電脳水筒と信奉者と成果
「はっ!」
「おっ、起きたみたいだぞ」
「ドナルドいつまで気絶してるのよ!」
「うぇっ、あ、あれ……キャロル?」
彼らが先ほど救援した冒険者パーティだ。
前衛で盾持ちの槍使いドナルド、後衛で風属性魔法使いのキャロル。
ドナルドは身長170cmで黒髪青目、まぁまぁ鍛えてるな。
キャロルは身長155cmで濃い緑髪黒目、スタイルは中庸と言った所。
「って、貴方はあの時救援に入ってくれた方!」
「ああ、アルフって言う」
「本当に助かりましたアルフさん!……あれ、俺は何で気絶を?」
そこ聞いちゃいます?
「俺の魔法は雷属性魔法、しかもナイトランクのを使ったからな……多分それでだ」
「雷属性魔法を!しかもナイトランクまで使えるんですか!!?」
ドナルド君の瞳がキラキラと輝いている、まるで少年に戻っているようだ。
しかしそこでキャロルさんに引っ叩かれる。
「こらドナルド!アルフさんに失礼でしょうが!」
「す、すみません!」
「いやいや、こっちこそ気が利かなくて悪かったな」
あそこで一言入れてやれる程、気を回せるならもう少し賢く立ち回れたろうに。
難しい物だ。
「そんな事ありません!他の皆さんにアルフさんの事聞きました、このパーティのリーダーで全員から慕われてるって!」
「えっ!こんな綺麗な方々や強そうな紳士からも!?すっげぇ!」
「そうなのよ!だから失礼ないようにしなさいよ!」
「アルフさん、俺貴方を尊敬します!」
キラキラお目々も増えちゃったよ、そして後ろの人達はドヤ顔してるし。
『アルジ、サイコウ』
『さすマス!』
乗るな乗るな、その辺にしとけ!
「えー、兎に角この後なんだが……一旦一緒に行動するか?時間まだ余裕あるならだが」
「是非!」
「お願いします!コーデリアさんやエレンさんやサジェリアちゃんの話とかもっと聞きたいですし!」
おっとガールズトークも同時進行するんですかそうですか、まぁこう言う時は下手に混ざらんべきよな。
とりあえず一緒に行動する事は決まったし、狩り再開だな。
但し男女でチーム分けだ、メンツいすぎて暇になりすぎるからな。
俺、デクスターさん、ドナルドのメンズチーム。
コーデリア、サジェリア、エレン、キャロルのレディースチーム。
この2つで分かれて狩り再開である。
「アルフ、気を付けてね!デクスター、頼むわよ!」
「ええお任せを!」
「……コーデリアさんとデクスターさんって主従なんですか?」
そうだよな、ドナルド君はさっき起きたばっかだし。
「デクスターさんは精霊なんだよ、そしてコーデリアが契約主なわけ」
「マジっすか!?」
「ええそうですよ、まぁ基本は大っぴらにはしませんがね」
「なるほど〜!でも納得です!」
そう言ってデクスターさんにもキラキラお目々を向けるドナルドくん。
純粋だなぁ。
そのまま彼はタンク、デクスターさんが近接アタッカー、俺は魔法アタッカーとしてやっていく事になった。
……ここでどう言う事が起こるかと言うと。
「脇が甘いですよ!それでは敵に盾を抜かれますぞ!」
「はいぃ!」
「眼の前の相手ばかり見てはいけません!視点を広く!」
「すいません!」
はい、こうなります。
デクスターさんは今でこそ純剣士だが、元となった人物が過去に騎士だったそうでタンクもこなせる。
結果ドナルド君の粗が気になって師匠モードになってしまったとさ、まぁ確かにプロじゃない俺でもどこか危なっかしい気はしたけどね。
「我が猛り、その身に受けよ!サンダー!はい、1体落とした!」
「ナイスですぞ!さぁ、ドナルド!もう一度!」
「は、はい、デクスターさん!」
『新しい弟子候補が出来て、デクスターハッスルしちゃってるね!』
『ジイヤ、ゲンキ』
老いてますます盛んなりとは言うが、この人実際には行ってても10代……深く考えるべきではないな。
*************
数時間程やって、無事に狩りを終えた。
ドナルド君はお疲れだったが「実りのある時間でした」と満足そうだったからな、まぁ良かった。
キャロルちゃんの方はウチの女性陣と仲良くなってて「大変参考になりました」とこちらも満足そう、何の参考にするかは敢えて聞かなかった。
「何だかんだと荷物いっぱいになりましたね」
「大丈夫か?」
「はい、サジェリアが蔓で支えてくれてますし」
「だいぶちからつきましたわ〜」
そうだった、そうだった。
サジェリアがドリアードなのは周知の事実だから魔石パクパクさせてたし、その分サジェリアは強くなり荷物も減る。
減った分を貢献評価やお金になる素材でいっぱいにしたから、これは成果が期待できそうだ。
……因みにドナルド達が来る前に既に魔物の死体をいくつか回収してるから、装備等に変えられる物も用意できてる。
上乗だな。
問題なく本部に戻り、二人と別れてそれぞれ違う受付にはいった。
どこも並んでるなぁ、ってあれ?
「あら、アルフさん達おかえりなさい」
「どうもベティさん、今は受付ですか」
「はい、審査受付致しますか?」
「お願いします」
どうやら今日はこの時間にベティさんが受付か、人が多くて受付してるのが見えんかった。
俺はエレンから預かっていた荷物を彼女に渡し、メンバーの下へ戻った。
「後はどれぐらい評価されるかよね」
「素材が大きく傷つく方法は取っていませんが、どうなるでしょうか」
「たのしみですの〜」
女性陣はのんびり待っているご様子、デクスターさんは皆の分お酒を取りに行っている。
ちょい気が早い、と思っていたのだが。
「ちょっと訂正しなさいよ!」
「あぁ!?何を訂正するってんだ!」
「キャロル、落ち着けよぉ〜!」
「落ち着けるわけないでしょ!」
さっき聞いてた声とどっか聞いたことある声が言い争っていた、正直見たくね〜。
だが俺以外のメンバーがもう見ちゃってるしな、仕方ないから向かおう。
「どうしたキャロルちゃん」
「あっアルフさん!このオヤジ貴方の事バカにするんですよ!」
「お前らが『あの人は2階層で颯爽と“サンダーボルト”で救ってくれた』なんてホラ吹いてりゃな!出来るわけねぇだろ獣人知らねぇ田舎者だぞこいつは!」
うわ〜、面倒くせぇ……。
多分酔っぱらいが田舎者デッキで陰口叩いてて、それを利いたキャロルが反論、そんな訳がないでこのトラブルか。
こう言うの何言っても平行線だから関わるだけ無駄なんだよな、そりゃあ覆す手段もあるけど悪目立ちが過ぎる。
「二人共、酔っぱらいに構って余計な元気使うな」
「おお!流石アルフさん、冷静です!」
「で、でも……!」
「おうてめぇ!俺捕まえて酔っぱらいとはどう言う事だぁ!?」
おじさんの声デカすぎて余計に人の目集まってるやん、やれやれだわ。
……うーむ、いかんな。
「……悪いことは言わない、そろそろやめとけ」
「あ!?なにを────」
「サイラスさん」
「────うっ!」
どうやらうちのメンバーが行動を起こす前に、ベティさんが間に合った様だ。
助かった、一人の別に尊くない犠牲が出る所であった。
しかしさしもの彼女も今回は怒りが強いせいか、威圧が周囲に漏れている。
隣りにいるドナルドとキャロルも顔青いし。
「言いましたよね、失礼はやめてと……何人目だと思ってます、そうやって難癖をつける人」
「でも、でもよぅ……」
双方の背後に犬のオーラが見える、金色の毛並みのサラサラワンコに押される小さく縮こまってる土佐犬……勝敗はどう見ても決してるがトドメを刺すようだ。
「では“父”に言っておきますね、“支部最強騙り”がまた問題を起こ────」
「ち、違う!俺は違うんだーっ!!」
「……逃げても伝えますけどね、流石に最低でもランクダウンは避けられないでしょう」
ああ、前科あったのね……自業自得や。
しかも“支部最強騙り”なら田舎者デッキがブーメラン食らってるじゃん、救えん。
「アルフさん、大変お待たせしました」
「いえいえ、それじゃあお願いします」
「はい、こちらへ」
ベティさんに案内された窓口に来ると、まずは冒険者カードを渡される。
「素晴らしい貢献度です、もし同じ調子で行けば“ナイトランク”もすぐになれますよ!」
「おお、ありがとうございます!」
確かに目に見える量増えてるもんな、ポーンからナイトは必要なのはギルド貢献度のみだから昇格はそう遠くないな。
「それから報酬ですが、2階層の魔物の値段が高い素材や宝物から出たアイテムの納品と言う事で……こちら2,350,000リンクとなります」
「なるほど……確かに」
お金に関しては紙幣だから数えやすい、金属よりは軽いはずだし助かる。
しかし紙幣か、召喚者が関係してるのかしてないのか。
「……今回の事はこちらの責任です、申し訳ありませんでした」
「え?ああ、大丈夫です!対処していただけましたから、助かりました!」
「アルフさん……ふふっ、これからもよろしくお願いしますね」
「いえいえ、こちらこそ」
二人で見合って笑い合う、この人みたいな人がいれば今後も大きな問題にはならず過ごせるだろう。
……“父”な、やはり只者ではなさそうだったな。
そして戻ると既にドナルド君とキャロルちゃんが混ざって飲み会を始めており、サイラス関連の事で盛り上がっていた。
皆、酒は程々にな……。
救援→金銭トラブルが起きやすいため、可能ならばそうならないように努力するべきではある
師匠モード→大体いつも口うるさい、しかし為になるのだからデクスターに耳を傾けよう
紙幣→現大陸では反リーデン連合が初めて正式に運用をした、金属貨幣も勿論ある




