電脳水筒と幼女と逮捕
マスタールームから戻って、一旦宿屋に戻った後ウチのメンバーに事の説明をしたらこちら。
「直接どうこうする機会に恵まれなかった、コテンパンにしてやるわ!」
「漸く尾を見せましたな、あの愚か者が」
「アユムさん、今回は私も本気でやっていいですよね?」
「つぎはおねむじゃすみませんわ〜」
「ワタシそんな悪い獣人がいるなんて知らなかった、責任は取るよ……後悔させてやる!」
「ボクならどんな“拷問”染みた目にも合わせられるよ、何がいい?」
「アタシアイツをとことんやってやるわ、再起不能になってもらうし」
皆めっちゃブチ切れてて草。
しかしそれだけ溜め込ませてたのは、ただの酔っぱらいと放置して来た俺にも責がある。
ちゃんとツケは払ってもらうからなぁ〜、サイラスゥ〜!
「しかし感知能力では、あの男レベルの実力を持つ冒険者は大多数引っ掛かりますな……」
「冒険者ギルドの総本山ですからね、人口が多すぎます」
「実際それで隠れられてる側面もある、やっぱ相棒達の出番だな」
「ボクの妹よ、あのコンボで行く!」
「ええ、良くってよ」
ノリノリで発動したのはラミの新能力の1つ、電脳探査だ!
魔力をコストに“知覚範囲”を大幅拡大、どうやら今の成長状態ならこの領都ポール全体を行ける!
電脳探査の場合デクスターさんの感知より詳細な情報は得られない、だがそこにサキの情報解析を加えれば!
「すげぇ!分かる分かる!」
「これ範囲の広げ方次第では、ダンジョンも丸裸だもんね!」
「控えめに言って“チート”だし!」
「流石御主人様と神器さん達!」
無関係の人の情報まで知っちゃうのは申し訳ないが、これで目標の場所は特定出来、た……?
「どうしたの、アユム?」
「潜伏場所が“ラミト教会ポール支部”ってなってるんだよ」
「「ええ!?」」
「なんですと!?」
「ま、まさか協力者は“ラミト教”の人間だと?」
「はわわ……」
その可能性が高くなった、何故サイラスがと思うがそれならばアイツが中々捕まらなかったのも納得行く!
繁神信仰最大国家の中でそんな事態が起こるってのは、流石に予想外だもんな!
とにかくより深堀りしてみよう、何々……。
────は?
「……は?」
「マスター!」
「主!」
「ああ、これはすぐに向かうぞ!」
「御主人様、急がなければならないほどの事態に?」
「ああ!」
これは一刻を争う事態だ、それは!
「神聖な幼女の貞操が、変態助祭でヤバイ!」
「「「「は?」」」」「ほわ?」
仕方ないじゃない、そうとしか言えんのだから!
───────────
一方その頃……。
迷宮領都ポールにて、繁神を信奉する者達の場“ラミト教会ポール支部”は緊迫した空気に包まれていた。
この場を支配していたのは自らの欲望を満たすため配下と共に行動を起こした助祭“ザカリー”、彼は“ラミト教”に籍を置きながら軍神信奉者でもあった。
「司祭殿、いい加減彼女を結界から出しては貰えんだろうか?」
灰色の髪をかき上げながら、笑顔で言う彼に対して傷付いて膝をついている司祭“ホレス”は毅然とした態度で返す。
「お出しするわけが、ないでしょう……“聖女様”に手を出す等、言語道断だ……ッ!」
ホレスの言う通りザカリーの目的とは、ラミト教で唯一“神託”を授かれる神聖な存在“聖女”を犯す事にあった。
既に倒れ伏したホレスの部下達に目をやり満足げに、ザカリーは語る。
「リーデン帝国は敗戦続き、軍神信仰の弱体化は私としては認め難い事実だ……ならばラミト教の求心力の源でもある“聖女”を穢せば、神託の説得力も地に落ちる!」
「愚かな……そんな事をすれば、ますます軍神信仰は……!」
「蘇るさ!それにそれだけではない!」
結界に守られながら瞳を閉じ祈りを続けている、ツーサイドアップの紫髪が愛らしい幼い少女の前に近づき、ザカリーはゆっくりと両腕を広げる。
「初めて拝見する機会があった時、運命を感じたのだ……この方こそ俺の子を産むべき存在だと!」
「……狂っている」
「何とでも言え、それが真実さ」
聖女を挟んで睨み合う司祭と助祭、その隅でサイラスは震えていた。
「ど、どうなってやがんだよ……」
彼はザカリーに“手駒”になると脱走を幇助され、良くわからないが逃げられるならばとついて来ただけであった。
こんな事態に巻き込まれるのは、彼の頭では想定の範囲外だったのである。
「やれやれホレス司祭殿はしぶとい、ではそろそろアレを出しましょうか……おい」
「はっ」
「お、おい何すんだよ!?」
ザカリーが指示を出すとサイラスを捕らえ、配下の1人が小箱を持ってきた。
その中には、“黒い液体”が内部に収められた注射器が入っていた。
「あれは一体……!?」
「やれ」
「はっ」
「や、やめろぉ!!」
サイラスは注射を刺され、その“黒い液体”が体内に入っていく。
ザカリーは得意げに話し出す。
「かつて帝国で呪いを自在に操る“呪術師”になろうと研究していた狂った男がいてな、結果は無惨な物だったがその研究資料は回収させて貰った!」
「ま、まさか……!」
「呪いはそのままでは操る事など不可能だ、しかし魔具でそれらを圧縮!液状化し清水と混ぜ合わせることである程度の成果が出せると分かった!!」
「う、ウググウウウゥゥ……ッ!オオオオオオオオォォッ!!」
先程まで怯えてジタバタするしか無かったサイラスは、瞳を赤く染め黒いオーラを出しながら咆哮を上げる。
「何と悍ましい……!」
「これが我が研究の成果、“邪獣”だ!肉体への負荷は大きいし獣レベルまで知性が下がるが、凄まじいパワーを得られるのだ!!」
実際に先程までのサイラスと比べて危険な力を感じ、額から汗が垂れるホレス司祭。
「このままでは……!」
「さぁやれ!ホレス司祭を食い殺せ!!」
「グゥウウッ!」
まさに絶体絶命のピンチ、その時幼い少女は瞳を開いた。
「彼が、来てくれる」
「何?」
ザカリーが訝しんだ刹那、急に動きが止まった邪獣と化したサイラス。
今にも襲いかかろうとした構えのまま、震えて動けていない。
「何だと?邪獣動け!何故動かん!?」
「お邪魔しまーすっ!!」
その声と共に厳重に閉められていた筈の扉が吹き飛んだ。
吹き飛んだ扉に咄嗟にザカリーは避け、避けれなかった配下に直撃し気絶させた。
焦ったザカリーは問う。
「何者だ!!?」
「あ?神の使いだコラ!!このエセ聖職者が!!!」
唖然とするザカリーとその配下、飛んできた水筒が出した霧を受けて傷が回復して戸惑うホレスとその部下、そして彼を見て微笑む幼女。
「やっと、会えた」
*************
派手にやると後で色々面倒だろう、しかしそれ考えて手遅れになるといけない。
と言う事で人員が配置されて封鎖されてる入口を、正面からぶち破って行った。
デクスターさん、コーデリア、アリスが無手で全員ブチのめし。
左右から来てた番犬代わりの魔物達は、サジェリアとエレンが排除。
扉の向こうで暴れようとしているサイラスを電脳干渉で止めて、電脳契約でテイムした“デミガーゴイル”君を“精神世界”から召喚して扉を吹っ飛ばさせた。
俺の素のパワーじゃ吹っ飛ばせないからね、仕方ないね。
「何者だ!!?」
「あ?神の使いだコラ!!このエセ聖職者が!!!」
事情も把握済みだから、とりあえずインパクトある事を言って相手の頭から冷静さを奪う。
その隙にサキが司祭さん達の治療を、デミガーゴイル君は幼女聖女の守護に入ってもらう。
俺は今回の真に裁くべき野郎に指を差す。
「お前には3つ罪がある」
「な、にを……?」
「サイラスとか言う小物の脱走幇助をして手駒に使った事、自らの所属する組織を乱して多くの者を傷つけた事……そして何より、何よりなぁ……!」
そう、他にも許せんが1番許せんのは……ッ!
「YESロリータNOタッチ、だろうがぁ!!」
確かに俺は女好きだ、だが倫理感はある。
地球ではまだ未成年でも、最低限この異世界カノスにおける成人で愛があるなら分かる。
だがこっちでも未成年ってのは、流石にあかんよなぁ!?
しかも独り善がりなただのド変態だ、これは許されざる!!
「……???」
分かるまい、お前には。
そうでなければこんな事は起こしてないし、軍神信奉者に自分勝手な理不尽野郎が多いのは経験済みよ。
勿論、中には良い人もいるだろうけどさ。
「よ、良く分からんが!邪魔をしてくれたな!コイツを殺せ、邪獣よ!!」
ああ、混乱状態から戻ってきたみたいだね。
でも遅いんだよ。
「終わってるよ、もう」
「は?」
「う、うぅ……俺どぼじて……?」
サイラスの体内にあった“呪圧剤”とも言うべき代物は、ラミが既に負の念を退治して力の塊を取り込んでいる。
邪獣と化したサイラス先輩は一瞬掛かった負荷でボロボロ、しかし生きてる辺り長生きするタイプだ。
「ば、馬鹿な!ありえん、こんな事が!?」
「総員、確保!!」
「「「「うおおおおおおおっ!」」」」「ですの〜」
「お、応戦せよ!」
『は、はっ!』
「私達も見てるだけではいられん!彼らに助力するぞ!」
『はい!』
こうなると助祭と配下VSウチのメンバー+司祭の仲間で圧倒的な戦力差があり、俺が手を出さんでも終わりそうだった。
だからデミガーゴイル君にはサイラスをお願いして、俺は助けに来た子に挨拶に行った。
「ご無事ですか、“お嬢さん”?」
「それ……嬉しい、です」
それ?
……もしかして、コーデリア関連の事知られてる?
「神様に、教えてもらってたの……素敵な話だった」
「オオウ」
ラミト様!?
神託でなんば話よってんですか!?
参る。
「貴方はアユム・ツツイ、でしょ?」
「そうです、はい……では────」
「あれで聞いて欲しい、あれ」
何そのファンガみたいな反応、少女漫画とかの恋愛描写好きそうな聖女だな!
しょうがねぇなぁ……。
「どうかお名前をお聞かせ願えますか?」
「ああ、いい……私は聖女“エリザベス・オリスト”、ただのと言えないのは残念」
そう言ってエリザベスは、ちょいちょいと手をこまねく。
何かとんでもない事やるだろうと思いつつも、逆らわずに屈む。
瞬間意外に強い力で急に引き寄せられて、俺は頭を抱きしめられる。
甘い良い匂いがする……これが、ぬくもり。
っていうかタッチが俺からじゃなきゃセーフ?アウト?
「いつか大きくなったら結婚してね、“お兄さん”」
俺、今夜死ぬかもしれない。
コンボ→一発が弱くても組み合わせでとんでも無い事になる、カードゲームみたいに後から発掘される事もある
貞操→純潔は尊ばれるべきだが、それが本人の価値ではない
聖女→その神聖性故に、結ばれるのもまた神聖性を持つ者が望ましいとされる




