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電脳水筒と昇格と依頼

最近改めて自分は幸せ者だな、と感じてきた歩だ。

今日は手続きをやった物の結果がまだだった、“冒険者ランク昇格”についてギルドに確認に来た次第。

おっ、ベティさん来たな。

 

「おめでとうございます!アルフさん、コーデリアさん、デクスターさん、エレンさんのナイトランク昇格が確認されました!」

「ありがとうございます!」


昨日は色々と出来事が目白押しだったが、今の確認を持って目標完全達成というのがこれで確認されたな。


「つきましては是非お話したい事がありまして、アルフさんには一緒に来ていただきたいのですが……」

「話、ですか?」

「ええ、次に控えるビショップ昇格にも関係がある事ですので」


それは流石に聞かないと、すぐにダンジョンに潜るつもりだったが予定変更だ。


「分かりました、パーティメンバーも同席必須ですか?」

「いえ、寧ろリーダーのみで来ていただいた方がよろしいですね」

「なるほど……ではメンバーに知らせて来ます」

「ありがとうございます、あちらでお待ちしてますね!」

「はい」


この感じ、余り漏らせん類の話も混ざるのか?

出来れば良い知らせだけ聞きたいが、そうじゃない事もありそうだ。


『マスター、フラグって奴だね!』

『アタシも面倒事の臭いがプンプンするし〜』


姉妹も感じ取っているのだな、待ち受ける何かを!

まぁ、多分何とかなるさ……恐らく、メイビー。

メンバーの皆がにベティさんから俺単体でお話があると言うと、デクスターさんとサジェリア以外が悩ましい表情をした。

違うから、絶対そんな色気ある話じゃないって!

とにかく伝えたので、背中が針の(むしろ)だがベティさんの元へ向かった。


「ふふふ、おモテなんですね」

「相応の苦労もありますがね」

「そうですか、ですがそれぐらいの方でこそ頼り甲斐があります」


マジで何があったの?

そう思ってると案内されたのは警備が厳重な部屋。

看板には“マスタールーム”と書かれている、ひょ?


「マスター、アルフさんをお連れしました」

「おうベティ来たな!入ってくれ!」

「失礼致します」

「失礼します〜……」


マスター、だと?

つまりファンタジー物あるある、ギルドマスターからの呼び出しが発動したのか!?

中へ入るとサラサラ金髪金目犬耳尻尾のダンディな男がおった。

……おや?


「良く来てくれたな、お前さんが最近ベティお気に入りの色男アルフか!」

「えっ」


色男?

24歳の元無職捕まえて無理が……あれ、ベティさんが挙動不審だな?


「ま、マスターそう言う事は……」

「何だよ人の目も耳もねぇんだから、“パパ”って呼んでくれても良いじゃねぇか!」


えっ、ええッ!?


「パパ……?」

「────ッ!」


めっちゃ真っ赤、珍しい!

そして意外な父への呼び名……ッ!

というかマジでそう言う事なのか、ベティさんは冒険者ギルド本部のマスターの娘!

そりゃあ只者じゃないわな!


「い、今はそう言う話じゃないでしょう!……パパ」

「へへへ〜、悪いな!つい楽しいと話脱線させちまうんだわ!」

「いえいえ、お気になさらず」


まぁノリの良くてお話好きな人ほど、こう言う事あるわな。

俺はそのまま話合わせるタイプ。


「助かるぜ、そんじゃそこ座ってくれ!ベティはアルフの隣が良いか?」

「た、立ってます!」

「そうか、残念だったな!アルフ!」

「ええ、振られました」

「アルフさん!?」


こんな風にね、相手が嫌に感じる範囲を見極めるのが大事。


「ハハッ!良いね、ノリが良い奴は好きだぜ!」

「俺としても、マスターとはいい酒飲めそうな気がしますよ」

「そりゃあ、楽しみだ!」

「ほ、程々にしてくださいね……?」


酒強いのかな?

俺は神器が2つも魂に融合してる影響で、100%悪酔いしないから大丈夫だが。


「さてと流石に本題に入るか、ベティ!茶を入れてくれ!」

「もう入れてます」

「ありがとうございます」

「サンキュな」


これは香り高い、いい茶葉なんだなぁ……。

一度飲んで、気持ちを切り替えて話が始まった。


「改めてオレはウォルター・デズモンド、この冒険者ギルド本部のマスターであり、元クイーンランクの冒険者でもある」

「クイーンランク!」


上から2番目、強者特有の雰囲気あるもんな。


「つまり男爵クラスの権限あるって事ですか」

「おうよ、つまりベティも男爵令嬢みたいなもんよ!」

「ベティ・デズモンドって事ですもんね」

「ま、まぁ……そうと言えます」


恥ずかしくてモジモジしてる、冷静な仮面を被ってるだけでプライベートだとこんな感じなのかな。

大変かわいいです、ギャップ萌え。


「さて……ナイトランクの昇格までは、特に条件がないのは知ってるよな?」

「ええ、ギルド貢献度さえ稼げるなら行けましたね」

「だがビショップランクには条件がある、それは“依頼の達成”だ」

「“依頼”、ですか」


そう言えば受付の方でも、冒険者以外からの受付あるしな。


「ナイトランク以上の冒険者はある程度の信用を獲得したとして、他所から貰った依頼を斡旋される権利を得るわけよ」

「なるほど、下手な魔物狩りよりはそっちの方が稼げるみたいな側面ありそうですね」

「そうだな、実際ダンジョンから依頼に切り替えて、それで食ってるやつもいる……そればかりだと貢献度が貯まり辛いから、中々昇格出来んがな」

「そうですか、ウチは仲間が優秀なんで貢献度は困らなさそうです」


俺からすれば狩れば狩るだけ儲かるから、そっち進む気ないけどな。


「そうか!ハハッ、是非その調子でいてくれ!」

「その感じ、切り替えてダンジョンから離れる冒険者多いんですか?」

「あぁ、情けないことになぁ……なんの為の“冒険者”なんだか、ギルドがシステムとして依頼を出している以上仕方ない話だがな」


多分依頼に依存したシステムを作ったのは、ウォルターさん以前のマスターで気に入らなくても根付いている以上、簡単に撤廃出来ないって感じなんだろうな。


「そして今回の話に繋がるんだがよ、これに関してはベティのが詳しいだろうし説明頼むぜ?」

「分かりました……アルフさんの為になるとは言え、頼みたくは無かったのですが」

「ん?」


何か嫌な予感するな、ベティさんのが詳しいってのがミソだ。


「今回は冒険者ギルドより指名依頼となります、これにより昇格に必要な条件である5回の依頼達成の内、依頼3つ分の達成扱いとなります」

「おお、でもなんか裏があるんですね?」

「……既にギルドから除名・指名手配しましたが、元冒険者サイラスの衛兵詰所脱走と、その際に多数負傷者が発生しました」

「は?」

「だから頼みたくなかったんです……」


さ、サイラスウウウゥゥッ!!

何処までやらかすんだお前ぇぇえええっ!!!


「どうやら協力者がいるようで、領都ポールからは出ていないと見られていますが、中々捕まっていません」

「そこでベティが実力者揃いで期待の新星のパーティ、そして色男のリーダーがいるって言うから指名依頼としちゃどうかってな!」

「そう言う事でしたかぁ……」


最早ツッコミ入れる気力ないよこれ。

どうするかで言えば、全力でボコして逮捕したい所存(しょぞん)


「とりあえずサイラスを捕まえれば良いんですね」

「おう、可能な限り生け捕りで頼むぜ!」

「死んで片付けられても嫌ですからもちろんです、しかし気になったんですけど」

「おっ、ベティにか?」

「えっ」


いや、そこまで緊張する案件じゃないから安心してほしい。


「結局ウチのパーティメンバーは聞くことになりそうですけど、良いんですか?」

「あっ、そこは大丈夫です!ただ人数も多く実際に話を聞いた時に、意見の相違でトラブルも多そうですから……」


ああ、そこが気になったのね。


「問題ないですよ、と言うかサイラスに対する怒りを発散するには良いかと」

「……冷静に考えたらそうですね」

「余計に気を遣ったな、ベティ!」

「ベティさんも奴にいらんストレスかけられてましたし、仕方ないですよ」


ため息を吐きながら、ソファーに座るベティさん。


「引き受けていただけるならば、お願いします……私の分までやっちゃって下さい!」

「ふふっ、承りました」


そうして彼女の手を握る、やわすべ。


「へぇ〜、ベティはお気に入りならそこまでいくか?」

「パパ、何を言って……」

「……」

「……ああっ!」


そうなのだ、座ってきたソファーは俺が座ってる方の奴だ。

つまりかな〜り距離が近かった、ありがとうございます。


「すみません、すみません……!」

「いえいえ、寧ろ役得ですよ」

「ほう、脈アリだぞ!良かったな!」

「パパ!!」

「ハハハハハッ!」


バシバシ!と身体を大きな音で(はた)かれているが、ウォルターさんはビクともしない。

サスガダァ…。

この後は依頼書の手続き等を済ませて、何事もなく終わった。


「それじゃアルフ、いい知らせを期待してるぜ」

「アルフさん、ありがとうございます」

「ええ、ウォルターさん、ベティさん、また」


冒険者ギルド本部のトップ親子か、今後も縁が続いてきそうだな。

ビショップ→僧正を意味する、地方ギルドにおいて最強はこれの上であるルークランクが基本


ダンディ→一般的に言われる大人の男の格好良さでアユムは用いていたが、本来は意味が異なるので使う時は注意が必要


色男→女性を魅了しやすい色気がある人物、尚イケメンである必要はない模様

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