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黒豹と御主人様

アリス視点です。

ワタシは強い女性になりたかった。

母上は父上から愛されていた、でも強くなかった。

だから父上が体調を崩してから、まるで連れ添うように倒れた。


『ああ、早くあの方の元へ行きたい……』


それをうわ言のように何度も呟きながら亡くなった、医者は心臓の病気だって。

兄上が『いつでも頼るんだよ』と言ってくれた、姉上が『共に頑張ろう』と言ってくれた。

2人は強い、技術だとか身体ではない……心だ。


『強くなりたい……!』


その気持ちに従い、ワタシは鍛え続けてた。

兄上と姉上みたいに、王族として相応しい存在になりたいって。

例え生まれが周囲から望まれた物で無くても、胸を張って生きれるって。

でもまだ弱くて未熟な心に、周りの目が責め苦を与えてくるんだ。


『お前は獣人だから弱いんだ』

『うるさい』

『お前は庶子だから弱いんだ』

『うるさい、うるさい』

『お前の事なんか誰も望んでない』

『うるさいんだよ!』


そう言う物を振り払いたくて、我武者羅に鍛えてたんだ。

アルト機リーデン帝国って場所と、ワタシの国が所属してる連合は戦ってる事を知った。

ならワタシが戦場で頑張れば、強くなれる?

皆が認めてくれて、ワタシは胸を張れる?


『アリスはまだ成人ではないが、実力は確かだし従軍と言う形なら問題ないさ』

『私もそう思う、父が戻れるか絶望的な今我らの一致団結を見せるべき時かと』


ワタシは2人の言葉を本当に心から喜んだ、兄上と姉上と一緒に手を取り合えたならきっと……!

だけどワタシは甘かったんだ。


『アリス殿下、王太子殿下より激励の品をお預かりして参りました』

『兄上から!?』


完全に油断していたのだ、兄上からの物なら大丈夫だと。

“他人の思惑”があると言うのを、すっかり忘れていたんだ。


『黒い、宝石?』

『では失礼』

『えっ……な、何、これ!嫌っ!嫌ァ!!』


指輪の宝石から溢れた黒いモヤに、私は飲まれた。

それから兄上達が大急ぎであの首輪を着けてくれなかったら、どうなっていた事か。

でもこのせいで……。


『呪いがある以上、戦場は任せられん……すまない』

『アリス、私がお前の分も頑張ってくる……!』


ワタシは兄上と姉上の期待を裏切った、油断しちゃったごめんなさい……。

声が聞こえる……。


『情けない、しょせん考える頭のない獣人だ!』

『いや……』

『卑しい身分のせいであろうな、この程度対処できないとは』

『いやなの……』

『アレは“いらない”、そうでしょう?』

『イヤアアアァァ……ッ!』


これが本当に言われていた言葉なのか、或いは呪いがそう囁いたのか……私には分からない、分かりたくない。

だから深く考える事を止めた、言われるがまま、なされるがまま……そうして気がつけば奴隷になっていた。


『……はぁ……はぁ』


何も、何も分からない……ただ苦しい、辛い、怖い……!

きっとずっとこのままなのだ、父との再会を望みながら死んだ母上と同じ様になるんだ……!


『誰か、助けてよ……』


助けなんて来ない、呪われて奴隷に落ちて……こんな望まれない女、誰が助けてくれるんだ。

そんな事をしてくれる人がワタシの前に現れてくれるはず、ない……!

……そう思っていたんだ。


『よう、どうやら助けてくれるってよ』

『……?』

『“本物”だよ、色々と突き抜けてる……“英雄”って奴かね』


御主人様と出会うまでは。


『それで本当に大丈夫なんだな、見ての通り呪われている』

『ああ、この首輪は?』

『呪いを抑える魔具だが、周囲に被害が出んだけで当人にとっては気休めだろうな』

『……』


会長さんの言う通り、ワタシ個人にとって首輪はなんにもなってない。

だからいい顔をしないだろうって、俯いた。

……でも彼からは、何もワタシを否定する言葉が出なかった。


『まず彼女は血筋が良い、父親は亡くなっているが先代オリファント国王だからな』

『はい!?』


わっ、すっごい素直な反応だ。

と言うか、分かってて買わせようとしたんじゃ?


『母親は先代オリファント王が可愛がっていた愛妾の獣人でな、つまり庶子と言うわけだ』

『ふーん、なるほど』

『……ふっ、お前はそうだろうな』

『おうともよ』


庶子なのに、ガッカリしてない?

獣人なのも嫌じゃないの……?

少し顔を上げてみる、彼の顔は平然としてた。


『今代国王のアルヴィン・ド・オリファントが即位する前に先代が危篤となり王位の事で揉めた、その内輪揉めの最中にこの子は呪いに憑かれた』

『万が一ってか?』

『そうだ、まぁ他の王族達はそんな事考えて無かったろうがな』


兄上は父の崩御から即位してる、でも私の呪いに関わってるはずない。

姉上だってそう、他の色んな人間の思惑があってこうなったってだけ……とても辛い。


『そんな訳で諸々都合で奴隷落ち、呪いさえなければ50,000,000リンクが最低ラインだったな』

『そりゃあそうよな、納得だわ』


納得、なの?

奴隷に50,000,000リンクは一般的には高いはず、ワタシにそんな価値あるの?


『呪い有りなら10,000,000リンクだな、買うか?』

『買う!!』

『────ッ!!?』


嘘ッ!?

安くなっても高いはず、普通悩んだり……!

まして呪われてる獣人で庶子なんて、断って当然の話だよ!


『クククッ、迷いがねぇなホントに』

『ここで迷えばこの子を不安にさせる事になる、俺はそんなの嫌なんでね』

『……』


────ありえない。

わ、ワタシを不安にさせるのが嫌で大金を即決でなんて……!

理解が出来ず、飲み込めず、混乱したままワタシこの人に買われた。


『君の名前を、教えてくれないかな?』

『あっ……アリス』


彼に誘われて来た宿屋、そこで初めて聞かれたのが名前なんて……。

何が目的なんだろう、やっぱり奴隷だしそう言うことなのかな。

でも呪われてるワタシの身体なんて……。


『俺は筒井(つつい)(あゆむ)、異世界からの召喚者だ』

『……えっ?』


召喚者、召喚者……?

────召喚者って英雄のあの!!?


『“本物”だよ、色々と突き抜けてる……“英雄”って奴かね』


会長さんの言葉を思い出す、アレってそういうことなの!?

しかもその後神器を出し入れする所を見せられたり、水筒型の神器の“サキ”さんから出た聖水を飲ませてもらったりしたんだ!

凄いの、身体がすぐ軽くなったの!

“本物”なんだ!

ワタシを助けてくれるのはこの人が“英雄”だからなんだわ!!


その後は恥ずかしい事やちょっと不安になったりした瞬間もあったけど、英雄“アユム”様はワタシから呪いを取っ祓って下さったんだ!

もうすっごく軽くて、すっごく嬉しくて、とにかくすごく感謝の気持ちでいっぱいなの!

だからワタシは生涯を賭けてもこの恩をお返しするために、御主人様にお仕えするって決めたんだ!!






*************





「コーデリア!正面の“バルーンシープ”!」

「ええ!」

「アリス!右翼から“リザードソルジャー”達だ、抑え頼む!」

「はい!」


今日ワタシ達は御主人様がリーダーを務めるパーティで、ポールダンジョンへ潜っている。

目標は……。

①パーティメンバーのランクをナイトまで上げる

②ワタシの実力をチェックする

③3階層に駒を進める

となっていて、今いるここが3階層なんだ。


「二人共お疲れ様、どちらも負けず劣らずの活躍ぶりだったな」

「正直強いんじゃとは思っていたけど、ここまでとはね!アリス、期待してるわね!」

「ありがとうございます!ワタシ、精一杯頑張るんで!」


最初は6人で行って認めていただき、3人ずつで分かれる時に「私もう少しこの子を知りたいわ、組ませてちょうだい!」とコーデリア様が言ったことでこのチームになったのだ。

コーデリア様は何とリーデン帝国皇帝とハートリー王国の姫の娘、ワタシ以上に複雑な家庭事情があったらしい。

そして呪いで名を無くした者同士で、御主人様に救われた者同士でもある……すごく仲良くなれそう!


「さて次は……場所変えで、あっち行くぞ」

「オッケー、行きましょう」

「わかりました!」


このお2人といると兄上と姉上と一緒にいるようで、少し懐かしく感じる時がある。

でもワタシはもう大丈夫、自分が何をすべきか理解したから。


「キエエ……ッ!」

「魔物ッ!」

「急に湧いたわね、やる?」

「待った、俺がやる」

「えっ」


ご、御主人様?

これくらいの奴ならワタシでもやれるし、御主人様の手を煩わせる様な事無いのに……。


「アリス」

「あっ」

「周りに丁度人がいなくてな、ラミの能力実験がしたいんだ……だからやらせて欲しい」

「は、はい!」

「いい子だ」

「────ッ!」


御主人様にワシャワシャと頭を撫でられながらそう言われて、身体の中を何かがゾクゾクと駆け巡る。

これ、何だろう……変な感じする。

でもワタシすっごく、喜んでる?


「女たらし」

「でも〜?」

「はいはい、大好きよ……んっ」

「んむっ」


────あっ。


「ラミ、電脳干渉(ハッキング)

「ギキッ!?」

「それってそう言う風に、動きも止められるのね」


すごい……けどそうじゃなくて!?

あれ、お二人ってそう言う関係……?

ってコーデリア様が耳元に……。


「言っておくとサジェリアや、エレンともそう言う仲だから」

「ふぇっ!?」


つ、つまり御主人様ハーレム!

冷静に考えたら召喚者で本物の英雄たる御主人様なら、寧ろ作ってなきゃおかしいよね……。

う、うぅ……何かモヤモヤする……。


「アリスは成人してる?」

「最近したばかりですけど……」

「ならちゃんとお願いしなさい、アユムも含めて皆受け入れてくれるから」

「そ、それって……!」


ワタシも、御主人様のハーレムに……ッ!?

こ、今度はモヤモヤじゃなくてドキドキしてきた!

……で、でも良いのかな?


「本当に、受け入れてもらえるでしょうか?」

「もちろんよ、特にアイツは……『可愛い女の子と仲良くなりたいから』って理由でまだ手探りの中呪いに立ち向かった程なんだからね!」


そんな理由で!?

いや、英雄色を好むって聞くからおかしくないね!

なら……。


「ワタシも真の意味で仲間にしてもらう為にも、そして……御主人様と仲良くなりたいので、お願いしてみます!」

「オッケー、ちゃんと甲斐性があるんだから!女の子を好きにさせた責任はアイツに取らせるべきなのよ!」

「ん、何の話だ!?」

「こっちの話!」


……好き、ワタシは御主人様を?

じゃあ御主人様に褒められて撫でられたらゾクゾクするのも?

ハーレムが存在したのに、知らされずにモヤモヤしてたのも?

そこに参加出来るかもと思って、すっごくドキドキしたのも?

……そっか、そうだったんだ。


電脳干渉(ハッキング)から新能力電脳契約(コントラクト)で、荷物持ちをテイムしたわ」

「キエエッ!」

「良く見たらそいつ“デミガーゴイル”じゃない、と言うかまた能力増えてたのね!」

「ラミは勿論サキだって成長途上だしな、アリスはどうしたん?」


御主人様がワタシを見てる、ワタシを救ってくれた英雄が。

……真っ直ぐに見てくれるその瞳、自分の気持ちに正直になっても良いんだね?

そして御主人様だけじゃなくて、パーティの皆さんが受け入れてくれるらしい……なら、我慢しない!


「御主人様、大好き!」

「おう!?」

「さっき、その……自覚して」

「……そっか、なら」

「ふわっ」


だ、抱きしめてくれてる!

御主人様の方から、こんなに暖かく優しく……嬉しい!

ワタシも抱きしめ返す、胸が幸せで満ちてポカポカだ。


「俺もちゃんと応えるよ、気が多いからヤキモキさせちまうかもしれないけど……絶対大事にする」

「御主人様ぁ……!」

「帰ったらもっとちゃんと話して、仲良くしよう」

「うん、うん……!」


母上が父上を愛して拘った理由が、ワタシには分からなかった。

でもやっと分かった気がした。


───────────


その日の夜、英雄と黒豹の姫は2人きりの愛を確かめる時間を過ごした。


彼女は自覚が無い事で不安定な状態であったが、(ようや)く足がついたのだ。

兄上→意外と甘かったり、お(いたわ)しかったりする


庶子→血統主義においては評価されない要素、しかし必ずしも優秀じゃ無いという証明でもない


契約→もし謎の白い生き物が現れても、決して話に乗ってはいけない

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