電脳水筒と奴隷商
あれから5日間俺達はダンジョンに通い詰めた。
第2層を情報解析でマッピングしながら、魔物を狩り、宝箱を開け、魔石をモグモグさせる日々だった。
装備に関しては前衛組はウルフコボルトの革鎧にアップグレード、後衛組はリベリーパイソンのレザーローブに替えた。
宝箱から出たナイトランクのロングソードがかなり上質だったため、コーデリアはそちらに切り替え。
お下がりの剣を俺が貰った、コーデリアは大変嬉しそうであった。
稼ぎも増えた、もう少しでランクも上がりそう……だが。
「今日はお休みにしようかなって思います」
「そろそろかなとは思っていたわ」
「ここまで休み無しでダンジョンでしたからね」
「のんびりもいいですの〜」
「私も異存はありませんな、休める時に休むべきかと」
身体の疲労をポーションでどうにか出来ても精神的な疲労はどうにもならん、だから休むのは大事な事だ。
「あと今日は俺1人で出掛けようかと」
「「何故!?」」
「はわわ……」
「ふぅむ……」
皆、一緒にいたいって思ってくれるのは嬉しい。
だけどやっぱりこの世界来てから、自分の時間が無さ過ぎたとも思った。
「たまのプライベートな時間がですね……」
「気持ちは理解できます、しかし護衛は……」
「そこはボクらがいるじゃん!」
『あたしらならかくじつだし〜』
そうそう、俺には融合した相棒達がいるからな!
因みにラミは成長によるものなのだが、人格の形成がされたらしい……ギャルっぽく。
前任者が金髪ヤンキー越えてゴロツキ、世紀末帝国人や前科者サイラスとフラストレーション貯めてこうなってしまったのだろうか?
でも別に良い子だし、俺は一向に構わんけどな!
しかしこのふわふわな感じはサジェリアを思い出す、参考にしたのかな?
「でもでもやっぱり1人より2人いる方が、見た目に安心だし!」
「神器のお二人は信頼していますが、一見1人に見える状況はトラブルを招く可能性も!」
おおう、何としても1人で行かせたくない模様。
流石にこれは選ばないと、納得しなさそうだ。
しかしこのメンバーの中から……ッ!
ピーンと来たぞ!
「サジェリア、一緒に行こうか」
「はいですの〜」
「「「しまった!」」」
コーデリアとエレンはエスコートしなきゃだし、デクスターさんはコーデリアと離すと気になっちゃうだろう。
この様に誰か一人を連れて行くとなると色々と気を遣わないといけない、しかしサジェリアは例外と言える。
この子は俺の魂と繋がった使い魔であり、ドリアードは心に寄り添ってくれる種族なのでストレス無く過ごせる、護衛って意味でも不可侵の領域としての側面で隙がない。
「これで良いですよね?」
「おっしゃる通りで!……お嬢様、この手の事でアユム様には勝てませんぞ」
「残念、ならデートはまた別の機会ね!」
「ええ、私もアユムさんと“2人きり”でお出かけしたいですから」
うむ、いつかは埋め合わせしなきゃだな。
その為にもさっさと宿住まい卒業して、安定性を得なきゃいかんが。
……リフレッシュだけじゃなくて、土地のリサーチもしとくか?
*************
サジェリアを連れてポールに繰り出した、散策してる暇が無くてじっくり見れてなかったが活気あるわ。
俺の装いはレザーローブからパイソン柄ジャケットとデニムパンツに、もっとカジュアルな雰囲気になった。
サジェリアは素のドリアード状態で、ルンルンと隣を歩いている。
「あっ、ドリアードだ!」
「可愛らしいわね、おはようございます〜」
「おはようですわ〜」
見知らぬ親子連れもこの様に何の警戒もなく挨拶してくれる、和やかな空気で心地よい。
『マスター、ちょっといいかな?』
『どうした?』
『ボクの能力が反応していると言うか、あっちに向かって貰える?』
それはかつて神器ちゃんナビとして導いてくれたアレだな?
しかも今回は詳細なマップと、何かイベントが発生してるみたいなエフェクトが出てる。
『いいの?あるじはりふれちゅうっしょ?』
『サキのこれは大きなメリットあるからな、出来れば拾いたい』
『おけ、まぁなんとかなるっしょ』
ラミのこの感じ新鮮だ、惹かれるな……。
『よっしゃ』
『……ボクもイメチェンしてみる?』
『いや、サキはそのままがベストだから』
『じゃあ変えないね!えへへ、マスターのベスト……!』
その反応、助かる。
「サジェリア、念の為トラブルがあるかもしれんから心の準備だけしといてくれ」
「おお〜、かしこまりましたわ〜」
これだけで伝わる程度には絆もあるし、繋がりも伊達じゃない。
魔石を食べて強くもなったから、期待だな。
マップをミニマップに切り替えて、横目に……サジェリアを見るような形で確認しながらイベントらしき場所に進む。
……やっぱ情報通り、裏路地辺りなのね。
「だから獣人を“奴隷”として売るんじゃねぇって言ってるじゃねぇか!おお!?」
「客人、当商会は法に触れない全うな商売をしているのだが?」
おや、片方の声が凄く聞き覚えあるなぁ。
正確に言うとつい6日ほど前にトラブった輩みたいな声だぁ。
はい覗き込むとサイラスぅうううーっ!!
どんだけ迷惑千万なんだお前えええぇぇーっ!!
「しかも馬鹿みてぇに高い値段で売ろうとしやがって!獣人で金儲けとはふてぇやろうだぁ!!」
「“彼女”の能力を高く評価した上での正当な値段だ、寧ろ“呪い”が憑いているのだからお得なほどだよ」
────ッ!
サキ、今の情報は正確か?
『バッチリだよ!』
よし!
これは乗らなきゃな!
「生意気な!俺が成敗してやろうか!おお!?」
「法を犯してなければお前に迷惑かけたわけでもない人間に暴力振るおうって、何様なんだ酔っぱらいがよ」
「あ!?っててめぇ田舎者か!ここで合ったが百年目だぜぇ!!」
「サジェリア」
「とまれですの〜」
サジェリアが手を翳すとサイラスを蔦で絡め取っていく、強くなって使えるようになった能力の1つだな。
「ぐえええぇぇっ!?」
「ほう」
「そしておねむのじかんですわ〜」
今度は蔓を伸ばしていき、その先から紫の百合が咲く。
これはヒュプノリリーと言って、その香りの元となる物質に催眠・鎮静・鎮痛の効果がある有用な花である。
蔓から花を咲かせるこの能力も、サジェリアが新たに獲得した物である。
「があああぁぁ……ぐおおおぉぉ……」
「ナイス、サジェリア」
「やりましたの〜」
身長差があるから屈んでハイタッチしてると、拍手の音が響いた。
「素晴らしい、余りにスムーズな対応で感服した」
「いえいえ、お困り……と言うか面倒そうだったんで」
「ああ、全くその通りなのだがね」
推定“奴隷商”は嫌そうな顔でサイラスを見る。
「この手のただただ難癖を付けたがるだけで、取引をするつもりが無い輩は何処にでもいるのだ」
そう言って銀髪碧眼のイケメンは、眼鏡をクイッと持ち上げため息を吐く。
なるほど、出来る男だけど苦労人でもありそう。
「そしてこれは直感なのだが」
「はい?」
「貴方なら取引をする相手として、相応しいと感じたが……どうだろうか?」
「なるほど」
実際“呪い”と言う興味ある話題が出てたのが決定打になってクビ突っ込んだからな、その直感は当たってる。
手持ちで買える値段なら、即決でいくレベルだ。
「おっと名乗るのが遅れ失礼、僕はドレイク商会会長である“エイブラハム・ドレイク”と言う」
見た所俺と変わらん年齢で商会のトップか、絶対有能じゃん!
「俺は冒険者アルフ、こちらが使い魔のドリアードであるサジェリアです」
「よろしくおねがいしますのわ〜」
「……アルフ」
「え?」
どうした急に。
「いやすまない、祖国で有名な物語にそんな名前の人物がいたからついな」
「へ、へぇ〜!」
まさかこの男……いやよそう、俺の予感だけでみんなを混乱させたくない。
「それで取引をするとして、この男ですけど……」
「安心してくれ」
そう言うとエイブラハムはカード型の道具を出した。
「ナイトランクの魔具だ、この男の言動は全てこれに録音されている」
「おお、証拠バッチリ!」
「これですぐに取調べは終わるだろう、商会にはその後向かえばいい」
やっぱり有能だった、多分俺が来なければ別の手段で逃れてサイラス御用って寸法だったろうな。
何だかんだ来て良かった、サイラスを生贄して有益な取引にありつけるとか最高じゃないか。
「ではとりあえず一緒に来てくれるか……アルフ、サジェリア」
「了解です、エイブラハムさん」
「……いや、敬語は不要だ」
「えっ、わ、分かった」
「いいひとですの〜」
こうしてエイブラハムさん改めエイブラハムと、衛兵さん達の詰め所へ向かった。
事情聴取は大したかからずに終わり、無事に出ることが出来た。
サイラスは……今頃冒険者ギルドに連絡行ってるだろうな、スタッフさんたちお疲れ様です。
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その頃、ドレイク商会の奴隷収容部屋の一室で彼女はいた。
「……はぁ……はぁ」
首につけた魔具で呪いを抑えているが、やはり蝕まれる辛い感覚は消えないようだ。
「誰か、助けてよ……」
少女は待つ、穢れが祓われるその時を。
ギャル→オタクに優しいギャルって何だろう、そう考えたスタッフはアマゾンの奥地へと向かった
リフレッシュ→そうしようと出掛けて忙しい事になって余計に疲れる、あると思います
裏路地→人目に付きづらいトラブルのメッカ、地球でも異世界でも安易に近づくべきではない




