電脳水筒と購入と干渉
「アルフ、ここがウチの管轄である奴隷商館ドレッドと言う」
確かに看板に“奴隷商館ドレッド”ってちゃんと書いてあるな。
「デカいじゃん、金かかってるだろ」
「奴隷業は需要が高いし、人の管理には相応の広さがないといかんだろ」
「ごもっともで」
中に入ると清潔感があり整っている、スタッフも身綺麗で衛生的に気を払っている。
病気がある“商品”は提供出来ない、そう言うプロの矜持が感じられる。
会うスタッフに都度都度頭を下げられながら、奥の客間に通されると……。
「そちらのソファーに座ってくれ」
「ほいじゃ、お言葉に甘えて」
「しつれいしますわ〜」
おほっ、ソファーふかふか気持ちいい……えっ、何サキ。
これ魔物の素材使ってんの、3層以降の可能性高し?
……絶対館暮らしになったら、ウチの家具にも使おう。
「さてどの様な“奴隷”が良い?」
「ああ、評価高い獣人って言う……エイブラハムが“彼女”って呼んでた子が良いな」
俺の目的は初めから1人だからね、当たり前だよなぁ?
それに対してエイブラハムは目を丸くしたがな。
「……呪いの話を聞いた上で興味を持つことがあるか?」
「寧ろ呪いの話を聞いて興味が出たまであるが?」
俺がどうして“呪い”で興味持つか知らないと、普通は『ヤベー奴を連れ込んだか?』って考えてもおかしくない。
だがここはイケメガネのエイブラハム、出来る男なんだろ?
「クククッ、これは“本物”を引いたかもな」
「“本物”?」
おやっ、てっきり“おもしれー男”ってなるかと思ったに。
“本物”って何の話だ?
「いや、こっちの話だ……分かった、連れて来るから待ってろ」
「お、おう……サンクス」
エイブラハムは機嫌良さげに客間を出ていったが、一体……?
『マスター、召喚者な事エイブラハムにバレたかも!』
『ダニィ!?』
『じょうほういろいろもってそうじゃん、しょうかいちょーなんだし』
そう言うこともあるか!
どうする、エイブラハムって言い触らすタイプには見えんかったけど!
そこから万が一にも面倒な事態に────。
「ぎゅ〜」
「……サジェリア」
「だいじょうぶですの、あのかたはいいかたですわ〜」
「……おう」
────ふぅ、ついつい焦っちまったぜ。
確かに信用を大事にしそうなエイブラハムが、濫りに人の秘密バラす訳ない。
それにまだ“バレた”って確定したわけでもない。
「助かった」
「うふふ、いつでもたよってくださいませ〜」
サジェリア、君は天使だ。
ドリアードだった。
そんな風に彼女を撫でてまったりしていると、エイブラハムがやって来たぞ!
「今戻った……ふふ、ノックが必要だったか?」
「いや、大丈夫だぞ」
「うぇるかむですわ〜」
「そいつは上乗」
問題ないと分かると気にせず扉を開けて、見るからに元気がない獣人の少女と共に入って来た。
その右手の甲には奴隷の証である、“奴隷紋”と言うのが記されている。
この子の特徴は……大型猫科ってのは分かる!
『クロヒョウみたいだよ!』
『サンクス!』
黒豹獣人ね、黒髪で金色の瞳……しかし光沢がない。
まるで出会ってすぐのコーデリアみたいだ。
身長はキャロルちゃんと同じ155cmくらい、しかし胸部が身長と比するとかなりグラマラスだ。
呪いと胸の二重の負荷と言う意味でも、コーデリアとは共通している。
そして気になるのは、この“首輪”か。
「では座ってくれ、大丈夫か?」
「はい、大丈……はぁ……」
辛そう。
早くなんとかしてやりたいが、やらなきゃならん事をさっさと済まさないとな。
「それで本当に大丈夫なんだな、見ての通り呪われている」
「ああ、この首輪は?」
「呪いを抑える魔具だが、周囲に被害が出んだけで当人にとっては気休めだろうな」
「……」
俯く彼女は虚ろだ、よほど強い呪いなのだろうか。
「では商談だ」
「ああ」
「まず彼女は血筋が良い、父親は亡くなっているが先代オリファント国王だからな」
「はい!?」
いやビックリした!
サキ達はこういう時隠しておくんだもんな!
なるほど、王家の血なら評価高いのは分かる。
「母親は先代オリファント王が可愛がっていた愛妾の獣人でな、つまり庶子と言うわけだ」
「ふーん、なるほど」
「……ふっ、お前はそうだろうな」
「おうともよ」
人によっては評価下がる点だろうが、俺はぶっちゃけ可愛い獣耳尻尾で評価上がる。
「今代国王のアルヴィン・ド・オリファントが即位する前に先代が危篤となり王位の事で揉めた、その内輪揉めの最中にこの子は呪いに憑かれた」
「万が一ってか?」
「そうだ、まぁ他の王族達はそんな事考えて無かったろうがな」
庶子が王位にってのは、無理筋なの分かりきってるものな。
つまり下の暴走か……上がとことん暴走してた帝国とは対象的だな。
「そんな訳で諸々都合で奴隷落ち、呪いさえなければ50,000,000リンクが最低ラインだったな」
「そりゃあそうよな、納得だわ」
「呪い有りなら10,000,000リンクだな、買うか?」
「買う!!」
「────ッ!!?」
俺はその場で出した。
今後の色々考えてた費用として、俺が預かっていた10,000,000リンク分即決で。
まぁ、全員1,000,000リンクずつ別で持ってるからお金ないって事態はあり得んし大丈夫。
最悪1人でダンジョン行って稼げるし。
「クククッ、迷いがねぇなホントに」
「ここで迷えばこの子を不安にさせる事になる、俺はそんなの嫌なんでね」
「……」
呆然とする彼女は虚ろな瞳を俺に向け、震えている。
10,000,000リンクをその場で出してからずっとこの感じである、ドン引き……って事!?
「ああ、面白ぇ……ッ!クククッ、本当にお前“アルフ”かよ!」
「えっ?いや、物語の人物の話か?」
「おう、女の為に無鉄砲な事を平気でやるやつだ!」
「ワオ」
いや確かに女の子大好きだけど、基本命大事によ?
……あっ、もしかしてエイブラハムは俺が召喚者かじゃなくて。
「あんなのと同じ様な事する“本物”と出会えるとは、面白い事もある物だ!」
「はははっ、そりゃどうも」
エイブラハムは笑いながらお金を受け取ると、書類を持ってきた。
そこには彼女が俺に絶対服従とか、許可なく離れちゃいけないとか諸々の制約が書いてあるようで良く見ておく。
……問題ないな。
「こいつにお前の血印を捺せば、この子はそちらの正式な奴隷となる」
「分かった」
俺は指切ってその血で判子を押す、今魔力が出ていって書類に浸透した。
瞬間鎖が出た書類を介して、俺とヒョウちゃんの魂が繋がった。
成立だな。
「これで終わりだ、お疲れさん」
「お疲れ様、いい取引だったよエイブラハム」
「こちらこそだ、良ければまたこい」
「ああ」
客人と店主より、同年代の友人みたいな気安さでシェイクハンズ。
また会おうぜ、ブラザー。
俺はサジェリアと彼女を連れて、ドレッドを後にした。
そしてそのまま宿に戻ってきたのだが、まだ誰も帰ってないな……さて。
「君の名前を、教えてくれないかな?」
「あっ……アリス」
あらかわいい名前。
しかし奴隷落ちしたから家名はない、か。
ならそのままの彼女を受け入れるだけだな。
「俺は筒井歩、異世界からの召喚者だ」
「……えっ?」
はいここでカミングアウト!
サキとラミを紹介して、出し入れする所とか見せたりする。
サキから出した聖水も飲んでもらったが、身体の負荷が軽くなったのか表情が明るくなった。
瞳に段々光が戻り始めていた。
「さてと、どうやって呪いを倒すか何だが」
「またせいしんせかいですの〜?」
「実はラミが成長した時に、面白い能力に目覚めたからそれでやってみようと思うんだわ」
「ほうほうですの〜」
ラミは僅かな期間だが、神器の姉であるサキからも学習している。
それにスマホの持つ特性も有効的に編み出されたそれは、俺にとっても馴染みやすく手軽になった。
「まずはアリス、呪いが見えるように服を脱いでもらえるかな?」
「は、はい……」
恥ずかしそうに、しかし絶対服従の為に脱ぐ。
大変立派なお胸やキュッとしたお腹まで呪いが存在している。
流石にコーデリアほどじゃないんだな、よしよし。
「それじゃあ呪いを退治するから横になっててな」
「はい……」
「だいじょうぶですの〜、あゆむさまはしんしですわ〜」
「あ、ありがとうございます……」
必要な事とは言え流れが意味深過ぎて、緊張させちゃった。
サジェリアナイス。
俺はラミをアリスの呪いに向けて構えると、液晶画面には“ハック”と書かれている。
そうっ!
今回使う能力の名は電脳干渉だ!
「サキ、右の方だ逃げてる逃げてる……ラミ、良いぞその調子で撃破だ」
「わぁ、すご……身体が、楽に……!」
説明しよう!
電脳干渉とは対象とした何かに神器達を侵入干渉させて、様々な変化を発生させるのだ!
これによりアリスの身体へ侵入、呪いを遠隔で攻撃して楽々に撃破しているわけよ!
俺は消費してるのは魔力のみで、画面見ながら指示出しすればよりスムーズに終わるとお手軽なのだ!
『静ッ!覇ッ!』
『ちちんぷいぷい』
ノリノリな神器姉妹によって、本格的な戦闘すら要らずに呪いを祓ってしまった。
画面には大きな白丸が幾つかある、これは力の塊なのでドラッグしてラミに与えていく。
「ただいま、主〜!」
「ただいま、マスター!」
「おお、二人共お帰り」
とこのようにもう終わった、早い!
今後呪い案件はこれで対処しよう、ラミの成長確認も楽しみだ……。
だが先に何より、アリスだアリス。
「お疲れ様、気分はどうかな?」
「か、身体がすっごく軽いんですよ!」
「おう!?」
いつの間に目の前まで接近して、手を取られただと!?
これがこの子の真の身体能力!
そして凄く……おっきいです。
「嬉しい!ワタシもう誰も助けてくれないって諦めてて……本当に!」
「そうか、辛かったなぁ」
落ち着け、おっきいのは何度も見てるやろがい!
そうだとにかく服を用意するんだ、サキヘルプ!
「この恩は絶対に生涯を賭けて、お返しするからね!御主人様!」
「もちろんだ、期待してるよ」
「うん!」
この子の素はとっても純真で元気な子って感じだな、守護らなければ……。
サキでかした!
「さぁ、服を用意したから着替えを────」
「ただ、い……」
「……アユム、さん?」
「アユム様、アディオスです」
デクスターさん!?
「何やってるの……アユム!!」
「詳しく……説明して下さい。今、私は冷静さを欠こうとしています」
「オーマイガッ!!」
───────────
彼らは問題なく話は出来た物の……。
「アユムは放っておこうとおくまいと、ホイホイ女を連れ込む」
と言う認識が女性陣の中で固まった瞬間であった。
奴隷紋→ラミト教から発行されている特殊書類を介して、奴隷の右手の甲に刻まれるが痛みはない
黒豹→ヒョウの突然変異種、昔は特別強いとされた時代もあった
カミングアウト→秘密を打ち明けるのは勇気がいること、大胆な告白は皆の特権




