電脳水筒と聖女と達成
あの後少しの間頭を抱きしめられ撫でられながら、ロリに「お兄さん」と耳元で言われるASMRが展開されていた。
大変危ない絵面により俺が逮捕案件もあり得たが、皆戦いに夢中でそんな事は無かった。
「エリザベスちゃんは何歳なんだい?」
「11歳です、お兄さん」
小五ロリやん。
天然物だよ、実在したのか……!
しかし13歳差で将来の結婚を誘われるのは、異世界カノスに慣れてきた俺でも流石に犯罪臭が凄すぎて素直に頷けん。
「とりあえず“お友達”からな、互いの立場的に縁多くなりそうなのは俺も理解してるし」
「“今は”それでいい、弁えてる」
“今は”か、この子の中では確定らしい。
少し離れ幼女の紫の瞳から来た視線と俺の視線が交わる、お前がロリを覗いている時ロリもまたお前を覗いているのだ。
それから彼女がゆっくり手を離したので、俺も離れて立ち上がる。
そしてその頃にはもう、事態は収束する所だ。
「馬鹿な……私の計画がぁ……!」
「上手く行かせる訳無いでしょうが!」
「この変態め、ワタシも成敗する!」
「グヘェッ!!」
あっ、最後まで踏ん張ってた変態助祭が潰えた。
そんじゃ後は……。
サキ、奴らを拘束出来る物を頼む。
「まっかせて!」
サキは筒内工房で収納されていた魔物素材から頑丈な拘束具を制作、デクスターさんがパーフェクトなスピードであっという間にお縄だ。
当然ながらお縄の対象にはサイラスも入っている、この一件に関しては巻き込まれた部分もあるが脱走したなら罪よ罪。
っと、司祭殿がこちらに来たな。
「この度は誠にありがとうございます、このラミト教会にて司祭を務めています“ホレス”と申します」
「初めましてアユム・ツツイと言いまして、召喚者などやらせていただいております」
「これはこれはご丁寧に……何ですと!?」
素晴らしいリアクションありがとうございます。
「ご存知の通りリーデン帝国は異世界召喚をしまして、その時俺が繁神ラミト様の神器を授かって来たものなんです、はい」
「なる、ほど……?」
ホレスさんがツツツ……とエリザベスちゃんの方を向いてきた。
彼女は微笑んだ。
「本物です、私がここに来た理由」
「え?」
『おお!』
エリザベスちゃんは神託受けて俺がポールにいるって、聞いたから来ちゃったと!?
これ間接的に助祭の暴走を誘発してしまったのでは?
いや、あんな奴だから何とか別の手段でやらかしてたかもな。
そして彼女の言う事だから皆さん素直に信じる、聖女の言葉って偉大だ。
「召喚者アユム様、貴方様のお陰で聖女様を無事お守り出来ました……最大限の感謝を!」
ホレスさんとその部下さん達が全員跪き、左胸に右手の平を当てて左手を軽く横に開く。
「どういたしまして、俺としても見過ごせない暴挙でしたから」
「おお、何と勇ましい……!」
「お兄さんは英雄だもん、ね?」
『英雄、聖女の英雄だ……!』
あっ、その方向性はまずい。
「ただ申し訳ないんですけど、暫くは召喚者である事は隠したいんですよね」
「なんと、何か事情が?」
「色々ありますが、今は自由をもう少しだけ満喫したいんですよね」
「ふむ、確かに召喚者様……まして聖女の英雄ともなりますと、ラミト教会全体が大変な事態になりますからな」
ですよね。
多分ただ歓迎されるだけじゃないだろうし、可能ならまだ避けたい事態だからな。
「しかし王都にいらっしゃいます“司教”様はご存知かと思いますが……」
「えっ」
「大丈夫だよ、司教様は私から聞いて知ってるけど、その点分かってるし信頼出来る」
「なら良かった……」
「把握されているのでしたら、周囲を上手く誤魔化せそうですな」
ホレスさんも良い人だわ、正直助かる。
「とりあえず俺はナイトランク冒険者アルフとして活動していて、そこのサイラスって奴を逮捕に来た所なんですよね」
「なるほど……では“アルフ殿”は捜査中に教会内部でのいざこざが発生したので我々と協力して解決、サイラスは敵に加担していた所を倒して逮捕で良いですね?」
「はい、それで大丈夫です」
よし!
これで怪しくない形で依頼達成や!
「しかしこの度の主犯ザカリーに関してはいかがしましょう、証拠は残っていますが確実に余計な事を申したり再犯等の問題があります」
「確かに……」
この手の奴の口を物理的に防ぐ手立てないし、調べた情報的に弱みが弱みにならない無敵の人だからな。
参ったな、どうするかなぁ……。
『主、アタシ成長したから新しい力聞くし!』
『あっ、さっき力の塊吸収してたな』
えっ、この状況で目覚める有効な能力あるんですか!?
で、何々?
……おいおい、こりゃあ凄いけど……“本が薄くなる”な?
ともかくかなり有効的に使える場面だ、やってやるぜ!
「ホレス司祭、それ解決出来そうなんで任せてください」
「本当ですか、是非お願い致します!」
「ええ、エリザベスちゃんちょっと待ってな」
「うん、分かった」
あれこれ話してる間に自然と手を握ってやがった、お兄さんは英雄とか言ってる辺りだろうか。
小五ロリ強し、彼女の手は話して皆の元へ向かう。
「すまない誰か変態助祭を起こしてくれないか、やらなきゃならない事がある」
「わたくしにまかせてくださいませ〜」
「サジェリアか、任せた」
「ですの〜」
サジェリアは蔓を伸ばしてモノクロの花を咲かせ、それを奴に嗅がせる。
すると……。
「……はっ、ハックシュウゥ!!」
「おきましたわ〜」
情報解析によると、アレは“ペッパーフラワー”と言う香辛料の様な刺激が強い香りの花粉を出すとか。
呼吸する奴を無理矢理起こすのに、かなり適してるな。
それじゃあラニを手に持ってと……。
「はい助祭様こちらを見てくださいね!放って置くと大変なことになりますよはいはいはい!!」
「な、何だ!?何を……」
最初は起き抜けにとんでもない勢いでまくし立てられて、混乱状態に陥って俺が指示する通りに見た変態助祭だが、暫くして瞳から光が消えて虚ろな表情になって行く。
これがラニの新能力の1つ“電脳心握”だ、所謂渦みたいなスマホの画面見せて強制で催眠術かけるアレである。
ただし神器としての能力の場合、画面からは神聖性の乗った特殊な電波が出ている為“ガチ”である。
しかしコレだけだと一時的になるらしいので、“永続”となると更に魔力を消費して……。
「はいこれを耳に嵌めてくださ〜い」
「分かり、ました……」
言われるままにラニから出たイヤホンを着ける、これで永続的に催眠の暗示にかかるわけだ。
俺はラニを通して必要な事を伝えていく。
「貴方は呪いと聖女と私に関する全ての記憶を忘れ、ラミト教の助祭でありながら同士を傷つけた事を悔やみ罪を受け入れ改心し、幼い子ではなく同年代位が好みになりなさい」
「はい、分かりました……」
「では眠ってください、起きたら先程言った通りになりますよ……よし、じゃあ次」
『……』
何だろう必要だからやってるのに、周りからドン引きされてる気がする。
いや、やってる事えげつないのはわかってるけど……。
「流石御主人様と神器さん、何でも出来る!」
「お兄さん、クールだね」
「あゆむさまはいたくしない、やさしいかたですの〜」
あっ、これでも受け入れてくれそうな方々いたわ。
少しだけ救われた。
*************
あの後は衛兵詰所に“改心”したザカリー助祭の一味とボロボロのサイラスを連行して、ホレス司祭と共に報告と謝罪等の方を行った。
無事罪人達の受け渡しが終わり、衛兵さん達は「今回の件は自分達の未熟さも痛感した、今後はこの様な事が無いよう精進するつもりだ」と衛兵隊長さんから男らしい言葉をいただけた。
そして現在は詰所で貰った依頼達成報告書と、ラミト教会ポール支部連名の感謝状は“ナイトランク冒険者アルフのパーティ”にとされた物を持って、マスタールームで報告中と言った所だ。
「アルフさん!大変お疲れ様でした!」
「まさかラミト教会で内部分裂たぁなぁ、随分な事に巻き込まれたなアルフよ!」
「はははっ本当ですよね、サイラス逮捕の楽な案件になるもんだと思ってましたよ」
報告書と感謝状には聖女や召喚者の名前は無いし、呪いや邪獣みたいな面倒な事柄も内容に含まれてない。
あくまでホレスさんとその部下の方々で、研究や指示書等の証拠共々内々に報告、信頼出来る教会上層部で対応する話となるだろう。
助祭ザカリーについても「実は熱心な軍神信仰者で、軍神派閥の帝国が負けそうで乱心した」みたいな扱いだ、まぁ俺が電脳心握したせいなんですけどね。
「ご無事で本当に何よりです」
「心配かけましたね、どうもこう言う星のもとに生まれたみたいです」
「でもしっかり指名依頼を達成出来ちゃってますから、アルフさんは凄いですよ!」
「ありがとうございます、ベティさん」
そう指名依頼を達成出来たのだから、通常受注依頼3回分クリアした扱いになったのだ。
あと2回と貢献度一定でビショップランク、頑張るぞ!
……ウォルターさんが何かニヤニヤしているぞ。
「良い雰囲気だな、このまま2人でしっぽり……」
「はっ!パパはそうやってもう!」
「良いじゃねぇか!有望株なのは違いねぇんだからよ!」
「アルフさんが良い人で優秀でちょっと愛嬌あるのは事実ですけど、まだそう言うのでは!」
「ほう、“まだ”ねぇ!」
「し、知りません!」
ここぞとばかりにイジる父親と拗ねる娘、家族特有のやり取りだなぁ。
……あれ、そう言えば。
「そう言えばウォルターさんの奥さんでベティさんのお母さんは、どちらで何やられてる方なんですか?」
「「────ッ!」」
あっ、今地雷踏んだか?
やらかしたかもしれん……?
「その、母はですね」
「昔オレのパーティメンバーの1人だったが、両目にポーションで治らんレベルの怪我を負っちまってな……限界感じてたオレと一緒に引退した後は、無理しない範囲で生活してる」
「そう、でしたか……」
ガッツリ地雷やった、どないしよ……。
『アタシ達の力使えば治せね?』
『マスターが望むなら、ボク達やるよ?』
そりゃあ能力を使えば治せるだろうけど、良い人達とは言え安易に正体バラすのも……。
もう少し距離が縮まって互いに心から信頼出来るって感じてから、話振ろう。
まだ早い気がする。
『了解だし!』
『マスターがそう言うなら!』
「すみません、踏み込んだ事をズケズケ聞いちゃいまして」
「いえいえ!純粋に友好的に興味を持っていただけと言うのは、私達も分かってますから」
「そうだぜ、アルフが気にすることじゃねぇ!今後も気にせず仲良くしてってくれや!」
「はい!」
思わぬ事実を知った。
いつか正体を明かせる時に、完璧に治してあげよう。
無事に手続きと報酬支払いとカードの返却を終えて、マスター親子と別れた。
皆は一足先に宿に帰ってるし、俺も向かうわけだ……。
「それじゃあ今から宿に帰るけど、今日だけとは言え本当に一緒に来るの?」
『生お兄さん生活の、空気を感じたい、そしてまだここにいたい』
デミガーゴイル君と“精神世界”にいる、小五ロリ聖女“エリザベス・オリスト”ちゃんと共に。
小五ロリ→ガッツリ子供だが当人は大人ぶりたい思春期、悟りの始まり
本が薄くなる→もしかして“同人誌”
スマホの画面見せて強制で催眠術かけるアレ→地球では時間停止と並び、1割は本物が存在するらしい




