水筒と神々と再誕
『あらっ?』
ふと目が覚めた、それは見たことある光景。
何しろ人の死を起点として生まれる負の念を纏った力の塊である呪いと命懸けでぶつかる、そんな事を何度も繰り返した場所だった。
……厳密には大半が喋って変身して襲ってくる特殊な“ボヤ”に、勢いよく放水して消火してたようなもんとか言ってはいけない。
雲ひとつない青空、澄み切った清水で満ちた足下。
そう、ここは俺の精神世界だ。
『どうしてここに、サキが呼んだのか?』
凪いでいる。
何で返事がないんですかねぇ?
そう思った時だ。
『また会えましたね、カノスに望まれし“星の子”……いいえ、アユムと呼ぶべきですね』
「────ッ!」
目の前にはプラチナブロンドの長い長い髪と金色の瞳をした、男性なのか女性なのか分からん正しく両性具有と言うべき存在が急に立っていた。
この外見的特徴だけだと完全に知らない人である。
だがその話し方と高めの良いハスキーボイスは!
『お久しぶりです!ラミト様!!』
『ふふふ、そう感じてしまう程に濃い時間を過ごしたようですね』
『あっ、まぁ確かに1ヶ月ちょいくらいっすもんね』
神様から見れば瞬きと変わらんよな、でもそれだけお礼したくてたまらんかった。
『かけがえの無い愛する相棒サキと共に居させて下さったこと、心から感謝申し上げます』
『見ていましたよ、短い間にまさかあれほど成長してみせるとは……仲睦まじいですし、大変微笑ましかったです』
ニッコリと微笑んでいるラミト様、神様でも俺と相棒の関係性はてぇてぇって感じたのかな?
『てぇてぇ……?ああ、なるほど、確かに尊いです』
『余計な思考挟んですんません』
『いえいえ、てぇてぇ……気に入りましたよ』
心読めますもんね、そうでした。
ほんとすいません。
『さて、可能ならばもっと談笑する所ですが時間がありません』
『あっ、やっぱり本題ありますよね』
『ええ、申し訳ありませんが……いい加減来なさい』
『り、了承した!』
え?
何か暴君超えた身長と筋肉を纏った人が来たぞ。
どなた?
『余は軍神“ガスト”、ラミトとは対とも言うべき存在だ!』
『えっ、あ、ああ!なるほどぉ!?』
めっちゃ急に来るやんこの人!
ロングのサラサラシルバーブロンドヘアのムキムキマッチョマンの変態が軍神ガスト様である様だ。
『へ、変態は言い過ぎではないか!?』
『あっ、ジョークです!ジョーク!』
『おおっ、星の子特有のジョークか!なら良いか!』
めっさ爽やかな人だ、この人が熊倉みたいな奴を送り出したとは……って今日むっちゃ口が滑る!
いや、心が滑る?
滑る心とは……。
『世界意思たるカノスが選んだ男だ、クマクラリキヤに起こった事もまた運命である』
『そうですね、そして今回我々が貴方の精神世界に来た事と関係があるのです』
関係してる、熊倉が?
アイツ自身をどうにかする……ではないですね、首を横に振られてるし。
ではアイツが残した問題の解決……おお、正解なんですね!
しかしアイツが残しそうな問題って十中八九滅びそうなリーデン帝国ではなさそうだし、さっき熊倉と戦ってた軍が所属してて俺達が現在いるオリファント王国……は微妙に関わってそう?
……うーん、分かんないっす!
『残念でしたね、正解は……クマクラリキヤ亡き後の、神器の暴走ですね』
暴走!?
まさか、呪いみたいに誰かに取り憑いて暴れたりとかですか……?
『いや、流石にそこまで危険ではないのだ……しかし部分的にはそうなのだ…』
『え?』
部分的にはそう?
『クマクラが戦に敗れ命を落としたが、魂ごと融合していた神器は共に神界へ召し上げるのを拒否して分離したのだ』
『融合解除って、よっぽど嫌だったんでしょうね』
『するとクマクラリキヤは裏切られたと怒りと憎しみ等の強い負の念を出しながら、再度神器に触れようとしたみたいです』
あっ、それはあかんムーブ……。
『当然神器に触れられる筈もなく祓われ、奴だけ余の元へ召されて来たのだ』
『そうして一見普通の魂に見えたので、ガストはそのまま輪廻転生の輪に突っ込んだみたいです……それがクマクラリキヤと知ったのはついさっきでしたね?』
『面目ない』
が、ガスト様は熊倉について確認してなかったのですか?
『あの二股槍の神器は余にとってそれなりに自信作だった物でな、次の召喚者がいつ来るともしれないと考えた為暫く神器制作に集中しておったのだ……』
『結果クマクラや神器のその後について全然知りませんし、私が懇切丁寧に説明してやっと知る事になるのはどうなんです?おまけに戦死者の魂を輪廻転生の輪に戻す役割を、神器作りの片手間でやってましたよね?』
『集中したら周りが見えなくなるのだ……いや、本当に、だらしなくてすまない』
めっちゃやらかして尻に敷かれてます、本当にありがとうございました。
『その後神器は戦場から離れてある場所を目指したのです、対となる存在が在る場所を』
『……え?』
ちょいちょいちょい!
それって完全に俺のとこ!?
『ああ、神器は星の子たるお主の身体に憑いた』
『貴方の神器サキがここに来ないのは、その神器と会わせたくないと止めているからです』
そう言うこと、だったのかぁ……。
『可能なら貴方に話が行く前に事を済ませる為に、神器同士が悶着している間に入って説得したのですが……ガスト?』
『お、思ったより個性が強い子に出来ただけなのだ!ただこの星の子の元がよいから行かせろと少しわがままなだけなのだ!』
『神器作りの情熱は分かりますが、それがトラブルを引き起こすのは流石に難儀ですね』
うーん、なるほど!
つまり熊倉は嫌だと奴の死をきっかけに暴走、理由は分からんが次は俺が良いとぶっ飛んできて憑いて、サキが俺を守る為に頑張ってくれてると……。
『俺に件の神器が憑いてる間、周りはどうなってるんです?』
『金色の光がアユムの中に入った事でパニックが起こり、どれだけ手段を講じても貴方が目覚めない事で更に混迷を極めてます』
最悪の事態すぎてワロタ!……ワロタァ。
はぁ〜、放っておける訳ないわこれ。
『分かりました、俺が神器に会って対処すりゃあいいんですね?』
『……申し訳ないです、もっとスマートかつ円満に終わらせたいのですが、よりによって新たな召喚が別大陸で起こりそうなんです』
『可能な限り迅速に対応しなければならんからな、助かるぞ!』
神々も忙し過ぎる、カノスはもう少しこう手心加えて!
召喚のスパンバグ修正案件だろ!
と言うわけで二柱の神々は揉めてるサキともう一つの神器を、俺の世界に連れてきてくれる事に。
さて、鬼が出るか蛇が出るか。
*************
『ワタシモ、イレテ』
『マスター、コイツを受け入れてやる事ないよ!』
現在二股槍と水筒がふわふわと浮いて睨み合ってる、大変シュールな光景である。
2柱の神々と共に来てはくれたが、結局揉めたままである。
サキは俺を守ろうとしてるのだろう、ありがとうな。
『マスターっ!』
でも長引くのも良くないからさ、妥協はすべき点はしていこう。
『マスターッ!?』
『……』
仕方ないじゃない、無理やりやってこの子の心にしこり残ったら可哀想だしさ。
『星の子!いやアユム!』
ガスト様は兎も角、ラミト様に迷惑かかっても嫌だしさ。
『アユム!?』
『流石ですアユム、もうガストの扱いを心得ましたね』
全体的に見れば偉大な方なのだろうけど、俺は基本ラミト様派ですしおすし。
さて……。
『キミは俺と融合したいと?』
『ソウ、ソレイイ』
一時期のサキと同じ状態の喋り方なんだな、懐かしい。
『マスター、そいつとボクを重ねないでよ!』
『あぁ、悪い悪い!』
ついよ、つい!
『そう言う喋り方は、成長したからなのかい?』
『ワタシ、モトカラ』
『へぇ、そうなのか』
人格がある程度発達してる状態がスタートなのは、本当に自信作なのだろうな。
あっ、ガスト様はマッスルポーズをやめてください。
『ならわかってると思うけど、俺は既にサキと融合してる召喚者だぞ?それでいいのか?』
『シッテル、カラコソ』
『その心は?』
『ジンキ、アイアル』
なるほど、この子はこの子でちゃんと愛されたかったのか。
だが元主の熊倉は愛情もって接するタイプな訳が無い、そこですでに不満だったと。
俺はサキを愛してる、それはこの子に足りない物を埋める事が出来ると踏んだのだな。
『ただキミのその姿は見られている、万が一俺が出してる状態の姿を見られたらトラブルを避けられない』
『ソレハ、……』
『そうだよ!マスターに迷惑かけるんだから諦めてよ!!』
これには神器も黙るし、神々は痛いところをって表情、サキはここぞとばかりに受け入れさせまいと責める。
でもさ、それじゃやっぱりダメなんだよな。
『サキ』
『何、マスター』
『俺が召喚された時の荷物は、お前の中に預けてあるよな?』
『!……嫌だ!』
『サキ』
『嫌だもん!!』
明らかな拒絶、よほど受け入れがたい事実なのだろう。
既にある関係性に別の何かが割り込む、気持ちは分かるよ。
でも俺は目覚めないまま皆を待たせてるし、神様達だってやらなきゃならない事あるからさ。
スマートかつ円満に事を治めたい。
『だって、だって……!』
『俺はあの子が来たとして、俺はサキを愛してる……これは絶対変わらないぞ?』
『分かってる!分かってるけど……怖いの……ッ!』
俺はサキを抱える。
高校デビューで購入してから愛着持ってずっと一緒にいた水筒だ、向こうも相応に俺に愛情あるのも理解できる。
だからこそ、理解して欲しい。
『あの子の愛が欲しい気持ち、本当はサキも分かるよな』
『……うん』
『なら大人の余裕持って接してやってくれ、“お姉ちゃん”だろ?』
『“お姉ちゃん”!!?』
びっくりして飛び上がるサキ、だが俺としてはそう言う感覚なんだよな。
『サキは名前授かってるし、成長して能力いっぱい持ってるし、あの子が求める愛情も貰ってた……それなら“お姉ちゃん”でも相違なくない?』
『あっ、うぅ……ボクがお姉ちゃん……』
『サキ、頼む!』
『……あぁーッ!もう分かったよ!』
そう言ってサキは俺にピッタリくっついてくる。
『ラミト様!これで神器にしてくれた貸し借りなしですから!ボクは“大人なお姉ちゃん”だから今回は譲りますからね!』
『これがてぇてぇ……!』
『ウェッ?』
『ラミト?』
尊み味わっとる!
『……こほん、ありがとうございますね』
『ありがとう、サキ』
『うん』
サキは受け入れてくれた、さてここからだ。
さっき言った俺の意図が伝わっていたから、サキは出してくれた。
それは……。
『むっ!何だこの高度な技術が使われて作られた板は!?』
『“スマートフォン”と言います、地球では便利に様々な意図に使えるアイテムです』
召喚時に持っていた荷物は僅か、その中で唯一“雷属性”っぽい存在である。
たまたま“最新”の奴に変えた翌日の召喚の為、余計なアプリとか入ってないほぼ新品でブックカバー付きのそれを、ガスト様の前で掲げる。
『このスマートフォンの外観と特性に、中身はあの子でって形で新たな神器として“再誕”する……それがあの子を受け入れる条件です』
『なるほど、考えましたねアユム』
嬉しそうに微笑むラミト様。
実際ラミト様がやってくれた事が、今回のそれに繋がったわけですしね。
姿が違えば良いわけだし、武器型じゃなければ他者を警戒させ辛くなるから尚良い。
『余は今回は何も言う資格がない、当然良いが……』
『ありがとうございます』
俺はあの子へ近づく、スマートフォンを持ってガスト様を連れて。
後ろではラミト様とサキが並んで見守っている。
『キミを受け入れるには、この姿と特性に変わる事が必要だ……良いかな?』
『ソレデ、アイスル?』
そうすれば愛してくれるかと聞きたいのか、ならば。
『勿論、俺が主として……サキが姉としてちゃんと愛するとも』
『しょうがないからね、気持ちは分かる所もあるしさ!』
『カンシャ、スキデス』
どうやら了承してくれたようだな!
『ガスト様、頼みます』
『任せてくれ、では行くぞ!』
スマートフォンを受け取ったガスト様が掲げると、浮かび上がり飛んでいく。
そして二股槍と重なり混ざり合い、黄金の光球に変わる……合体ィッ!!
あいも変わらず質量保存の法則は無いものとし、光球の中からスマートフォンが現れた。
俺のスマホは黒い無地のブックカバーを着けていたが、黄金の稲妻がデザインされていた。
テレレレレーッ!
おめでとう!俺のスマホはスマホ型神器に進化した!
『おいで』
『イマ、イキマス』
俺の身体にスマホが融け込む、これで一安心────。
『しかし余とラミトが作った神器と同時に融合した星の子は初めてではないか?』
『え?』
『そもそも神器を2つ以上魂と融合させた事例がありません、何が起こるんでしょう?』
『マ?』
それマ?
しかも今言うのそれ!?
その時、不思議なことが起こった……!
『俺の精神世界が変わっていく!?』
『おお!?』
『これは……』
『雲が!大地が!』
雲1つ無かった青空には雲が浮かびだし、1面水であった足下にいくつか足がつく地面が島みたいに現れた。
精神世界がこれ、つまりこれは!
勝てる!!!
あいてがどんなヤツだろうと負けるはずがない!!!
オレはいま究極のパワーを手に入れたのだーっ!!!!
『いえ、実際は急激に強くなったりはしませんよ』
『あっ、やっぱりそうですか』
『しかし全体的に伸び代が大きく上がっているぞ、ただ成長速度は並故にアユムの努力次第というやつだな!』
ですよね〜、世の中いきなり強くなるほど甘くない。
でもその分俺にはサキに加えて、新たな神器が1つになってくれた。
伸び代が上がったなら、寧ろ感謝でしょ。
と、そうだ名前を決めなきゃな!
いつまでもあの子呼びは可哀想か。
……よし、決めた。
『ラミト様、その名の一部を借りるみたいな形になるのすいません!』
『構いませんよ、寧ろ喜ばしいですよアユム』
『むぅ、余からでないのは残念だ』
ガスト様もすいません、でもこれはサキとの関連性でもこの名前がいいからなので……。
では改めて!
俺はあの子を呼び出し、しっかりと見据えて教えてあげる。
『キミの名前は“ラミ”だ』
“神の雷霆”を意味する天使の名から、そして結果的だがラミト様から一部借り受けた名となった。
電脳の天使って響き魅力的だよね。
『ラミ、ワタシ』
『そうだよ、ラミ』
『ダイスキ、アルジ』
スマホの画面にハートいっぱいのメッセージが届いた、通知が凄いよやばいやばい。
あっ、サキも魂一緒だからか干渉出来るのか!メッセージが!?
『ボクが一番だから!』
『シッテル、デモスキ』
神様方、揃ってほっこりしてやがる。
これはこれから大変そうだ、起きた後も含めて。
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彼は目覚めた後、メンバー全員に揉みくちゃにされる事となった。
そして神々と会った事に驚愕し、ラミの事で目が点となり、エレンだけが暫く「アユムさんは、あんな風にならないで下さいね」と目が死んでいた。
暴走→制御が難しい分強いイメージ、アーユーレディ?
輪廻転生の輪→地球の魂であっても、この中に入っちゃったら戻れない
スマホ→アユムはAndroid、iPhoneは別に嫌いではないとのこと




