張りの賜物ですな」

「しかし曰くの付き方が凄まじい場所です、気を付けてかかるべきでしょうね」


何とかなるとは思ってる。

電脳探査(レーダー)情報解析(スキャン)コンボで分かってる通りなら、俺達なら対処可能な案件だって事はな。

ただ、感づかれてるしエイブラハムには明かすべきだよな……俺の正体。


「よお、待ってたぜ」

「待たせたな、この場にいるので全員だ」

「会長!」

「クククッ、相変わらず元気そうだな」


アリスから完全に呪いが無くなっているのを、エイブラハムは知っている。

ちょくちょくダンジョンでは手に入らない品を取引する時、アリスも連れてきてたからな。

聡いこの男がこれで気付かない訳ないよな。


「それじゃあ視察と行くが……エイブラハムも来るか?」

「ほう、“良いのか”?」

「最初から友人みたいに気安い関係だったんだ、もう“親友”でいいだろ」

「……ククッ、お前って奴は」


眼鏡の位置を直したのを確認してから、改めて俺は名乗る。


「本名はアユム・ツツイ、召喚者って奴だ」

「“本物”とは思っていたが……実力も相応か、見させてもらう」

「ああ、曰く付きの物件を俺達の理想の家にしてみせるさ」

「クククッ、楽しみだ」


こう言って俺達は手を握る、心から信頼出来る親友として。


「しかし周りに建物無いし人もいない、閑散としてるな」

「前領主周りの話で有名だからな、だが都合が良いだろう?」

「違いない、行くぜ皆!」

「「「「おう!!」」」」「お〜」『応』

「一転して賑やかだな」


さてさて、始めるとするか。

幽霊退治(ゴーストバスター)





*************





先程までの話で出た元領主一家の突然死や代官の失踪等の現象、それは非常に杜撰な対応をした為に起こった事故であった。

まだポールダンジョンが今程ギルド本部のシステムが確立していなかった頃、故サージェント侯爵は配下をダンジョンに潜らせてアイテムを集めていた。

と言うのも資源はあったがまだまだすぐに資金に替えられるほど、産業として発展していなかったのだ。

しかしダンジョン産のアイテムは違い、加工をせずとも需要があって手軽に資金を稼げる。

生粋の繁神信奉者として、より豊かな領地を彼とその家族は望んでいたのだ。

しかしガッツリ対応を誤った、魔石をある程度まとまった量になるまで貯めようとしたのである。

魔石に残っている魔力量はまちまちだが、数が揃えばどうなるか……後は分かるだろう?


『閣下!アンデッドが、アンデッドが襲ってきましたぞ!!』

『何だと!?』


リーデン帝国の様にダンジョンが生まれた。

しかも運悪くアンデッド系の魔物が湧く物であり、屋敷の倉庫から生者のエネルギーを求めてダンジョンから這い出て来たのだ。

一般的な魔物だったら自分達で食い合う事で問題なかったが、アンデッドは近くにいれば反応して生者を求めてしまうらしい。


『な、何故だ!何故死なない!?』

『おおおおおぉぉぉ……!』

『ぎ、ぎゃあああああっ!!』


しかもアンデッドは物理攻撃に耐性を持つ者が多い、魔法が有効的だが万民にその才能はないわけで。

対応を誤ったその末路は……生気を吸われ、真っ青な状態の家族と配下達の屍であった。

え?

俺達はどうなのかって?


「神聖性があるからアンデッド楽勝ね!」

『うわあああああぁぁぁ……』

「きゅっとしめおとしますわね〜」

『ひぎいいいいいぃぃぃ……』

「こうなるとは予想外だったな」

「俺、基本皆頼りだからな」

「クククッ、よく言う」


聖杯恩賜(カリスグレイス)で神聖性を獲得してるパーティメンバー+筒内工房(ボトルワークス)で作って神聖性が付与された武器=アンデッドに勝機なし!

って話ね、そらそうなるよな。

俺自身はちょこっとやり合ってるが、大半が他のメンバーが倒してくれてる。


「御主人様!ワタシもう奴隷じゃなくても、御主人様って呼んでいい!?」

「おう、良いぞ〜!好きに呼びな〜!」

「やったー!」


さっきエイブラハムにネタバレしたから、義理は果たしたとしてその場で電脳契約(コントラクト)して契約を上書きした。

これで奴隷から開放したのと同義であり、書類じゃなくラミを介しての魂の繋がりが出来たってわけね。

全部終わったら、アリスも冒険者登録しよう。


「しかしこれだけでは無いんだったか?」

「ああ、この屋敷を支配してる奴がいる……そいつをどうにかする」


雑魚アンデッドの“ゴースト”はこうやって簡単に処理出来るが、これだけで王都から派遣された代官があっさり失踪させられるわけがない。

いるんだ……ダンジョンにでは無く屋敷に居着いた、このアンデッド達を従える支配者(ボス)がな。


「ここだ」

「……確かに、異様に寒気が強いな」


ここは領主の子供部屋だ、明らかにここだけ雰囲気が違う。

相当大事にしていたのか、自分の部屋より豪華な扉構えに見える。

全員を見回し目を合わせて了解を取り、最後にエイブラハムを見る。


「行くぞ」

「ああ、やっちまえ」


にこやかな彼に頷き、扉を開くと……。


「へぇ~凄いね“おじさん”達!アイツら倒してここまで来れるなんて、少しはやるじゃん!」


そこにいたのは……“メスガキ”だった。

黒いリボンカチューシャを着け、桃色の長くボリューミーな一本の三つ編みを左肩からダラリと垂らして、フワフワと浮かんで憎たらしい笑みを浮かべている。

その傍らには黒髪の男性が苦しそうに浮かんでいる、彼が代官の成れの果てであろう。


「浮かんでいますし、他のアンデッドを従えていますな……」

「“レイス”か?」

「いや、“リッチ”だ」

「何!?」

「そうきましたか、道理で肉体があるわけですぞ」


初見勘違いしてしまいそうだよな。

レイスはゴーストの王でその肉体は滅んでいるが、まるで生きているかの様に存在感があるらしい……ただ声はゴースト同様頭の中で直接響くのだ。

一方でリッチは魔力が非常に高く高貴な身分の者が死んだ時、稀に生まれる魔物らしく肉体はバッチリ存在している。

彼女は旧侯爵家の娘でたまたま膨大な魔力容量を誇っていたが、ダンジョンから溢れ出した魔物によって幼い内に殺された。

そして偶然リッチになって、以降はこの屋敷の支配者となったのだ。

リッチは肉体が損壊しないから生前の記憶や人格が残ってる、多分あの感じが“素”だ。

だから一回否定しなきゃ治まらねぇなぁ!


「おい、おじさんだと!?ふざけんじゃねぇよ、お兄さんだろ!?」

「え〜フィオからしたらどう見てもおじさんですけど!キャハハッ!」


クソッ、一時期の悪戯心満載のサキみたいなムーブしやがって!

もう許せるぞおい!!


「お姉ちゃん、あんな感じだったし?」

「知らないよ、ボク知らない」


俺、一生忘れねぇから!


『もういいじゃん!忘れてよ!』


とにかくもう許さねぇからな……!


「あのガキは俺にやらせてくれ、皆は他のゴースト達を頼む!」

「「「「了解!」」」」「はがくんやりますわよ〜」「守護らねば……」

「俺の分も頼むぜ、親友」


まとめておじさん扱いされてたもんな、任せとけ!


「おじさん、フィオ知ってるんだよ」

「ん、何の話だ?」

「おじさんがぁ、この中で一番ザコって事!」

「グッ!」


ガキが……痛い所突いてくるじゃねぇか!

最近は剣をまともに使ってないし、召喚者は魔法の才能が無いからサキラミ姉妹だより。

そして他メンバーは頑張れば頑張る程強くなっていくので、差は開く一方!


「図星だね!ザコザコッ、ザ〜コ〜」

「ああ、認めよう……俺は確かにザコかもしれん」

「認めちゃうんだ!イサギが良いねぇ!じゃあ、さっさと死んじゃって!フィオの物になっちゃえ!」


ロリッチは水属性の派生である“氷属性”の才能が高いみたいで、ビショップランクの氷魔法“ブリザード”を“詠唱破棄”で発動させてる!これは強いわ!

代官さんご愁傷さまだ、仇は取るぞ!


電脳干渉(ハッキング)」 

「行け、姉ちゃん」

「いただきー!」

「えっ!?何でフィオの魔法が!」


ラミを構えてサキをブリザードに侵入、筒内収納(ボトルストレージ)で構成する魔力を奪って瓦解(がかい)させた。

次!


「栄養添加、発射!」

「ファイアー!」

「ぶうぇっ!?何このネバネバ気持ち悪い!」


栄養添加でトリモチに変化させてサキから発射、一時的かもしれんが身動きを封じれる。

後は……。


「ラミ、最短距離に高出力で!」

「うっし、やったるし!」

「な、何よ!なにする気よ!?」


ラミは既に自立機動を習得している、単体でメスガキに近づき先の方に魔力を大きくしかし範囲は小さくする……今だ!!


「高出力スタンガンくらうし!」

「き、キャアアアアアアァァァッ!!」 


神聖性の塊みたいな金雷を目茶苦茶な電力量で、あくまでロリッチのみを狙い撃ちした形に零距離で叩き込む。

ただし情報解析(スキャン)をしながら、彼女をギリしなせん範囲で止めた。


「い、イタイよぉ……こんなのシんじゃうよ……」


トリモチはサキが回収、バタリと倒れこんだ彼女はすっかりただ痛みで泣いてる子供だ。

しかし決して隙は見せずに、彼女の魔力はハックして吸い出すのも忘れない。

横目で他の戦況を見てみると、代官さんが祓われる直前だった。


『やっと、いけるのか……』


長い間お疲れ様でした、来世はもっと平和な生を歩めると良いな。

後はこのズタボロでビリビリしてるガキだけだな。


「ひっ……こ、こないでよ……」


魔力を吸われて気力が無く、かなり弱ってる。

畳み掛けよう。


「どうだい、自分だけじゃ大した事ないザコのおじさんに負けた気分は」

「う、うぅ……」


さめざめ涙を流して、分からせをくらっているメスガキロリッチ。

でもまだ終わりじゃない。


「お前がかつて何も知らないまま理不尽にも殺された事、それは知ってる」

「うぇ……」

「さぞや苦しかったろう、辛かったろう……お前は何か悪い事をやったわけじゃなかったのに、1人になって怖かったろうな」

「そ、う……そうなの……だから……!」 


だから?

違うよな?


「だがそれで罪の無い代官さん殺して良い訳ないだろ!」

「ひうっ!」

「人影や建物がこの辺りに無くて閑散としてるのは、支配者のお前が何も考えずに生気を吸いまくったからだ!そうだろ!?」

「はう……っ!」


殺された背景は無実だ、だがその後やった事は非常に悪い事だ。

そこはちゃんと理解しなきゃな。


「だから俺がお前を()らしめた、そして本当に大事なのはここからだ!」

「だい、じ?」


ここで全部責めて押し付けて倒すのは簡単だ、だが何もかもがこの子の罪ではない。


「心を入れ替えて、良いことの為にその力を使いなさい……皆に心から好かれるいい子になりなさい、それがお前の出来る罪滅ぼしだ」

「いい子……フィオ、いい子になりたい……」

「なら契約だ、今からするから受け入れなさい」

「うん、分かった……!」


よし、了承の言質とった。

ラミを手に取り電脳契約(コントラクト)を発動し、リッチとの間に魂の繋がりが出来上がった。

そこを介してサキが吸い取った魔力を、神聖性が付与された状態で戻していく。


「なにこれ、あったかい……?」

「俺の魂とお前の魂が繋がったからな、これからはずっと一緒だ」

「一緒、なの?あなたとフィオ一緒なの!?」


一度死者となった存在だったし、最初会った時は青白い顔だった。

だが段々と熱が、暖かみが戻ってきている気がする。


電脳契約(コントラクト)のテイムで魂の繋がりが出来た事で、本来のリッチから変化しつつあるみたい!』

『そのうち神聖性も武器にした、“エルダーリッチ”に進化するかもだし!』


エルダーリッチって何!?

だから知識を伝えずに土壇場でドッキリ混ぜるなって、心臓に悪いゾ。

落ち着け、私は冷静なのだ……Be CooL……Be CooL……。


「ああ……だからちゃんといい子でいられるよう、側で見ててあげるさ」

「────ッ!ありがとう!お兄ちゃん!」


浮かんで突っ込んで来たから抱きしめたが、普通に人並みに体温感じる……体格はエリーより更に小さい女の子って印象。


「俺はアユム・ツツイだ、お前は?」

「フィオはフィオナだよ、お兄ちゃん!」


なるほど、フィオナちゃんね。

可愛いだけじゃなくて一瞬戦った印象でも、かなり強かったと思うし頼もしいわ。


「おいおい、英雄殿は守備範囲が広すぎやしないか?」

「普通に未成年は守備範囲外だぞ、魔物だとその辺緩いが」

「あー、まぁそれなら倫理観ある方か?」


そこら辺はマジで人によると思う、俺が変態にかなり寄ってるだけで。

ま、とにかく完・全・勝・利!

目下やらなきゃならなかった事である、屋敷の支配者(フィオナ)を無事に無力化して我が陣営に加える事に成功した!

イケメン→何をやっても様になるが、憧れてる人によって解釈違いが発生する


曰く付きの物件→隣の墓とか気になりますよね、あと赤いシミとか御札とか


突然死→生きてりゃ皆死ぬ、無論可能なら穏やかに逝きたいものだ

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