電脳水筒と精神と携帯
精神世界は皆が実は持っているもので、それを自覚し利用出来るのは神器が介する事で接続できる召喚者のみの特権である。
……そんなふうに考えていた時期が、俺にもありました。
以前ふと疑問に感じた時に情報解析を行い調べた所、様々な経験を通して精神を壊して空虚になった人間の内で、それを治そうする際に稀に形成されて生まれる特殊な空間であるのだそうだ。
まさかあのお辛い経験のお陰で精神世界が生まれ、呪いを引き込めて倒し生き残れたと考えると、俺はあの時かなり綱渡りだったんだなと感じた。
そしてそんな場所は、現在デミガーゴイル君の住処となっているわけだが。
『心地よい』
そして彼は喋るようになっていた、シュールである。
堀が深い顔でスキンヘッドに山羊角生えた、身長2mでムキムキで白いキトンを着た男は予想通り野太い声だった。
最初キエエッ!って言ってたのに。
多分聖杯恩賜で伸び代が増え、精神世界にいる間に間接的に影響受けて成長したのかもしれん。
他パーティメンバーと比べると特別強くないが、俺よりは間違いなく力も耐久力も強い……そんな奴。
「アユム様、彼に名前をつけるのですか?」
「でみくんおなまえもらえますの〜?」
「二人共、そうなんだよ……うーむ」
現在コーデリアとエレンとアリスは聖女エリザベスちゃんを歓待して、一緒にお風呂入りに行っている。
だから今この場にいるのは精霊、ドリアードのファンタジー組である。
それにデクスターさんは男性メンバーとして、サジェリアは使い魔仲間として仲良くしたい気持ちがある様だしな。
せっかくだしいい名前を付けよう。
デミは“半”を意味する言葉、そしてガーゴイルで、荷物持ち……。
よし、決めた!
サジェリア同様組み合わせ系だが、悪くないと思う。
さて、彼に伝えて召喚しよ。
「デミガーゴイル君、召喚するんだけど中だから念の為屈んでてくれない?」
『御意』
向こうの状態はラミの画面から把握出来るが、緑豊富で花が咲き誇るのどかな場所で無骨な彼が屈むのが見える。
意外と様になるな。
魔力を消費して広くて余裕ある場所に召喚すると、俺に跪く形で彼は現れた。
「お呼びか」
「ああ、君に名付けを行う」
「……!」
心做しか嬉しそう、後ろでデクスターさんとサジェリアも期待してるし早速発表しよう。
「君の名前は“ハガード”だ!」
「おぉ……嬉しや」
どうやら気に入って貰えたようだ、後方先輩組もよう頷いとる。
半分の英語で“ハ”ーフ、“ガー”ゴイル、積み荷の英語の1つでロ“ード”の組み合わせである。
ハガーの部分は何か投げ技強そうだし、ガードは守り手的な意味になるし上々よ。
「改めてよろしく頼むぞ、ハガード」
「はっ」
深く忠誠の礼を取るハガード、是非とも活躍に期待したい。
「あっコラ!エリーちゃん裸で出ちゃダメ!」
「すまんハガード」
「察しました」
たすかる。
彼を精神世界に戻した瞬間、身体は拭き終わったみたいだが、ガッツリ全裸なエリザベスちゃんが突撃してきた。
俺はあくまで冷静に……。
「コーデリア!俺がやっておくから君は服着てから来なよ!」
「わ、分かったわ!ごめん!」
サキに念の為に作らせておいた、彼女のサイズの下着とパジャマを筒内収納から取り出す。
そして粛々と着替えさせ始める。
「……もっと焦ってくれると、思ったのに」
「俺は変態だが変態と言う名の紳士だ、まだ結婚出来ない娘の一挙手一投足でオドオドしてられんさ」
「くっ……」
小五ロリにいつまでも負けてる俺ではない、もちろんめっちゃプリチーなのは認めるさ。
ふんわりとしたロングツーサイドアップの紫髪に、同じ紫の瞳と真っ白つるぷにの肌、胸はささやかで希少価値だがお尻は意外とある……将来性もあるのさ。
だがやはりあくまで妹ポジション位が現状精一杯だ、おととい来な。
「ごめんなさいアユムさん、助かりました」
「御主人様の手を煩わせちゃった、申し訳ない」
「大丈夫だよ、家族みたいなもんなんだから助け合いでしょ」
「はふぅ……」
「あひゃ……」
エレンとアリスを抱きしめる、柔らかさといい匂いがたまらん。
コーデリアは一度冷静になって戻るのに遅れたようだから、先に2人が戻ってきたのだろう。
やはり既に関係があると風呂上がりってだけで、“そう言う目”で見てしまうのよな……変態ここに極まる。
「これで勝ったと、思うなよ……」
「もう勝負ついてるから」
「なに、何の勝負?」
っとコーデリアも戻ってきたな、不平等は良くないので不意打ち気味になったが彼女も抱きしめた。
何度味わってもやめられないこのボリューム、極上の女性の香り……ザカリーよ、こう言うのが運命の相手って奴なんだぜ。
「あ、アユム!?」
「……」
「……あぅ」
コーデリアは黙って抱きしめると弱いと言うのを、これまでの付き合いで知った。
だから最近は慣れない様に間隔を置いてやっているのだ、何事も過度に同じ刺激を繰り返さないのが一番だ。
はい、コーデリアから離れた……とここで!
「ほい」
「!?」
「お、おお!?」
「やりましたわ〜」
エリザベスちゃんはどうやら油断していた様だったので、隙を突かせて屈んで抱きしめさせてもらった。
“バルーンシープ”製のふわふわ白パジャマで抱き心地を増加させていた俺に隙は無かった、お前調子ぶっこき過ぎてた結果だよ?
……お?
「こ、こんなの、ヤバいよ」
「エリザベスちゃん?」
「むり、耐えられない、しぬ」
目茶苦茶恥ずかしがってるだと!?
向こうから抱きしめるのは大丈夫だけど、こっちかは抱きしめられたらアカンタイプとは!
しかしこの反応……まさか世に言う、“限界化”って奴か?
やっぱファンガなの?
ラミト様から神託聞いて想像膨らんだ結果、こうなっちゃった?
「アユム様は罪な男ですな」
「そこがいいところですわ〜」
『すごい漢だ……』
ギャラリーはさぁ……この後サジェリア抱きしめても喜ぶだけで効かん辺り、真の最強はサジェリアな気がした。
成長したドリアードはこれほどまで強いのか。
その日の夜はエリザベスちゃんとコーデリアと共に、川の字で寝ました……また限界化してたわ。
*************
翌朝、王都に戻るとのことでエリザベスちゃんとはお別れとなる。
教会の前にはホレス司祭や迎え用の馬車の姿が見えるし、もう行かなくてはならない。
チラリと彼女の右手の甲を見ると、電脳契約の証が見える。
それは例の事件解決直後に神託で知っていた為に、エリザベスちゃんの方から提案して来たのだ。
正直気が引けたがホレス司祭から「あの方もまた不自由な身の上なのです」と説得され、聖杯に比べればそこまでデメリットらしい物は無いかと契約を行ったのだ。
「もう帰らないと、いけないんだ……」
寂しそうな横顔が見える、余裕そうに振る舞っていたがこの子はまだほんの11歳の少女だ。
その身に聖女としての重圧が伝わっている、急に抱きしめてきたり裸で現れたりとエリザベスちゃんなりの甘え方なのかもな。
「エリザベスちゃん……いや、エリー」
「!……な、何?」
俺はゆっくり近づき、彼女の背負う物を少しでも軽くしたいと伝える。
ラミが成長して得た新たな能力の一つを……!
「契約の証に触れて、俺をラミの姿をイメージしてごらん」
「えっ、う、うん……!」
エリーは言われた通りにすると、ほれ出てきた見た目だけならラニと同じのそれ。
「これって……!」
「ラニの新たな能力“電脳携帯”だ、そこ見ててみな」
「う、うん……!」
既に興奮気味になって来ているエリーに、思わずニコニコしながらラニに触れると、頭に思い浮かべたメッセージが自動で打ち込まれていく。
それがエリーの持ってる電脳携帯のほうに、さっきのメッセージが届く。
『君は1人じゃない』
「あ、あぁ……!」
どうやら思いは伝わったらしい、瞳を潤ませて俺に振り向き走ってくる。
そう来ると思って既に屈んでおり、エリーを抱き止めた。
互いに言葉はない、ただ黙って抱きしめ合う。
これだけで十分伝わったから。
暫くして離れ、微笑んで別れる。
「お?」
もう使い出した、早い!
そして彼女からのメッセージはこうだった。
『いつか責任を取ってもらう』
そんなに俺やらかしたかな?
自分に出来る限りの最善を尽くしただけなんだが、解せぬ。
前を見ると司祭は頭を下げてるし、エリーは屈託ない笑顔で手を振っていた。
メンバー全員で振り返してやると、俺達はポールダンジョンへと向かった。
いつもの様に、皆で笑って、前へ進みだした。
綱渡り→その歴史は古代ギリシアまで遡る、押すなよ絶対押すなよ!?
川の字→親子が良くやる寝方、とても健全
プレッシャー→仕事中や戦闘中にかけられると、鬱陶しい




